日本消費者連盟、各政党に農政改革を要請 「自給率向上と多様な担い手の育成を」
(特非)日本消費者連盟(共同代表:亀山亜土、佐々木ミヨ子、原英二、マーティン・フリッド)はこのほど、食料・農業政策に関する意見書を各政党の党首宛てに提出した。意見書では、気候変動や国際紛争の激化、農業資材価格の高騰などにより、世界的な食料需給の不安定化が進む中、日本の農業政策の根本的転換を求めている。
同連盟は、円安や資材価格の上昇により国内農家の経営は困難を極め、離農や耕作放棄地の増加によって生産基盤が崩壊の危機に瀕していると指摘。とりわけ昨年夏に発生した米不足と、それに伴う米価の2倍超への高騰は、農業政策を市場原理に委ねてきたことの弊害だと厳しく批判した。これまでの安価・効率優先の政策を問い直し、すべての人が安心して安定的に食を得られる体制づくりが急務であると訴えている。
同連盟は、食料自給率(カロリーベース)を2030年までに45%、さらに将来的には50%へと引き上げる必要があると主張し、そのためには農家に対する直接所得補償などの支援策が欠かせないとしている。さらに、農業の担い手を現在の一部の大規模農家に限定せず、小規模家族経営や兼業農家、自給農家も含めて多様化すべきと提案。都市住民も含め誰もが農業に関われる仕組みの整備を求めた。
また、地産地消の徹底も提起されており、とりわけ学校給食においては基本的にすべての食材を国産とし、地場産食材の使用率を全国平均で7割以上にすることを目標とすべきと訴える。有機農業の推進については、オーガニック・ビレッジ宣言自治体の拡大や、都市部の自治体と連携した有機食品の流通拡大などを通じて学校給食への導入を進める必要があるとしている。
環境面では、生物多様性の保全や農薬・プラスチック使用の削減を数値目標付きで取り組むべきとし、下水汚泥を利用した肥料による汚染対策、水田の中干し延長が及ぼす生態系への影響、有機フッ素化合物(PFAS)による農地汚染への具体的対処も提起されている。
さらに、遺伝子組み換えやゲノム編集、重イオンビーム利用の放射線育種といった遺伝子改変技術の利用に対し、自然の摂理を逸脱するものとして厳しい姿勢を示し、こうした技術を用いた食品の生産・販売を規制するよう訴えている。
意見書は、参議院選挙を前に、今後の食料・農業政策が大きな争点となることを見据え、各政党に対して見解の明示と意見交換の場を求めたもの。送付先には自由民主党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、社会民主党、れいわ新選組、NHK党、参政党、日本保守党の計11政党が含まれている。
意見書はこちら(日本消費者連盟HPより)