NMDB問題とは何だったのか?(7) 広がるNMDBの代替ツール
最終回となる今回、改めて課題を整理しよう。
第1回目の連載でjaohfaに対して行った4つの質問については、結局、なしのつぶてだった。Jahficも同様である。Jahficに対しては、「機能性表示食品制度向け_NMDB著作物使用促進レター_ver1.1」の案内状を会員宛てに配信するようにjaohfaに依頼したのかどうか。依頼したのだとすれば、どのような意図で依頼したのか。また、NMDBを巡る混乱に関する今後の対応などについて聞いた。
国立栄研に対しては、HFNet(素材情報データベース)再開の可能性とその理由について聞いた。4日後に戻ってきた回答は、「現在、素材情報データベースの安全性情報の掲載は停止しており、再開の可否については検討中。詳しいことは、ウェブサイトなどを通じて、時期が来たら公表させていただく」という、これまでにも繰り返されてきた優等生答弁だった。それでも、先の2者に比べれば回答しただけまだ誠意のかけらは残っていると言える。
さてこうなると、事業者は独力で届出への道を切り拓かなければならなくなる。ところが取材を進めると、事業各社はとうに独力で我が道を歩み始めていたのである。
中には、「NMDBに記載があるから安全という判断も安直すぎる」との指摘も。この間、場当たり的とも言えるJahficの対応が、しぶしぶ利用してきた事業者のNMDB離れを加速し、NMDBやHFNetに頼らない届出に知恵を絞らせる結果を招いていたようだ。
NMDBやHFNetに代わる情報ソースとして多く利用されているのが、pubMed、城西大学「食品―医薬品相互作用データベース」、食品安全委員会「食品健康影響評価書」、医中誌Web、Google Scholar(グーグルスカラー)、JDreamIII「科学技術文献情報データベースサービス」などだった。もっとも、城西大学が公表している「食品―医薬品相互作用データベース」もまだサンプル数が十分ではないという弱点は免れないが、PubMedで調べることで有害事象が見つかることもある。このように、他の検索ツールを駆使するなどの工夫を凝らして、届出に至っているようである。
他にも、食経験情報を収集したCRN JAPNの第8版「原材料標準書」も役に立つ。1.原材料及び基原材料に関する情報、2.原材料規格及び栄養成分、3.原材料情報(3.11通知別添1のSTEP1「製品の製造に用いる全ての原材料が何であるか明確にすること。各原材料を点検対象原材料とそれ以外の原材料に分類すること」に対応)、4.製造管理・品質管理(3.11通知別添1のステップ2の③「適正な製造工程管理の下、一定の品質で常に製造されていること」に対応)、5.包装仕様について、6.農薬等について、7.有害物質/放射性物質について、8.別紙「食経験情報の収集と評価」(3.11通知別添1・ステップ3「点検対象原材料及び当該原材料の食経験に関する情報を収集し、喫食実績を評価すること」に対応)――から成る。同標準書はCRNのホームページからダウンロードできる。
また、NMDBの本場、米国のTRCブランドであるNatMed Proと直接契約を交わしている事業者も増えているようだ。Jahficはあくまで東アジアにおける著作権を有するにすぎず、NMDBの英語版に記載されている出典の論文に直接当たり、利用規定の範囲内で使用することは問題ないとされているようである。複数の事業者がすでにそのような手段を用いて、届出情報として利用している。ただし、編集部がNatMed Proに確認したわけではないため、利用する際は直接確認を取り、規定に従った利用法を心掛けてほしい。
(了)
【田代 宏】
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