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ガイドライン脱ぎ捨て、法令まとう 【改正・機能性表示食品制度の全貌】強化された法的基盤、届出者の義務規定

 機能性表示食品制度、2015年4月の施行から丸10年。紆余曲折を経て迎えた節目を寿ぎたいところだが、それどころではない。11年目、制度の姿が大きく変わったからだ。私たちが慣れ親しんできた「ガイドライン」は脱ぎ捨てられ、それに変わって見慣れぬ「法令」を身にまとう。変化の背景にあるのは、日本の食品安全の歴史に大きな「負」を刻んだサプリの健康被害問題。どう付き合っていくべきか。改正制度の全貌を紐解く。

健康被害問題が制度の姿を変える

 「軽微」1,272人、「軽度」1,238人、「中等度」124人、「後遺症」90人、「死亡」16人、「自然治癒」1,137人、「外来治療で治癒」284人、「入院治療で治癒」67人、「未回復」858人──。

 機能性表示食品制度が変化した直接の要因になった小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を調査した大阪市が3月19日、厚生労働省へ提出した「食中毒詳報」の別紙「疫学解析結果」にはこうした数字が並ぶ。健康被害の原因物質と推定されているプベルル酸が含まれる23年7月以降出荷の当該製品を摂取した可能性が高い2,782人に絞り、症状の重篤度と転帰を解析した結果だ(24年11月30日時点)。

 ただし市はこう断っている。「原則、健康被害の届出者からの聞き取りによるものであり、必ずしも診察医等に確認したものではないため、解釈には注意が必要」、「医学的な定義とは異なる可能性がある」

 額面どおりに数字を受け止めてほしくないということだろう。しかしだとしても、とりわけ死亡、後遺症、未回復の数は、問題が収束したとは言えない現実を突き付ける。小林製薬はもとより健康食品業界にとって重い。食品による危害発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的とする食品衛生法を所管する厚労省と消費者庁にとってもそうであろう。

 そのように重い問題の発生を直接のきっかけに、規制緩和で生まれた機能性表示食品制度はある意味、抜本的に見直されることになった。

 経過措置が取られた規定を除き、この4月に完全施行された改正機能性表示食品制度(以下、改正制度)の全体像を押える。その前に、制度改正までの経緯を確認しておく。ざっと次のとおり。

 24年3月22日、小林製薬が腎機能障害の健康被害発生を公表。同26日、同社が最初の死亡疑い事例を公表。同29日、政府が関係閣僚会合を開催、内閣官房長官が機能性表示食品制度の在り方を5月末までに検討するよう担当大臣らに指示。4月19日~5月23日、消費者庁が制度見直しの方向性を定める「機能性表示食品を巡る検討会」(巡る検討会)開催。同27日、巡る検討会が報告書を公表。同31日、関係閣僚会合が「今後の対応」公表。7月16日、内閣総理大臣から食品表示基準改正案の諮問を受けた内閣府・消費者委員会が案のまま改正して差し支えない旨を答申。8月23日、改正食品表示基準が公布。9月1日、改正制度が一部施行──。

 改正制度の法的基盤である食品表示基準については後段で触れる。その前に押さえておきたいのは、健康被害が明るみになってから制度改正、その一部実施までの期間だ。わずか半年程度であることは特筆に値する。

 異例のスピードで制度改正に向けた検討、手続きが進められた。政府が問題をいかに重く受け止めていたかがうかがわれよう。問題が生じたのは通常国会(第213回)の真っただ中であったことも影響したかもしれない。

 他にも、重要なことが示唆される。改正制度に反映されたのは、そのように限られた時間の中で法的に整理、調整できた事項にとどまるであろうことだ。つまり、制度改正はこれで終わらない可能性がある。そのことは本稿の最後に触れたい。

政府「制度の信頼性を高めるための措置」

 それでは、改正制度の全体像を紐解いていこう。まず、最初に理解しておくべきは改正制度の「土台」だ。

 改正制度は、行政法を専門とする法学者が座長を務めた先述の巡る検討会が報告書として取りまとめた提言を土台に構築された。同じく先述の関係閣僚会合が取りまとめた「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応」(以下、今後の対応)は、その提言を全面的に踏まえている。改正制度を活用する事業者は、まずは巡る検討会の提言を押さえておくのが良い。

 その上で、関係閣僚会合の「今後の対応」を見てみる。該当資料は、内閣官房のウェブサイトで閲覧できる。その資料の冒頭、対応内容を1枚にまとめた資料がある。そこに示されているのが改正制度の骨格だ。「今回の事案を踏まえた今後の対応」として次の2つが大きく掲げられている。

1. 健康被害の情報提供の義務化
2. 機能性表示食品制度の信頼性を高めるための措置 
 
 大きくこの2つが改正制度の柱であり、健康被害問題を受けて導入された規制の大枠だ。「制度の信頼性を高めるため」とされている上記2の筆頭に置かれているのは、機能性表示食品のサプリに対する「GMPの要件化」である。そのうえで、「その他信頼性を高めるための措置」として以下が羅列されている。

・新規の機能性関与成分に係る機能性表示の裏付けとなる安全性・機能性の課題について科学的知見を有する専門家の意見を聴く仕組みの導入等、消費者庁における届出時の確認をより慎重に行う手続(販売前提出期限の特例)を食品表示基準に明記

・届出後の定期的な自己評価・公表など、届出後の遵守事項の遵守を要件化

・ PRISMA2020の準拠について令和7年4月からの新規届出から導入

・事後チェックのための買上げ事業の対象件数の拡充

・特定保健用食品(トクホ)との違いや摂取上の注意事項の記載方法などの表示方法や表示位置などの方式の見直し

 制度改正の柱である健康被害情報の提供義務化をはじめ、上記「措置」のほぼ全てが法令で規定された。健康被害問題と、PRISMA2020準拠(科学的根拠の質)は無関係。だが、「制度の信頼性を高める」ことを目的に、制度が抱えていた課題の解消が一気に図られた。法令であるから法的拘束力を持つ……

(この続きをお読みいただけるのはウェルネスニュースグループ会員のみです。残り約4,500文字。全文は、「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内「Wellness Monthly Report」2025年4月号(第82号)特集「改正・機能性表示食品制度の全貌」の4~7頁から)

【石川太郎】

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