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GXビジョンが閣議決定 516件のパブコメでは、賛成派、慎重派が対立も

  きのう18日、経済産業省が進めるエネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指す「GX2040ビジョン」が閣議決定された。

 同ビジョンは、2023年に閣議決定した「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」を改訂したもの。(1)はじめに(2)GX産業構造、(3)GX産業立地、(4)現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献、(5)GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取組、(6)成長志向型カーボンプライシング構想、(7)公正な移行、(8)GXに関する政策の実行状況の進捗と見直しに関する8パートで構成されている。

 経産省が17日に公表した「GX2040ビジョン(案)」に対するパブリックコメントでは、516件の意見が寄せられた。再生可能エネルギーの導入やカーボンプライシング、2050年ネットゼロの達成時期、GX実行会議の民主的正当性などについて、賛成派と慎重派で意見が対立した。
 また、用語の定義やカーボンリサイクル燃料の位置づけなど、明確化を求める声も多く見られた。以下に、主な対立点を整理する。

再生可能エネルギーと化石燃料の位置付けは?

 再生可能エネルギーの主力電源化は進めるべきであり、量産化による低コスト化や蓄電池との併設で安定供給を強化すべきとの賛成意見があった。これに対し、再生可能エネルギーの拡大は電力の安定供給に課題があるため、既存の火力発電や原子力の活用を維持すべきとの反対があった。
 また、CCS(炭素回収・貯留技術)による火力発電の脱炭素化を進めるべきという意見と、CCSの技術的・経済的な不確実性を理由に依存すべきではないという意見が対立した。

GX推進におけるカーボンプライシングの導入

 CO2排出に対する課税(カーボンプライシング)については、積極派、慎重派、反対派がそれぞれ意見を寄せた。
 GHG排出による外部不経済を内部化する水準のカーボンプライシングを導入すべきとの積極派に対し、課税導入は、企業の国際競争力を低下させる恐れがあるため、段階的な導入とするべき、炭素税の導入が「エネルギー価格の上昇を引き起こし、国民負担が増加する可能性がある」との懸念が示された。また、「成長志向型カーボンプライシングは絵に描いた餅で終わるのではないか」などの厳しい意見も寄せられている。

カーボンニュートラル(CN)目標の達成時期は?

 「日本は気候変動問題の加害国であり、2050年では遅すぎるため45年までにネットゼロを達成すべき」、「欧米諸国の動きと比較し、脱炭素化の目標時期を早めることが国際的な競争力維持につながる」などの主張があった一方で、「急激な目標の前倒しは産業に負担を与えるため、現行の50年目標が妥当」、「段階的な移行を進めるべき」との声も上がった。

GX2040ビジョンはエネルギー計画と一体(経産省)

 GX実行会議と民主的手続きについて、「GX2040ビジョン」がエネルギー基本計画よりも上位に位置付けられるのは、民主的手続き上問題があるとする意見や、GX実行会議が十分な議論を経ずに政策を決定しているため、より開かれた議論の場が必要との指摘があったのに対し、経済産業省は、「GX2040ビジョン」はエネルギー基本計画と関連するものであり、一体として議論が進められている」と説明している。

公正な移行を求める声強く

 「脱炭素に向けてGX製品市場の創出や『公正な移行』を実現すべく、社会全体で行動変容を進めていくべき」など、GX推進による「公正な移行(Just Transition)」を求める声が強く、また評価する声も数多かった。
 これに対し経産省は、GX製品市場の創出、脱炭素の実現に向けて国民の行動変容の必要性を強調している。

「グリーン」「GX」に対し明確な定義求める意見も

 「グリーン」や「GX」の定義が不明確なため、明確な基準を設けるべきとする意見があった。
 特に、「GX(グリーントランスフォーメーション)」という用語が抽象的であり、より具体的な説明が必要との指摘があった。
 これに対して経産省は、「グリーントランスフォーメーション」とは「化石燃料中心の社会から炭素中立型の社会・経済・産業構造へ転換すること」と説明するにとどまり、より具体的な定義は示していない。

 カーボンリサイクル燃料とバイオ燃料の活用に関して、カーボンリサイクル燃料の商用化まではバイオ燃料の導入を推進し、その後もバイオ燃料と併用すべきとの意見があったのに対し、バイオ燃料の生産に伴う環境負荷や食料問題への影響を考慮し、導入には慎重であるべきとの意見も見られた。

【田代 宏】

詳細はこちらから(経産省HPより)
パブコメの結果はこちらから(e-GOVより)

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