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サプリ製造の現場から 東洋新薬、品質保証編(2)数多ある原料の品質管理はどうしている?

 サプリメントの製造現場を見ておく必要がある。昨年、「紅麹サプリ」健康被害問題が明るみになった後、そう思った。特定の企業が起こした固有の問題だが、健康食品業界全体に大きな影響を与えた。機能性表示食品制度も大きく改正された。サプリの製造に携わる人たちがこの問題をどう受け止め、どのように再発を防ごうとしているのかも聞いてみたい──そんな取材に応じてくれたのは、販売会社の依頼を受け、製品を開発、製造する㈱東洋新薬(服部利光社長)。1月下旬、佐賀県鳥栖市にある同社のサプリ製造工場を訪れた。

 全4回予定でレポートする第2回。第1回はこちら

受け入れる原料、年間1,000以上

 独自素材に関して品質管理体制を強化したことは分かった。では、独自素材以外の原料についてはどうしているのだろうか。

 サプリの原料は多種多様だ。その中で、委託を受けてサプリを製造する工場が受け入れる原料の種類は、顧客の数に比例して多くなる。サプリ受託製造大手である東洋新薬の場合、実に「年間で1,000以上」(課長)。それだけの数の原料の品質をどう確認しているのだろうか。課長が答える。

 「まず、工場に受け入れる前の段階で、つまり採用する前の段階で、国のガイドラインに従って、安全性や適法性を確認しています」

 国のガイドラインとは、厚生労働省が昨年3月に発出、現在は消費者庁が所管する「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン/錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(同)」(3.11通知)のうち、原材料の安全性に関する自主点検指針のことだ。同指針に示されているフローチャートに従い、その原料の食経験や安全性に関する文献情報などを確認し、採用の適否を判断しているという。

 「必要な情報は、原料メーカーから収集します。独自素材の場合は、当社で安全性を確かめる試験も行います。その上で、工場へ受け入れる際は、外装検査だったり、分析機器を使った同一性確認だったりを行いますし、必要に応じて官能試験や物性試験も行います。

 また、我々として可能な範囲で、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)で有効成分を定量したり、確認したりする分析も行っています。それをしない場合は、原料メーカーが出荷時に行った試験成績書(COA=分析証明書)と、製品規格書を照らし合わせながら、同一であることを確認します。そもそも試験成績書のないものは受け入れませんし、それを用意できないメーカーやサプライヤーは選定していません」

NIRなど分析機器増強、その上で原料に求めること

 ウェルネスデイリーニュースで既報だが、同社は昨年、サプリの品質保証体制を強化した。特に、原料の品質確認のところを強化しており、原料の同一性確認を充実化させるため、近赤外線分析(NIR)ガンタイプ(ハンディタイプ)を2台増強した。

 NIRは、分析して現れるピーク波形と、ライブラリーに保存されている波形を照らし合わせることで、同一性を迅速に確認できる高額な分析機器。合致していれば同一だが、波形が大きく異なっていたりする場合は、中身が別物。もしくは異物が混入している場合には、「その量にもよりますが、すぐに分かります」(課長)。

 また、原料や製品中のヒ素や鉛などの有害金属を高精度に検出できる原子吸光光度計を新たに導入した。

 ほかにも、微生物の種類を特定して人体に影響のある菌種かどうかを確認するための迅速微生物同定装置をはじめ、万が一菌やカビによる汚染が発生した際、目視に比べて迅速かつ正確に菌やカビの数をカウントできる微生物迅速培養装置、製品に異物が混入してしまった場合にその物質名や組成比率などを判定するためのFT-IR(異物同定装置)などを取り揃えている。

 ここまで取り揃えているサプリ受託製造企業が他にあるのか記者は分からない。ただ、それでも課題はゼロではない。受け入れる原料の種類があまりに多いのだ。

 サプリの受託製造工場が抱えるそういった事情は、同社のような大手から中小まで同じだろう。そうであれば、工場に受け入れる前の段階で、原料の品質があらかじめ確保されているに越したことはないのではないか。受け入れ検査の一部を省略することもできそうだ。

 「原料も、GMPで管理して欲しいという思いは、あります。そうであれば、当社としてもより安全な原料を購入できることになりますし、(原料に)万が一問題が生じた場合も、製造工程をトレースするなどの調査を迅速に行えるようになります。当社としても、適切な対応を迅速に行えると思います」

 課長はそう話す。続けて部長がこう語る。

 「どのような認証を取得しているのかによっても、原料を選定したり、工場に受け入れたりする時の確認項目が変わってきます。認証が何もないということになると、原料がいくつもある中では、(採用するかどうかを判定する)優先順位を下げざるを得ません。ですから原料メーカー様、サプライヤー様には、積極的に認証をとっていただきたい。ワールドワイドに展開するのであれば、やはりそれが必須になると思います」

(つづく。次回は3月24日頃掲載予定)

【石川太郎】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
事業内容:健康食品・化粧品(医薬部外品)・MG(健康・美容器具)・医薬品の受託製造

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