3月4日は何の日？「HMPAの日」 記念日制定に絡めて伝える最新研究動向
少し過ぎてしまったが3月4日は何の日か。「現代作法の日」や「ミシンの日」などいくつかあるのだが、今年からは「HMPAの日」でもあるという。（一社）日本記念日協会（加瀬清志代表理事）が昨秋、新たに登録した。
HMPAとは、健康食品など食品の原材料として使用される成分で、正式名称は「3-（4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル）プロピオン酸」。植物に含まれるポリフェノールを摂取した時の代謝産物の1つ。機能性を訴求できる機能性表示食品にも利用されている。
HMPAが、機能性表示食品の機能性関与成分として消費者庁へ初めて届け出られたのは2022年2月。そこから100件近い届出が積み上がるのに要した期間は、3年程度だった。新規の機能性関与成分にしては、届出が急速に進んだといえる。
その理由としては、複数の機能を表示できることが挙げられるだろう。現在までに、「BMIが高めの方の腹部の脂肪を減らす機能が報告されています」や「食後血糖値が高めの方の食後に上昇する血糖値を元に戻しやすくするのをサポートする機能が報告されています」などといった機能性表示が届け出られている。
HMPAの機能性、丸善製薬が持つ「ある仮説」
「HMPAの日」を制定したのは、広島県尾道市を本拠地にする、健康食品や化粧品などに使用する原材料メーカーの丸善製薬㈱（日暮泰広社長）。HMPAを効率的に摂取できるようにする目的で開発した米ぬか発酵物の製造販売を手がけている。先月21日、記念日登録証授与式を同社東京支店内で開いた。
授与式には、HMPAの研究開発に携わった、同社研究開発本部の幹部ら関係者も出席。授与式を取材した業界専門メディアの記者らに開発秘話や将来展望を知らせた。
HMPAは、フェニルプロパノイド（C6-C3）を基本骨格として持つポリフェノールが腸内細菌に代謝されて生み出されることが分かっている。そうしたポリフェノールとしては、例えば、コーヒーに含まれるクロロゲン酸をはじめ、米ぬかに含まれるγ-オリザノールや、スパイスのターメリックの色素成分として知られるクルクミンなどがある。実際、2010年に発表された論文では、コーヒー摂取後の血中クロロゲン酸代謝物を分析したところ、HMPAが主要な血中代謝物として検出されたと報告している。
「野菜や果物などに含まれるポリフェノールは、ヒトに対して有効であることが知られています。一方で、吸収されにくかったり、作用機序が必ずしも明確になっていなかったりすることも知られます。（それにも関わらず機能性を発揮する理由について）私たちは、ある仮説を持っています。野菜や発酵食品が身体に良いのは、もしかするとHMPAのおかげではないのか、という仮説です」
授与式でHMPAの将来展望について話した同社研究開発本部基盤技術研究部の担当者はそう語り、その仮説を検証するために、2005年から大規模観察研究を続けている弘前大学センター・オブ・イノベーション（COI）に同社として参画したことを明らかにした。
認知機能めぐる研究進行
同社は今年4月、弘前大学の医学部に共同研究講座を開設する予定だ。講座を通じて、「毎年1,000人から3,000項目以上のデータを収集している弘前大学COIの健康ビッグデータを活用し、（ポリフェノールを含む）食事と腸内細菌の組み合わせによって得られるHMPAの機能性をより理解していきたい」（同）と語る。
授与式には、研究開発本部長の桒原浩誠執行役員も出席。HMPAについて現在進行中の研究内容について、「脳機能について進めている」と明らかにするとともに、現在、複数の大学研究機関と連携しながら進めている研究内容と「弘前大学で今後行う研究の結果がリンクしていくのだとすれば、（ポリフェノールやHMPAの機能性を）より実証しやすくなる」と今後に向けた期待を語りながら、HMPAの機能性研究領域を多方面へ広げていくことに意欲を示した。
桒原氏はまた、機能性表示食品の機能性関与成分としてのHMPAの届出が短期間で積み上がっていった理由を質疑応答で問われ、「（定量や定性などの）分析がしやすいからではないか。HMPAは（HPLC分析の中で最も汎用的な手法の）UVでもしっかり分析できる」とコメント。また、「安定性に優れる」ことも影響していると考察した。
【石川太郎】
（冒頭の画像：丸善製薬東京支店内で催された記念日登録証授与式より。右が同社の日暮泰広社長／文中の画像：授与式で、HMPAの化学構造式を背景に挨拶する同社研究開発本部長の桒原浩誠氏）
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