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日弁連、サプリ法の必要性を議論 シンポ開催、有識者交えて2時間

 「サプリメント法の必要性を考える」と題したシンポジウムを日本弁護士連合会(日弁連、渕上玲子会長)が14日夕、東京・霞が関の弁護士会館内会議室とオンラインのハイブリッドで開催、有識者と弁護士らがサプリの統一的な法規制の必要性について討議した。シンポを取り仕切った日弁連の消費者問題対策委員会食品安全部会は、昨年発生した小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題(紅麹サプリ事件)は「機能性表示食品だから発生した事故ではない」との認識を示しつつ、サプリ全体に対する統一した法規制が必要だとする考えを鮮明にさせた。意見書を取りまとめるべく、引き続き日弁連内で議論を進める。

問題意識、「サプリ形状の食品」に向かう

 シンポは、有識者による講義、機能性表示食品など健康食品に対する日弁連の活動報告、パネルディスカッションの3部構成で2時間強にわたり行われた。主催者によると、会場とオンラインを合わせて約130人が参加した。

 講義したのは、消費者委員会委員を務める今村知明・奈良県立医科大学公衆衛生学講座教授をはじめ、サプリ製造施設等のGMP第三者認証などを手がける池田秀子・(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)理事長のほか、元主婦連合会事務局長の佐野真理子・食の安全・監視市民委員会共同代表の3人。

 それぞれ「紅麹事件を受けての保健機能食品制度の対応と課題」、「サプリの品質管理」、「消費者から見たサプリに関する規制の必要性」をテーマに講義した。佐野氏は、機能性表示食品制度の廃止を主張。その上で、サプリを食品と医薬品の間に位置付け、「消費者に分かりやすい新たな法律による規制が必要」だと意見した。

 池田氏は、講義で、医薬品を参考にしたGMP(適正製造規範)でサプリの品質が管理されなければならない理由を説明。「安全性だけでなく、機能性を表示する食品そのものの有効性をも保証することが非常に重要だ。その結果として、製品に(ヘルス)クレーム(機能性表示)がなされる。そのことを理解して欲しい」と訴えた。

 今村氏は、紅麹サプリ事件に対する政府の対応方針(機能性表示食品制度等の改正内容)を踏まえ、消費者委員会として「サプリ全体に対する規制をもっと強化すべきだ」とする意見を内閣総理大臣へ提出したことを講義の最後に伝えた。

健康被害、「機能性表示食品だからではない」

 日弁連は、政府に対し、機能性表示食品制度に対する意見を繰り返し申し立ててきた。制度創設が閣議決定された2013年、制度創設自体に反対する意見書を提出したのを皮切りに、制度施行直後の15年9月にも意見書を提出。「全てが事業者責任」の制度は望ましくないとして、安全性及び品質の確保体制と健康被害情報の収集・報告体制の整備を法的に義務付けること、届出制を取り止め、安全性や機能性の要件を満たさないことが明らかになった場合に「登録取り消し」を可能とする制度に改めることなどを求めた。

 以降、去年1月、科学的根拠などが不十分な表示・広告に対して積極的な措置命令と情報公開を行うべきことなどを意見。また、紅麹事件が起きた直後の同年4月、一刻も早い原因究明と十分な被害者救済などを求める会長声明を出した。さらに7月にも、政府が示した改正機能性表示食品制度(改正食品表示基準)の案に対する意見書を提出。さまざまな遵守事項が遵守されていなければ届出の要件を満たさないといった本来の届出制とは相容れない「複雑な建付け」や、安全性を確保するための規制を安全性とは直接の関わりがない食品表示法に基づく食品表示基準の中で規定することなどに疑義を呈した。

 この日のシンポで活動報告を行った弁護士の西野大輔・日弁連消費問題対策委員長(食品安全部会長)は、紅麹サプリ事件を踏まえた健康食品に対する現在の「問題意識」と「検討事項」を伝えた。

 事件は、「機能性表示食品だから起きたとは必ずしも言い切れないのではないか」とした上で、「(健康被害が生じたのは)サプリ形状の食品であることに着目し、むしろ(機能性表示食品にとどまらない)サプリに関する統一した規制が必要ではないのかという問題意識で検討を進めている」とし、「検討中の論点」として4事項を提示。①製造・販売について一定の要件を課すこと、②健康被害情報の提供と公表、③表示・広告規制、④過剰摂取等への注意喚起、啓発・教育活動の充実を求めることの明記──を挙げ、「現在進行形で検討を進めているところだ」とした。

サプリ法、どのようなルールが必要か

 パネルディスカッションは、講義した3人の有識者を中心に、西野氏のほか、コーディネーターとして、弁護士の菅聡一郎・日弁連消費問題対策委員会委員(食品安全部会)が加わるかたちで行われた。菅氏は、消費者委員会食品表示部会の委員。また、雪印乳業低脂肪乳集団食中毒事件や茶のしずく石鹸アレルギー事件などの被害救済弁護団にも関わった経歴を持ち、昨年10月結成された「紅麹サプリ被害救済弁護団」の副団長を務めている。

 約1時間にわたり行われたパネルディスカッションは、「サプリを規律する一本筋の通った法律を作っていく必要があるのではないか。また、そうであるとしたら、どういう法律が必要なのか」(菅氏)をテーマに進行。行政の言う「いわゆる健康食品」には、特定保健食品や機能性表示食品など、許可制だったり届出制であったりと制度の異なる「保健機能食品」が存在すると同時に、保健機能食品以外の「その他のいわゆる健康食品」が市場に多数流通しているという「グラデーション」(同)がある中で、サプリ横断的な法律の必要性が討議された。

 今村氏は、政府の諮問を受けて改正食品表示基準(改正機能性表示食品制度)の案を審議した消費者委員会食品表示部会の議論の中でも「サプリ法という概念が必要ではないかのという議論が熱く行われた」と振り返り、そのため、消費者委員会として、サプリ全体に対する広告表示を含めた法的な規律と監視・執行体制を求める意見書を政府に提出したと説明した。「サプリ全体に対する規制強化を考えていくべきだ。現行法でできることもある」とした。

 佐野氏は、機能性表示食品制度について、「規制改革の1つとして導入された事業者のための制度であって、消費者を軽視、というよりもほとんど考えていない制度だ」とした上で、紅麹サプリ事件を受けて大幅に改正された同制度について「この程度の見直しでは、同じような事件が起きる可能性がある」と指摘。その上で、「消費者にとって、食品なのか、医薬品なのかを判断するのが大変難しい」サプリについて、「消費者の権利や情報公開を前提とした、厳しくもシンプルな新しい法律が必要ではないか」と述べた。

 一方、池田氏は、「さまざまなライフスタイルのもとで、それぞれの人が健康の維持、増進のために、食品の三次機能(生体調節機能)を利用したいと考えている。実際にそうした機能性が発揮されることが、これまでに多くの研究で裏付けされている」としつつ、「そうした機能性を正しく商品に表示し、消費者による自己選択ができる制度を目指す必要がある」と述べた。

 その上で、機能性を表示する食品(サプリ)の品質を管理する手段であるGMPについて、「多大な労力と時間、そして資金を必要とするものだが、それを行う意味は、科学的なエビデンスをもって安全性と有効性を立証し、そのエビデンスを製品に保証することにある」と解説。そうである以上、機能性をうたう「全てのサプリに対して同じルールを適用していくことが必要だと考えている」とした。

難問は「定義」、しかし海外はとっくに規定

 一方、パネルディスカッションでは、サプリを規律する法律を作る困難さも議論された。

 「一番の難問は、サプリをどう定義するかではないか」と菅氏。これに対して今村氏は、「(サプリを定義する)難しさを痛感している」と応じ、形状だけで考えると「カプセル(をサプリと定義すること)は簡単だが、粉を溶かした水分(ドリンク)はどうか。ほぼ全ての食品が対象になってしまいかねない」と指摘。「そうすると、ヘルスクレームを引っかけない限り(機能性表示の要素を定義に盛り込まない限り)、実効性のある定義として成立し得ない」とした。

 ただ、今村氏は、「定義さえできれば、規制強化は難しくない」とも指摘。サプリ法を制定せずとも「(現行の)食品衛生法の中で規格基準を設定することができる。その中で、GMP(の義務化)などもできる」と述べた。しかし、だとしても、「広告規制は食品衛生法にはない。法律を改正しなければ、広告規制はできない」とした。

 他方で、海外のサプリ制度に精通する池田氏は、海外ではサプリを明確に定義付けていると指摘。サプリとは基本的に、第1に食事を補充するものであること(食卓に上る食品の1品目ではないこと)、第2に栄養学的および生理学的成分を含んでいること、第3にカプセルや錠剤など一定少量を摂取する形状であること──といった要素を持つものであり、海外では、人々が経口摂取するものを医薬品、食品、そしてサプリの3つに区分けし、サプリを法的に定義づけているとした。

 池田氏はまた、海外諸国が一般的に、医薬品と食品の間にサプリを法的に位置付けている理由について、「サプリの有効性、あるいは機能性表示を容認することのほか、(通常の加工食品にはない過剰摂取などの)リスクを管理するという考え方が入っている」と説明。その上で、日本においてもサプリの安全性や有効性といった品質が一定レベルで管理されるようにするためには、「やはり独立した法律が必要になる。そのことは、(貿易や国内市場保護などの観点から)国際的に見てもますます重要になっていく」と述べた。

 パネルディスカッションの中で、コーディネーターの菅氏は、日弁連の消費者問題委員会食品安全部会で現在検討を進めているサプリ法に導入すべきルールの試案を示した。①原材料から最終製品までの製造販売に関する営業許可制度の導入、②サプリ製造全体に対するGMP基準の適用義務付け、③販売許可制度の導入、その上で機能性表示を行うのであればその内容について特定保健用食品に準じた許可制度の導入──の3つ。それぞれについてどのような問題があるか、有識者に見解を求めた。

 今村氏は、①と②については、「(サプリの)定義さえできれば、食品衛生法の中で義務付けることはさほど難しくない」としたが、③は「要するに、機能性表示食品制度を無くすという話だと思う。現実問題として、無くせるのかという問題がある」とした。

 池田氏は、「機能性表示食品制度の届出制は、健康食品(業界)にとって大きな前進だった」として、③を疑問視。「(許可制は)特定保健用食品制度で総括されたように、コストや時間がかかって中小企業が入りにくい(制度を活用しにくい)という問題が現実としてあった」ほか、「安全性、有効性、そして品質の全てを国が責任をもって許可することが本当に現実的なのかと疑問に思う」とも述べ、販売許可制ではなく「届出制を進めていくべき。ルールをもう少し明確化し、透明性をもった届出制度を進めていくことが非常に重要だ」と強調した。

【石川太郎】

(冒頭の写真:シンポ内で行われたパネルディスカッションの様子。

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