探訪、スーパーオリエント39(5) 時代に合わせて変化していく伝統素材
販売開始からおよそ半世紀。インターナショナルフーズ㈱(東京都多摩市)が原材料販売を手がける植物発酵エキス「スーパーオリエント39」は、時代の要請に合わせながら変化してきた。
今は、実質的な開発者である中医師の林玉田氏(故人)が考案した凍結乾燥を「肝」とする製法はそのままに、品質を確保するための製品分析データをはじめ、安全性や機能に関する一定の科学的な根拠を身にまとう。
機能性に関しては、整腸や腸内環境に対する有用性を示す臨床試験データをいくつか持つ。
インターナショナルフーズは、そのように、伝統的な健康食品原材料の植物発酵エキスを時代に即した製品に発展させ、群雄割拠の健康食品市場で勝ち残っていくための取り組みを進めた。
それと同時に、「スーパーオリエント39」の姉妹製品や関連製品の開発を積極的に行ってきた。その理由について同社の代表者は、「1製品ではニーズに応えきれない」と話す。
同社が「スーパーオリエント39」に続いて健康食品市場に提案したのは、「スーパーオリエント108」だった。
「ーー108」の発売は2010年代初頭。国内で製造される植物発酵エキスに「ーー39」を加えたものだ。製造する際に加熱工程を経るため、「ーー39」の特徴の1つである酵素活性は失われる。だが、2つの植物発酵エキスを組み合わせているため、使用する野菜や果物などの原料が100種類を超える(109種類)。そのように使用する原料の豊富さで、他社製品との差別化を図りたいニーズに応えようとした。
使用原材料の「数」のコンセプトは、それ以降の製品にも引き継がれる。「ーー108」に続いて「植物発酵エキスIL(アイエル)」を発売。使用する原料をさらに増やして178種類としつつ、同社として初の液体タイプの植物発酵エキスとして製品化した。
「ーー39」の性状は顆粒、「ーー108」は粉末。そのため、最終製品化する際の剤型(形態)の選択肢はスティック分包、あるいはハードカプセルや錠剤に限定された。そうした中で「ーー108」を加えることで、植物発酵エキスで主流のドリンクにも対応できるようにした。
以後、水溶性を高めた粉末の「植物発酵エキスパウダーZ」(使用原材料234種類)と「植物発酵エキス末I」(同165種類)を開発し、順次発売。「スーパーオリエント39」だけでは応えきれないニーズを極力取りこぼさないようにするための製品強化を図り、現在に至る。
新たに製品ラインアップに加えた各植物発酵エキスについても、「スーパーオリエント39」と同様、品質確保や科学的な根拠の取得などに取り組む。
科学的な根拠の取得には、「スーパーオリエント39」と同じように女子栄養大学栄養クリニックが協力。「ーー108」から「ーーI」まで、安全性は人を対象に確認した。
機能性に関しては、この連載の第4回でも触れたが、「ーー108」では腸内細菌叢の多様性を増す働きのほか、便通改善機能がそれぞれ臨床試験で示唆されている。また、まだまだ科学的データの積み上げが必要だが、「ーーZ」、「ーーI」についても、それぞれ血糖値上昇抑制や便通改善に働く可能性が、人を対象にした試験で確認されている。
「どんな機能を検証すれば良いのか悩んでいるが、今後も臨床試験を続け、各製品のデータを増やしていきたい」。同社代表はそう話している。
今後どう変化?
以上、本連載では、1980年代に民間が行った商品テスト結果を足掛かりとして、販売開始から半世紀を迎えようとする植物発酵エキス「スーパーオリエント39」を紐解きつつ、健康食品市場に展開する老舗BtoB(対事業者)企業、インターナショナルフーズによる植物発酵エキスに対する長年の取り組みを駆け足でふり返ってきた。
同社の代表が繰り返し語る言葉がある。それは、「時代、時代に、合わせながらやってきた」。製造方法をはじめ、受け継がれてきた伝統を尊重し、それを強みにしながらも、その時代、時代に求められる物事を新しく取り入れながら、少しずつ変化させてきた──そういったことを繰り返し訴える。
では、今後どうしていくのだろうか。
健康食品市場の主流は機能性表示食品となり、そのうち錠剤やカプセル剤などサプリメント形状の最終製品には、GMP(適正製造規範)に基づく製造・品質管理が法的に義務付けられることになった。直接的にはその義務のかからない原材料にしても、安全性や品質の確保がこれまで以上に求められることになるだろう。そうした流れに抗うことは、機能性表示食品以外の健康食品も、おそらくできないに違いない。
そうした中で、植物発酵エキスを健康食品市場でどう勝ち残らせていくのか。「スーパーオリエント39」をはじめとする自社の植物発酵エキス製品群に対して、インターナショナルフーズが与える次の「変化」に注目したい。
(了)
【石川太郎】
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