革新的な技術採用もロングセラーの秘訣 『カルビー ポテトチップス うすしお味』が50周年
素材の風味を活かしパリッとした軽い食感にこだわり続けて50年。おやつやお酒のおともにも打ってつけ、子どもから大人まで幅広い世代に愛されてスナック菓子の定番となっているカルビーの『ポテトチップス』。カルビー㈱マーケティング本部ポテトチップス部、ポテトチップス ベーシックポテトチップス ブランドマネジャーの井上真里氏(=写真)に、安心安全で高品質な商品を供給していくためのサステナブルな取り組みについてと合わせて話を伺った。
消費者に支持される理由は品質・食感・味へのこだわり
1975年の元祖『ポテトチップス うすしお味』発売から、半世紀経った今、同ブランドではさまざまなフレーバー展開を行っている。

(上の写真:1975年発売の『ポテトチップス うすしお味』
長く消費者に支持される理由は、食感・味と高い品質を保とうとするこだわりにある。じゃがいもの品種や品質でチップスの厚みを変え、油の温度やフライ時間を調整することでパリッとした食感を持たせ、さらに時代と共に移り変わる消費者の味覚にマッチするよう味わいも定期的にリニューアル。例えば2020年には、昆布エキスパウダーを追加。塩の粒子の大きさも変えたことでじゃがいものうま味が引き出されるよう工夫した。
同ブランドの基幹商品は『うすしお味』『コンソメパンチ』『のりしお』の3品。これに『しあわせバタ〜』を加えた4品が現在の売れ筋となっている。

(上の写真:うすしお味の現行品。24年8月時点の調査でも、同社商品の中で同品が人気ナンバーワンとなっている。中身についても数年ごとに塩・じゃがいも・昆布エキスパウダーの最適なバランスを見直し、社内で非常に多くの試食を重ねた後に販売しているという)
「幼い頃に『うすしお味』を食べたお子さんが、小学生になって口にした『コンソメパンチ』で新たな食味体験をするという具合に、年代を重ねるごとに嗜好のフェーズが移行し、商品構成としても、そこにうまく対応できているかと思っています。また、『しあわせバタ〜』は、韓国で人気の『ハニーバターチップ』の食味に似ていることもあって人気に火がつき大ヒットしました。他の商品に比べ20代女性の支持が高い商品として定着していますが、今の時代はそんなこともあるので、国内外のいろんな状況に視野を広げて開発するようにしています」



(上の写真:1976年に『うすしお味』に続くフレーバーとして発売された『のりしお』(左)。78年に第3のフレーバーとして誕生した『コンソメパンチ』(中)。バター、はちみつ、パセリ、マスカルポーネチーズの4つをベースにほんのり甘じょっぱいおいしさが楽しめる『ポテトチップス しあわせバタ~』(右))
もう1つ、フレーバーだけでなく噛み応えのある厚さや堅さなど、食感の嗜好にも対応した商品も開発してヒットさせている。その代表格が24年4月からポテトチップスの新ブランドとして発売された『ポテトチップス ザ厚切り』シリーズだ。ザクッとした厚切りじゃがいもの食感と後味に深みを感じさせる隠し味がポイントで、噛み応えに注力したことで売り上げも順調に伸びている。

(上の写真:歯応えある食感で人気の「ポテトチップス ザ厚切り」シリーズ。現在では『うすしお味』のほか、『コンソメ味』『のりしお味』の3種を発売し、こちらも新たなファン層を獲得)
収穫時期と消費動向を照らし合わせて商品展開
同ブランドの新商品は、年間100種類以上。また、ポテトチップスの発売時期については、じゃがいもの収穫と照らし合わせながら調整していると井上氏は話す。
「国産じゃがいもの収穫端境期となる春先は主に貯蔵している北海道産のジャガイモを使用するため、メインの収穫期である夏秋までの期間にどう繋げるかを毎年考えています。夏秋シーズンは新じゃがのおいしさを楽しんでいただけるので、既存商品だけでなく、『ア・ラ・ポテト』などは大収穫祭キャンペーンと連動しながら季節限定として商品化も行っていますね」
ポテトチップスの味わいは、原材料であるじゃがいもの品質が大きく影響する。そのため消費動向も確認し、産地リレーやカルビーグループの貯蔵技術を駆使して、年間を通じて変わらない品質を担保しながら商品展開を行うようにしているという。
例えば原材料のじゃがいもの買い取りに際しては、一定の基準をクリアしたものだけを調達しているが、それでもでんぷん量や貯蔵温度、揚げる際の温度などによっても仕上がりに微妙なばらつきが生じてしまう。そこで同社では09年に数千人規模の消費者調査を実施し、見た目、味、香り、食感など、ポテトチップスの品質基準を細かく定めた統一規格「ゴールドスタンダード」を策定した。
「年間を通して均一品質の商品を提供できるように、各工場が生産工程や製法にさまざまな工夫を取り入れ、細かな調整をしながら製造しています。そのプロセスも工場任せではなく、本社スタッフも一緒になって検討し、技術構築課や商品開発部が品質チェックを行うなどして各工場ヘ情報をフィードバック。さらに定期的な勉強会開催など、品質改善の支援活動も行っています」
工場が切磋琢磨することで品質が向上。成果は顕著に現れている。
商品を安定供給するために欠かせないじゃがいもは、国産を中心にアメリカ産も使用。使用量としては圧倒的に北海道産が多く、購入量では国内で生産されるじゃがいもの約19%のシェアを同社が占めている。グループ会社であるカルビーポテトと契約生産者は植え付けから収穫まで二人三脚で取り組むなど、繋がりは極めて深い。それだけ地域経済への貢献度も高くなっているようだ。
商品棚に埋もれないデザインとパッケージの薄膜化を推進
パッケージにおいても販売現場で視認されやすいよう、時代と消費者年齢の推移に合わせて見直しを繰り返し行ってきた。主力商品については3〜5年サイクルで問題がないかをチェックしてリニューアルしている。
「商品パッケージは黄色やオレンジ系のベースカラーに対して『うすしお味』『コンソメパンチ』『のりしお』などフレーバー名が目立つようにしていて、販売店の商品棚で他の商品に埋もれないようなデザインを目指しています」
一方、サステナブルな社会へと世の中が動いている中、なるべくプラスチックを使わない取り組みも進めている。同社ではポテトチップスの品質を保つために使用しているアルミ蒸着フィルムのパッケージについても「今後、なるべくプラスチックを使用しない安全な方法で消費者にお届けできる梱包材で考えていますが、どこまで薄膜化できるかという技術的な課題があり、製品化に向けて研究に取り組んでいるところ」と井上氏。方向性についても、さまざまな検討が行われているそうだ。
次代のファン層をつくる消費者参加イベントも開催
50周年を記念したプロモーションは現在、鋭意検討中とのこと。それとは別だが、1年を通してカルビーの本社や全国の支店、工場、畑など、さまざまな場所でカルビーファンと交流するCalbee『Fan With! Project』の中で、「ポテトチップス」のファンミーティングを実施している。工場見学、じゃがいも収穫体験、工場直送商品の試食、クイズ大会、質問コーナーなどのプログラムを用意して、毎回30人規模、総勢600人以上の消費者と交流している。
「ポテトチップスを身近なものとして楽しんでいただくことを目的としたイベントでして、幼少期からポテトチップスに慣れ親しんできた方が成人し、お子さんができたら親子で一緒に楽しんで欲しいという思いも込めたイベントです。実際、参加された方の反応を見ていると、私どもが当たり前だと思っていることが消費者には驚きであったり、製造においてこだわっていることがうまく伝わっていなかったり、いろいろと気づかされ、勉強になっています。その意味から、お客様と直に接する機会は今後も積極的に作っていく方針です」
子どもから大人まで老若男女が安心して食べられるアレルゲンフリーの『うすしお味』発売をきっかけに、親子で一緒に楽しめるポテトチップスの魅力を広めるブランド展開も考えていると井上氏。
50周年のプロモーションは今夏に向けて準備中。どのようなキャンペーンで消費者を驚かせ、喜ばせてくれるのかに期待したい。
【堂上昌幸】