山笠太郎の健康管理とほほ日記 ~不摂生な私が25年もスポーツクラブに通える理由~(19)【東京編(6)】
前回からの続き、昇進試験にのぞむ太郎
結局、昇進試験でのプレゼン資料の内容は、1カ月ほど前まで所属していた百貨店流通チームでの新規チャネル(ギフト専門店等々)の開拓についての取り組みと今後の展望をテーマとして掲げた。
そんなこんなで提出資料作成でバタバタの最中「まてよ…?」と、ふと疑問が湧いた。
「俺って先月の人事異動で健康食品課長になっちゃった訳だろ…てぇ事はだよ…この健康食品課長って言うポジションて、本来はこの昇進試験に受かった奴か、すでにマネージャー職になっている奴が着くポジションだよな…? 俺がなっちゃうのって何かおかしくね…?」と素朴な疑問が頭をよぎったものの「やべえ、提出期限に間に合わねぇ…(汗)」の気持ちに瞬時にかき消されていった(苦笑)。
いよいよ昇進試験のプレゼン本番当日だ。実感が湧かないながらもプレッシャーを強く感じているという不思議な感覚に戸惑いながら控え室に入った。小生の次は、中堅食品問屋と粘っこい同行セールスで数字を泥臭く稼いでいる1年先輩の家庭用商品部の浅田さんだった。常日頃より頑固な上、少し嫌みのスパイスが効いた辛口トークで上司や同僚から煙たがられていた浅田さん。唐突に「山笠さん、このプレゼンに要する時間は10分程度。時間厳守、それより短くても長くてもそれだけでアウトらしいよ、山笠さんは話し長いから気を付けた方が…」まさにプレゼン直前。何とも嫌らしいアドバイスをかましてきた。
さて、プレゼン会場に入ると審査委員は執行役員を中心に7~8人程いたであろうか…予想より人数が多く、さすがの小生も少しひるんだが、たまたま一番手前に座っていたのは小生が新入社員の頃、同じフロアで商品企画開発部の課長として何かと可愛がってもらっていた総合研究所兼基礎研究所の吉山所長だった。「オオッ」とばかりににこやかに迎えてくれて、小生も少しばかり落ち着きを取り戻した(汗)。
早速プレゼン資料にのっとり、ひと通り説明が終わりかけた頃の事だ、突然、大企業向け融資や投資を専門とする知る人ぞ知る名門銀行から派遣?されてきた神山総務部長が「ところで山笠君は今度健康食品課長だろ?これからはお堅い中州食品工業もこういう可能性のあるマーケットに思い切ってチャレンジしていく必要があると僕は思うのだけれど。仮に、君にもし3億好きに使えってカネ渡したらどう事業構築していくのか聞きたいなぁ?」と突然話があらぬ方向に展開していった。すると吉山所長が助け船とばかりにひっくり返りそうなハイトーンボイスで「山笠君は今やうちの会社で健康食品については一番詳しいと思いますよ」小生的には内心「3億かぁ…微妙」と思いつつ(笑)モードを切替えて次の瞬間から汗をふきふき山笠ワールド全開のトークをぶっ放した(苦笑)。
超ウルトラ狭き門、くぐり抜けたか否か
いくら大手食品メーカー重役のお歴々と言えど現在とは違い当時は「健康食品なんていかがわしい」と思っている輩が多数派の時代であったのだ。
結果的に小生のプレゼンは、俗に言う「煙に巻く」っていう展開となってしまった(苦笑)
気が付けば目安の10分を大幅にオーバーし30分を優に超えてしまっていた(冷汗)しびれを切らし気味な人事部長が「もうこの辺で宜しいでしょうか」との発言で終了となった。何だか不思議な感覚と高揚感でプレゼン会場を後にした。
控え室で待機していた浅田さんが待ち疲れたとばかりに「山笠さん長過ぎだよ…落ちたな」といきなりの激辛トークを浴びせてきた(苦笑)
さて昇進試験の結果は…と言うとその年の合格者はわずか3人。うち2人は技術系で、事務系営業系での合格者は小生一人と言う超ウルトラ狭き門であった。
そんなこんなで「運とタイミング」に恵まれ(笑)名実ともに?健康食品課長兼プロダクトマネージャーとなった訳であるが、それからの小生の日々は健康食品ならぬ不健康な日々の連続となっていくのであった(汗)
(つづく)
<プロフィール>山笠太郎(やまがさ たろう)
三無主義全盛の中、怠惰な学生生活を5年間過ごした後、運良く大手食品メーカーに潜り込む。健康食品事業部に配属され、バブル期を挟み10年。その間に健康食品業界で培った山笠ワールドと言われる独自の世界観を確立。その後社内では様々な部門を渡り歩き47都道府県全ての地に足を踏み入れる事となる。