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FFC改正法とDSHEAは異なる 【寄稿】参考にしたのは米国の「制度」ではなく「表示制度」

㈱グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田 猛

 今年9月、機能性表示食品の改正が行われた(一部現在進行中)。「改正」と言われるが、3.11通知(ガイドライン)が法令化されたというのが実情で、制度そのものの本質は大きくは変わっていない(義務化されたという点は大きな変更ではあるが)。そしてそれに付随する形で「サプリメント形状の加工食品」に対して「強く望まれていた」ことが義務化された、と理解をしている。

「食の有する健康増進機能の活用」が閣議決定

 機能性表示食品制度を理解するには、その誕生の時にさかのぼる必要がある。
 平成25年(2013年)6月14日、日本再興戦略「食の有する健康増進機能の活用」において、以下の通り閣議決定された。

「いわゆる健康食品等の加工食品及び農林水産物に関し、企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策について、今年度中に検討を開始し、来年度中に結論を得た上で実施する。検討に当っては、国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上でその旨及び機能を表示できる米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にしつつ、安全性の確保も含めた運用が可能な仕組みとすることを念頭に行う。」

 そしてその後、食品表示法に基づく食品表示基準(内閣府令)において、検討会報告書で取りまとめられた制度の基本事項が規定され、制度の運用に係る事項は、ガイドライン等で具体的に規定されることとなった。

機能性表示食品とは

 食品表示基準第二条第一項第十号における機能性表示食品の定義は以下の通り(長文なので、著者により要約)。

「疾病に罹患していない者に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品であって、当該食品に関する表示の内容、食品関連事業者名及び連絡先等の食品関連事業者に関する基本情報、安全性及び機能性の根拠に関する情報、生産・製造及び品質の管理に関する情報、健康被害の情報収集体制その他必要な事項を販売日の六十日前までに消費者庁長官に届け出たものをいう。」
 つまり、対象は「容器包装に機能性表示をする食品」となる。

DSHEAは「教育法」

 一方、DSHEA(ダイエタリーサプリメント健康教育法)は、以下の内容を包摂する法律である。その主な内容は以下のとおりである。

– ダイエタリーサプリメントの定義
– 安全性
– 構造/機能表示
– NDI (New Dietary Ingredient :新規ダイエタリー原料)申請
– 製造、品質管理(cGMP: current Good Manufacturing Practice)

 そして、最も重要なポイントが、この法律は、消費者の健康上の利益のために、また国家の医療費削減への貢献のために定められた「教育法」であることである。

 日本は「表示法」、米国は「教育法」、この違いは決して小さくないというのが、著者の長年の持論である。

 DSHEAにおけるダイエタリーサプリメントの定義は以下の通りである。

米国連邦食品医薬品化粧品法 第201条(ff)
「ダイエタリーサプリメント」という用語は、食事を補助することを目的とし、以下のいずれかの栄養成分を含む製品(タバコを除く)を指す:

・ビタミン
・ミネラル
・ハーブまたはその他の植物由来成分
・アミノ酸
・人間が食事を補うために使用することで総摂取量を増加させる栄養物質
・上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で述べられた成分の濃縮物、代謝物、構成成分、抽出物、またはそれらの組み合わせ
 これらの製品は以下の条件を満たす必要がある:
(A)摂取のために特定の形状をとること(例えば、タブレット、カプセル、パウダー、ソフトジェル、ジェルカプセル、液体)、または、こうした形状でない場合は、通常の食品や食事の主成分として表現されていないこと。
(B)ラベルに「ダイエタリーサプリメント」と明示されていること。

ダイエタリーサプリは「食事を補うもの」

 重要なポイントは「食事を補助することを目的とする」とその役割(位置付け)が明確にされている点である。これは、米国以外の国々、EUのフードサプリメント、ASEANのヘルスサプリメントも同様で、食事を補うものという位置付けが明確に定義されている。
 一方、機能性表示食品の対象は、容器包装された食品全般となる。

 その結果、米国では食品とダイエタリーサプリメントという2つのカテゴリーが存在することになるが、日本には食品しか存在せず、その食品に機能性表示をするかしないかで「保健機能食品」というカテゴリーが分類されることになる。
 そして厄介なのが、保健機能食品以外の「健康食品」である。

 DSHEAの下では、機能性表示(構造/機能表示)をしようがしまいが、上記定義に該当するものは全て「ダイエタリーサプリメント」として規制され、安全性や品質管理、健康被害情報の報告義務など、横断的な義務が課せられる。
 一方、日本では保健機能食品(それも3種類)と、それ以外の食品では規制される事項が異なり、各制度に特有の義務表示がある。その一方で、保健機能食品とそれ以外の食品との共通ルールも多く存在し、安全性や品質管理等の、本来、分けて管理する方が望ましい事項が共通ルールのままであったりする(新規食品やGMP準拠など)。

法令化は「応急処置」止まり?

 機能性表示食品制度の改正により、これまで推奨だった事項が義務化されるなど好ましい点も多々あるが、本質的な問題は含んだままである。
 今回の改正は「機能性表示食品の内のサプリメント形状の加工食品」に対する応急処置という位置付けである(非常に重要な応急処置であるが)。

 今一度、冒頭の閣議決定文を読み返していただきたい。
 「米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にしつつ、安全性の確保も含めた運用が可能な仕組み」とある。「ダイエタリーサプリメント制度」ではなく、「ダイエタリーサプリメントの表示制度」と書かれているところが、機能性表示食品制度の限界となって立ちはだかっている。
 類似点はあるものの、機能性表示食品制度と米国DSHEAとは似て非なるもの、と言えるであろう。

<筆者プロフィール>
麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。
アピ㈱、サニーヘルス㈱を経て2004年1月、㈱グローバルニュートリショングループ設立、現在に至る。国内企業の新規事業の立ち上げ、新商品開発、マーケティング戦略立案などのコンサルティングや海外市場進出の支援、海外企業の日本市場参入の支援を行う。現在まで、国内外合わせて800以上のプロジェクトを実施。
経 歴:1986年 麻布大学 環境保健学部卒業、1986年 アピ株式会社入社、1997年 法政大学大学院 社会科学研究科経営学専攻修士課程修了(MBA)、1998年 サニーヘルス株式会社入社、2004年 (株)グローバルニュートリショングループ設立後、現在に至る。
著 書:「健康食品ビジネス大全」(パブラボ社、2011年10月)、「健康食品ビジネス大事典」(パブラボ社、2015年8月)、共著「ヒットを育てる!食品の機能性マーケティング」(日経BP社、2017年4月10日)
活 動:平成26年度「栄養表示義務化及び食品の新たな機能性表示創設に伴う消費者教育の在り方に関する検討事業」 ワーキンググループ委員(消費者庁委託事業)、平成28年度「第6次産業化促進技術対策事業」検討委員会委員長(農林水産省委補助事業)、平成29年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、平成30年度「食産業における機能性農産物活用促進事業」検討委員会委員長(同上)、2018年 機能性表示食品届出指導員養成講座 講師、2019年~21年 機能性表示食品普及推進協議会 会長、一般社団法人ウェルネス総合研究所 理事、一般社団法人通販エキスパート協会 認定スペシャリスト、機能性表示食品届出アドバイザー養成講座 認定講師

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