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サプリ市場初参入から丸3年 手応えと将来展望、小野薬品ヘルスケア・中井社長に聞く

 医療用医薬品専業の製薬企業、小野薬品工業㈱がサプリメント事業に新規参入し、同事業のために立ち上げた小野薬品ヘルスケア㈱を通じて機能性表示食品のサプリメントを発売してから丸3年が経つ。手応えはどうか。小野薬品ヘルスケアの中井章人社長(小野薬品工業経営戦略本部ビジネスデザイン部長兼任=写真)にオンラインで話を聞いた。(取材日:2025年2月20日)

──2022年3月14日に睡眠の質改善を訴求する『レムウェル』を通信販売で発売しました。まもなく4年目に入ります。小野薬品として初のヘルスケア事業、かつ対消費者(BtoC)事業です。手応えはいかがですか。

中井 手応えの意味ですが、売上に関していえば、上向いています。ですからビジネス上の手応えという意味では、確かにある。また、今後に対する手応えという意味でも、答えは同じです。この商品(レムウェル)には、他にはない特徴があり、優位性もある。ポテンシャルはもっと高い。率直にそう考えています。

──そのように考える理由は。

中井 小野薬品がサプリメントに参入した理由とも関係します。「エビデンス(科学的な根拠)」の水準と、それに対する小野薬品の意識の高さです。私たちは医薬品を基準にサプリメントのエビデンスを捉えています。例えば、臨床試験をどのように計画し、設計し、得られた結果をどう解析するか。小野薬品にはプロスタグランジンをはじめとする医療用医薬品の開発で培ってきたノウハウとエビデンスの水準があり、レムウェル開発時にもその水準が意識されています。

 そうしたエビデンスに関する文化、考え方、環境が私たちの強みです。もちろん、医薬品の基準をサプリメントにそのまま当てはめることはできません。ですが、「他がこうやっているから、私たちも同じようにする」などということは小野薬品では通用しません。どこに基準を置くのかということに関しては毎日のように熱い議論が交わされています。その結果として、私たちのエビデンスへの意識は、他よりもスタンダードが一段高くなっていると感じています。私が今後に対しても手応えを感じ取っている理由はそこにあります。

──エビデンスというのは、有効性に関してだけ言っているわけではありませんよね?

中井 はい。エビデンスとは、大きく4つあると思っています。まず、有効性や安全性を確かめるための研究から得るエビデンス。研究で得られた結果を再現させるための品質に求めるエビデンスもそうです。また、医薬品も同じですが、そうしたエビデンスを得るためには基礎研究の段階から各領域の専門家と連携している必要があります。その意味で、アカデミアとの協業体制もエビデンスになる。そして最後は、エビデンスに対する企業の姿勢だったり、風土だったり。

 私の考えるエビデンスとはそうしたもので、小野薬品はそこが非常に強い。そうであるから小野薬品はサプリメントを始めたのですし、私たちがサプリメントを手がけている意義はそこにあると考えています。

──創業時社長の野田康成氏から引き継ぐかたちで社長に就任したのは昨年4月です。機能性表示食品のサプリに生じた健康被害問題が明るみになった直後でした。どう受け止めましたか。

中井 短期的な受け止めと、一定期間が経過してからの受け止めが異なります。明るみに出た直後は、業界全体に対し、業界が想定している以上に、大きくネガティブな方向に働く可能性があると受け止めました。さまざまな制約、制限が生まれるだろうと。

 一方、今は、消費者の中で、サプリメントを見る目が養われたような面もあるかもしれません。それに、政府がサプリメントの製造などの在り方を見直し、機能性表示食品制度を改正しました。消費者にとって、一定の安心につながったのではないかと思います。

 今回の事件を受けて、サプリメントから離れていった方が確かにいらっしゃる一方で、事件の背景を正しく受け止めている方も確実にいらっしゃる。そうした方々は、もともと自分で調べながら商品選択していたのだと思いますが、事件を受けていったんサプリメントの利用を止めてもすぐに戻っていらっしゃった。そうしたユーザー層が今のレムウェルの顧客のボリュームゾーンです。今後もそういった層に選んでいただける可能性は高いと思っています。

──今回の問題を受けて、健康食品の市場規模は少なからず縮小したと見られています。小野薬品としても、影響は避けられなかったと思います。どう乗り越えていきますか。

中井 繰り返しになってしまいますが、私たちの強みである高いエビデンスが、ポジティブな方向に向かう原動力になると考えています。「サプリメントをちゃんと知らなければならない」と考えた消費者も少なくないはずです。どこでどのように製造しているのか、どのような素材が使われているのか、その素材の安全性はどうなっているのか、表示の根拠はちゃんとしているのか、どんな研究が行われているのか──などといったいわば素朴な疑問を消費者が抱いた時こそ、エビデンスが生きてくる。サプリメントとしてやるべきことをきっちりやること。今の状況を乗り越えたり、そのうえで成長したりしていくために、それが非常に重要なのだと思います。

──事業開始4年目に入ります。そろそろ新製品を投入すべき時期ではありませんか? 以前から、レムウェルに配合しているイクラオイル由来DHAなどと同様の「機能性脂質」を配合した機能性表示食品のサプリをラインアップに加えていく方針を示しています。

中井 私たちはまだ、レムウェルが持つポテンシャルを十分に引き出せていません。睡眠をケアするツールが世の中にはさまざまある。その中で、サプリメントを選ぶべき理由をどう伝えていくべきか、レムウェルが持つ高いエビデンスをどう実感してもらえばいいのか。色いろと考えています。

 一方で、おっしゃっていただいたその方針に変わりはありません。機能性脂質がベースにあること、高い水準のエビデンスがあること。その2つが小野薬品のサプリメントの根幹です。その上で、消費者ニーズにしっかり応えられたり、人々の健康課題の解決につながったりするサプリメントの新商品を検討しています。

 消費者ニーズのところはこれまで以上に強化している部分です。消費者にインタビューさせていただく機会を大幅に増やしています。私はもともと消費者マーケティング出身ということもあるのですが(編集部注:中井氏は食品業界でマーケティング本部長や通販事業部長を歴任した経歴を持つ)、やはり商品開発は、消費者ニーズをしっかり理解するところから始めないといけないと考えています。

 レムウェルは、睡眠に関するニーズに応える商品です。一方で、健康課題は睡眠以外にもさまざまあります。その中で、小野薬品の強みである機能性脂質が解決策になり得る領域はまだまだあると思っています。小野薬品が医療用医薬品で培ってきたノウハウを消費者に還元していくための1つのルートにすることを目標にサプリメント事業は始まっていますから、その目標に対して妥協することなく、機能性脂質、高い水準のエビデンス、そして消費者理解の3つが揃った新商品をいずれ発売します。

──小野薬品のヘルスケア事業は10年後、どんな姿になっていると思いますか?

中井 引き続きサプリメントが事業の軸であろうと思いますし、小野薬品のエビデンスに対するこだわりというものを、お客様がもっと感じ取ってくれているのではないかと思います。

 事業の軸としてエビデンスがある。そうであれば、環境がどんなに変化しても、しっかりと対応していけるはずです。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川太郎】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:大阪市中央区久太郎町1-8-2
TEL:06-6263-5670
URL:https://www.ono-hc.co.jp/
事業内容:ヘルスケア分野における健康食品・機能性表示食品事業

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