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受託メーカーなりの「物流問題」対策 東洋新薬、小型化と省人化でコスト削減図る

 例えば大容量のパウチ充填したプロテインを通販で販売するとき、商品配送手段の選択肢は一般的に、宅配便となるだろう。コストのより安いメール便を利用できると良いが、厚みが出るためメール便に収納できない。そんなトレードオフの関係を解消する方法と技術を、健康食品受託開発・製造大手の㈱東洋新薬(服部利光社長)がこのほど考案。大量生産する大容量のプロテインをメール便で配送できるようにした。

大容量プロテインをメール便でお届け

 その原理は比較的単純で、プロテインをパウチに充填した後、パウチの中の余分な空気を抜く。脱気による減容化(容積を減らすこと)だ。それによって充填後のパウチの厚みをぐっと抑えることで、メール便に収められるようにした。商品カタログなどを同梱させることもできる。

 どうやって脱気するのか。作業員が充填ラインに張り付いて、1つひとつ「手詰め」しながら余分な空気を根気よく抜いていく、という訳ではない。それだと大量生産が困難で、結果的にコストが高く付く。また、大きな投資を行って、真空充填機を新規導入した訳でもない。そうではなく、通常使用している全自動の給袋充填ラインで大量生産しつつ脱気を行う。秘密は、プロテインを充填するパウチにある。

 コーヒー豆の袋を思い浮かべていただきたい。コーヒー豆から発生される炭酸ガスを抜くためのバルブが付いている。そのようなバルブの付いたパウチにプロテインを全自動充填した後、開封することなく減圧ポンプを使ってバルブから効率よく空気を抜く。そして最後にバルブを密閉する専用シールを張る。同社が考案したのは、そういった仕組みだ。「公知の技術を活用しているが用途は全く新しい」(健食事業部統括マネージャー)という。

 通常のパウチを使用したプロテインと比べると、パウチが特殊であること、脱気とシール貼りといった人が行う工程が増えるため、1袋あたりの製造コストは多少にせよ高まる。しかし、メール便を利用できることに伴う配送コストの削減効果は、一概には言えないものの同社の試算では1袋当たり「数100円」と大きい。

 それだけでなく、減容化されているため物流倉庫における保管コストの削減にもつながる。さらに、商品をポスト投函できるため、再配達を無くせるメリットもあり、顧客(販売会社)、購入者(消費者)、宅配事業者(ドライバー)が満足する「三方良し」を創出できる。

個包装商品のメール便対応充填・包装を全自動で

 物流の停滞や輸送・配送コストが高まる「物流の2024年問題」。通販を主体とする健康食品業界も無縁ではなく、「お客様から消費者へ商品をどう届けてもらうか。そこは我々、受託各社も常に考えているし、いかに良い方法をお客様に提案できるか競争している」。東洋新薬の最新鋭健康食品工場「インテリジェンスパーク」の工場長はそう話す。

 同社の場合、商品包装の「コンパクト化」と製造工程の「省人化」に活路を見出している。前述の脱気パウチがまさにそうだが、配送コストを抑えられるメール便に対応した商品設計と、それを全自動的に製造できる機構の開発に以前から取り組んできたという。

 その代表的な例が、通常は人が行う場合の多い、三方シールやスティックなど個包装商品のメール便対応充填・包装のフルオートメーション化(全自動化)だ。2018年に新規導入した。

 同社オリジナルの全自動充填包装設備を機器メーカーと共同開発。現在までにライン数も増え、さまざまなタイプの個包装商品のメール便対応充填包装が全自動で行えるようになっている。人が介在しないためヒューマン・エラーはなく、24時間フル稼働させることも可能。そのため、製造コストを抑えるメリットも生み出せる。

 通販企業を顧客に多く抱える同社。コンパクトな商品設計を志向している背景には、配送コストに直面する顧客からの要請もある。豪華な化粧箱とともに商品を届けたいというニーズもあれば、配送コストをできるだけ抑えたいというニーズも。後者に応えようとするのであれば、宅配便よりも配送コストの安いメール便に収めることのできる小型商品が最適解。その上で、充填包装を含めた製造を自動化できれば、製造コストも削減できる。

 大型化・高速化・自動化・省力化を特長とするインテリジェンスパークの工場長は、「もっと安く、もっと早く。そんなニーズに応えるためにも製造の自動化を進めている。もちろん、何でもかんでもという訳にはいかない。ただ、個々のお客様のニーズを聴き取りながら、臨機応変に対応させてもらっている」と語っていた。

【石川太郎】

(文中の画像:通常パウチと脱気パウチの比較。東洋新薬提供)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
事業内容:健康食品・化粧品(医薬部外品)・MG(健康・美容器具)・医薬品の受託製造

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