製品設計の段階から品質を作り込む アリメント工業、研究開発担うR&Dセンターの存在感
製剤技術の革新による健康社会への貢献と法令順守・環境に配慮した製品開発──そんなビジョンを掲げる機能性表示食品・サプリメントの総合受託開発・製造大手アリメント工業㈱(小泉達也社長)のR&Dセンター(下川義之センター長)を取材した。医薬品のように「製品設計の段階から品質を作り込むことで業界をリードしたい」という。
推進する技術開発と製品開発
グミ様ソフトカプセル、崩壊遅延防止ソフトカプセル、錠剤印刷技術。アリメント工業のR&Dセンターがここ3~4年で開発してきた製剤技術だ。グミ様ソフトカプセルはその名のとおり、ソフトカプセルを噛んで食べられるようにした摂取する人に優しい製剤技術。摂取上のメリットがあるだけでなく、「通常のソフトカプセルよりも熱に強く、低温から高温までの条件下で適切な柔らかさが維持されるため、気温が高いアジア圏などへの輸出にも適している」。
一方、崩壊遅延防止ソフトカプセルは、摂取した機能性関与成分の効果発現や製品品質などに関わる体内での崩壊遅延を防ぐ技術だ。カプセル被膜に食品添加物のリンゴ酸を配合することで、内容物と被膜の相互作用をコントロールできるようにした。ビルベリー由来アントシアニンなどのポリフェノール類をはじめDHA・EPAを含む魚油のほかビタミン類や発酵エキスなどを配合する際に有効な製剤技術、という。
従来のレーザー印字や刻印に代わる、可食インクを使った錠剤印刷技術も面白い。「錠剤の表面に企業ロゴや製造情報など高解像で印刷することで、製品の個性をより強調したり、錠剤そのものに重要な製品情報を明確に表示したりできる。デザインの切り替えも簡単で、個々のマーケティング戦略にも柔軟に対応できる」とする。
最初の1粒から顧客と共に歩む
R&Dセンターは昨年9月、組織改編を実施した。5つあった研究室を「製剤技術研究室」、「ソフトカプセル技術研究室」、「食品科学研究室」の3つに集約、統合。そのうち食品科学研究室は「分析・解析のスペシャリストが最新の装置を駆使してデータを取得し、開発品の品質・安定性を担保」する役割を担うといい、機能性表示食品をはじめとする顧客が販売する製品の開発や設計を、各種の科学的なデータと情報を基盤にしながら支える。
同社は今、製品の開発と設計について、「お客様と一緒に最初の1粒を具現化する」という理念を掲げている。それを実行するために、成分分析や製剤評価などを行うための理化学機器を多数導入しているR&Dセンターに併設するかたちで、「イノベーション・ラボ」を23年12月に竣工、昨年5月から本格稼働させた。
R&Dセンターの敷地内にある同ラボは、顧客とともに製品開発を進めることを目的に建設。ごく少量から生産できる各種の小型製剤機器や、製剤評価などのための解析・分析装置を導入した。「これまでは製品がある程度かたちになった段階でお客様に提案していた。お客様の要望をその場で反映させ、試作と評価を繰り返しながら、より精度の高い製品をスピーディに作り上げることができる」という。
イノベーション・ラボとR&Dセンターの内部を記者に案内しながら下川センター長はこう話した。
「原材料の選定を含めた製品開発、製品設計の段階で、製品の安全性と有効性を確保するための品質を我々(R&Dセンター)が作り込む。それを工場に技術移転し、(製造工程や品質を)GMPで管理しながら設計どおりに製造する。そうすることで、高品質な製品を恒常的に出荷できる。医薬品の品質確保でもそうした考え方が取り入られている。なにより製品設計が大事だ。それを行うために、様々な機器類を導入、増設した。ここまで分析や評価の設備が充実している(サプリの)加工メーカーは他にいないと思う」
【石川太郎】
(冒頭の写真:取材場所となった同社R&Dセンター「イノベーション・ラボ」。同社提供)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:山梨県南巨摩郡南部町南部7764(本社・工場)
静岡県富士市蓼原889-2(新富士工場)
静岡県富士市蓼原888(R&Dセンター)
URL:https://www.aliment.co.jp
事業内容:健康栄養食品・特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品の開発及び受託加工
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