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「紅麹事件」の影響、食品CRO機関にも 求められる試験品質の向上

 小林製薬㈱の紅麹サプリ事件発生直後、通販各社には消費者からの定期購入を解約したい旨の連絡、取り扱う健康食品の安全性に対する質問や相談が相次いだ。その影響は、食品の臨床試験を請け負う食品CRO機関各社にも及び、コンプライアンス意識の高い大手食品メーカーを中心に、試験設計の見直しや安全性試験の追加など試験品質の向上を求められている。食品CRO機関が受けた紅麹事件の影響、今後の安全性への取り組み、改正された機能性表示食品制度への各社の対応、高品質な試験を提供する食品CRO機関各社をレポートする。

食品CRO10社に聞いた紅麹事件の影響は?

 今回、聞き取りを行った10社のうち、影響が「ある」、「ない」それぞれ5社ずつという結果となった。その影響は、年商に対して10%程度と回答。中には20%程度とする食品CRO機関もあった。特に大手食品メーカーをメインクライアントとする食品CRO機関にとっては深刻だったようで、事件発覚当初、会社の方針としてひとまず原因や機能性表示食品制度の方向性が分かるまでは新規の試験を止めるというケースが相次いだという。動いていた案件も止まり、再開の見込みが立たなかったり、早々に中止となる案件も出たと聞く。コロナ禍で準備していた試験が止まるなど、大きく影響を受けた食品CRO機関もあったが、今回の紅麹事件の影響も決して小さくない。
 「巡る検討会」を経て機能性表示食品制度が改正された。改正された制度の概要に対する理解度を確認すると、5社が「十分理解している」、4社が「ある程度理解している」となり、「あまり理解できていない」は1社のみとなった。改正された制度への対応における影響はどうか。「ある」が3社に対して、「ない」が7社という結果に。「ある」とした事業者からは、「すでに届出した資料の修正」のほか、「届出をサポートした企業からの問い合わせが多く入っている」という声が聞かれた。

安全性への対応は分かれる、論文執筆には消極的

 今年2月、元・国保旭中央病院医長の染小英弘氏らの研究グループによる研究成果が国際学術誌「Journal of Clinical Epidemiology(臨床疫学ジャーナル)」(オンライン版)に掲載。5月に染小氏を筆頭執筆者とする論文(以下:染小論文が、「Journal of Clinical Epidemiology169巻(2024年5月)」に掲載された。その詳細は後段に譲るが、影響は少なからずあったようだ。
 この染小論文と機能性表示食品制度の改正によって、今後、機能性表示食品をはじめとしたサプリメントの品質・安全性に対する要求が高まると考えられることについて、各社の対応を確認した。
 「同制度が施行された時点から安全性に関しては厳格に対応しているため、特別、対応に変更はない」、「安全性に関してはガイドラインが曖昧で、依頼主によって取得データのレベルの差があることから、すでに安全性試験の内容をOECDガイドラインを参考に提案している」と、すでに取り組んでいるという理由で改めて強化する必要はないという声が聞かれた。同様の立場として別の食品CRO機関は、「倫理指針を含めた研究倫理に忠実であることを前提とした場合、科学的または医学的妥当性のない結果を根拠とした推察を立てることは従前も今後もない。注意すべき点としては、研究支援機関である我われCROは黒子役であり、最終的には研究依頼者にあたる企業における情報の使い方次第で情報の解釈は変わる。そのため、我われの立場としては、研究結果を正確に伝えることを怠らない姿勢で今後も変わらず臨みたい」と回答した。

 一方で、ある事業者は「これまで通り、法規制に則って対応していくが、安全性の検査項目を増やす可能性はあると考える」と回答。また別の事業者は「安全性に関しては製造・販売者によるところが大きいが確認はしたい」と回答するなど、安全性に対する取り組みを強化する動きも見られた。さらに別の意見として、「品質が高まること、安全性をより高めることは業界が向かう方向性として悪い事ではないが、事業者(メーカー側)の負担が大きくなりすぎる点は懸念事項。高すぎるハードルは中小企業の新規参入が厳しくなり、大手のみ制度を利用することになってしまうと、業界の発展には寄与しないと考える」という声もあった。
 合わせて、臨床試験を受託した際の論文執筆の実施状況についても確認した。8社が「ケースバイケース」と回答したが、黒子役だと回答した事業者もあったように、「行う」場合と「行わない」場合の割合から見ても、あまり積極的には行っていない事業者が多いという印象を受けた・・・・・・

【藤田 勇一】

(続きは会員のみお読みいただけます。残り6,258文字。続きは「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内「Wellness Monthly Report」2024年11月号(77号)の特集「食品CRO」から)

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