キリンHD、「科学技術賞」を受賞 「βラクトリン」と「熟成ホップ由来苦味酸」の発見と脳の健康における実用化が評価
キリンホールディングス㈱(東京都中野区、南方健志社長)はこのほど、「βラクトリン」と「熟成ホップ由来苦味酸」の発見と脳の健康における実用化が、「令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)」を受賞したと発表した。業績名は「疫学研究の基盤解明による認知機能改善成分の発見と事業開発」。同社R&D本部とヘルスサイエンス事業本部から5人が受賞者に選ばれた。同賞(開発部門)は、日本の社会経済、国民生活の発展向上などに寄与する画期的な研究開発もしくは発明において、利活用されているものを開発した個人やグループ、または育成した個人を表彰するというもの。
同社発表によると、日本人高齢者対象の食生活に関する疫学研究に着想を得て、白カビで発酵させたカマンベールチーズが認知機能の維持に有用である可能性を解明した。有効成分を探索し「βラクトリン」を発見、命名。作用メカニズムの解明と「βラクトリン」が高含有な食品素材の製法を開発。「βラクトリン」が、物忘れを自覚する中高齢者に対して、年齢と共に低下する認知機能の一部である記憶力(手がかりをもとに思い出す力)に有用であることを臨床試験により実証したという。
また、ビール苦味成分として知られるホップ由来苦味酸(イソα酸)に、認知機能の維持に有用である可能性を解明。イソα酸と比べて苦味が低く多様な食品に展開可能な「熟成ホップ由来苦味酸」の有用性を解明し、独自の熟成法により熟成ホップエキスを開発した。
その「熟成ホップ由来苦味酸」が、物忘れを自覚する中高齢者に対して、加齢により低下する認知機能の一部である注意力(集中して複数の視覚情報を同時に正しく判断して処理する能力)の精度の向上に有用であることを臨床試験により実証したという。
さらに、「βラクトリン」および「熟成ホップ由来苦味酸」の一連の構築したエビデンスを基に、機能性表示食品を含む多様な食品形態で実用化。取得した特許を活用して、キリングループ外への提供や新規事業創出の取り組みを進め、超高齢社会における課題解決に向けた社会実装を推進した。
キリングループは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」において、「食領域」と「医領域」に加えて、長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の育成を進めている。「βラクトリン」や「熟成ホップ由来苦味酸」を活用し、認知機能をサポートすることで、超高齢社会における健康課題解決をめざすとしている。
(冒頭の写真:受賞者の1人。同社R&D本部、研究開発推進部の阿野泰久氏/同社リリースより)