免疫機能表示のパラミロン 健康食品市場にどう広げるか、ミカレア・丸井社長に聞く
健常者の免疫機能の維持を訴求する第4の機能性関与成分の届出が先ごろ公開された。KOBELCO(神戸製鋼)グループの神鋼環境ソリューションが発見した微細藻類、ユーグレナグラシリスEOD-1株に由来するパラミロン。食物繊維の一種、β-グルカンである。届出のハードルが高いとされる免疫機能表示を事業にどう生かすのか。同社でユーグレナ事業を担当する藻類事業推進室長で、100%子会社としてサプリメントの販売を手がける㈱ミカレアの丸井純平社長(=写真)に取材した。(取材日:2025年2月20日)
──「免疫細胞(単球、ナイーブT細胞)の働きを助け、健康な中高年の方の免疫機能の維持に役立つ機能があります」という機能性表示をミカレアで届け出て、1月29日に公開されました。ミカレアは最終製品を販売するだけでなく、神鋼環境ソリューションと連携しながらの原材料供給窓口にもなっています。事業者の反応はいかがですか?
丸井 驚いた、ビックリした、という声が一番多いと思います。メカニズムのところ、働きかける免疫細胞がpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)以外であったところが驚かれる理由です。他にも、機能性関与成分が乳酸菌でも酢酸菌でもない、つまり菌ではないところが新しいという声も多いです。これまでとは雰囲気が変わった気がします。
ミカレアのお客様(一般消費者)にもご案内を出したのですが、「商品リニューアルはいつになるのか」などといったお問い合わせをいくつかいただいています。定期購入をいったん休まれているお客様から「また始めたい」という声も届きました。
──1つの機能性関与成分で、疲労感軽減と免疫機能維持を同時に訴求できる。今のところそれが可能な成分は他にありません。強みになりそうですね。
丸井 強みにしたいと思っています。私たちが行った消費者インタビューでは、疲労と免疫のつながりを体感的に認知している方が多かったですし、実際、疲労の度合いが大きいと風邪などに罹患しやすくなるとする文献もあります。より多くの裏付けが必要ですが、そういったことを上手くお伝えしながら、まずは1回お試しいただくという流れを作ることができれば。
──今後の販売計画について。
丸井 まず、ミカレアで現在販売中の『ミカレアのパラミロン』(機能性表示食品)をリニューアル発売します。具体的なスケジュールは未定ですが、今夏頃の発売に向けて準備を進めているところです。リニューアル後は、消費者庁へ届け出ているとおり、トリプルヘルスクレームを行います。従来の一時的な精神的な疲労感と身体的な疲労感の軽減に加え、健康な中高年の方の免疫機能の維持に役立つ旨の3つ。パラミロンの1日当たり摂取量は現行品と同じ350mgです。
原料供給に関しても準備も進めています。現状、免疫機能に関するヘルスクレームの科学的根拠は最終製品の臨床試験です。PRISMA声明2020に準拠した形式のSR(研究レビュー)を用意し、まずはミカレアで届け出る計画です。それが完了次第、免疫に関するSRとともにパラミロンを供給していきます。私たちのマンパワーで可能な限りの届出サポートを行っていきたいと考えています。それが可能になる時期を明言するのは難しいですが、早くとも今秋以降になると思います。疲労感軽減に関するSRについても、PRISMA2020準拠に刷新する準備を進めているところです。
──1つの企業が消費者向けの自社商品販売と、事業者向けの原材料供給の両方を行う場合、原材料供給の範囲に制限を設けるかどうかが悩みどころになる場合もあると思います。どう考えていますか?
丸井 今のところ、大きな制約、制限は設けない考えです。現状、パラミロンの消費者認知度は高いわけではありません。ですから、私たちのパラミロンをさまざまな食品に配合していただくことで、多くの消費者の目に触れたり、摂取してもらったりできる環境を作っていくのが大事だと考えています。私たちとしても積極的に供給していきますので、積極的に採用していただければ。ミカレアの商品はサプリメントですが、そこに関しても、多少の工夫をお願いする可能性はありますが、特段の制約は設けないつもりです。
──神鋼環境ソリューションが屋内培養で生産するユーグレナ(金のユーグレナ)は、パラミロンの含有量が多いことのほかに、さまざまな食品への加工適正に優れるという特徴があります。実際、機能性表示食品として、お饅頭やコールドプレスジュースなどが届け出られています。一般食品のほうにより広げていきたいという考えはありますか?
丸井 そうですね、そこは多少意識しています。私たちの〝金色〟のユーグレナは風味や色味に影響を与えることなく既存の食品に配合できますし、耐熱性が高く、低温にも強い。酸に対しても安定していますから、酸性飲料に配合することもできます。そうした素材としての特長を存分に生かすことをできるのは、サプリよりも一般食品になろうかと思います。
──ミカレアの販売チャネルは通販です。機能性表示が免疫機能にも広がるのを機に、販路を広げる考えは?
丸井 まだ一部ですが、店頭への卸販売を進めています。現行の『ミカレアのパラミロン』には「15日分」があるのですが、これは店頭限定商品です。今後は、原料供給との両面になっていくと思いますが、ドラッグストアをはじめとする店頭にも私たちのパラミロンを広げていきたいと考えています。疲労感と免疫に対する機能を1つの成分で訴求できる強みは、店頭でも生きてくるのではないかと思っています。
──当初からpDC以外の作用メカニズムで免疫機能表示を実現させようとしていました。神鋼環境ソリューションがKOBELCOグループとして初の食品事業を開始したのは2017年ですから、健康食品の世界ではまだまだ新興企業です。今後、免疫機能性表示食品市場で先行している大手食品・飲料メーカーと競争していくことになりますが、自信はありますか?
丸井 今回の届出に向けた研究などは、「パラミロン研究会」に加わって下さっている先生がたをはじめとする多くの方々にアドバイスをいただきながら進めました。食品事業を始めてまだ8年程度の私たちが、大手と肩を並べられるのは、多くの方々のご協力のおかげです。皆、今回の届出をすごく喜んでくれています。
今後、パラミロンと同じような作用メカニズムを持つ機能性関与成分が他にも必ず出てくるだろうと思っていますし、先行している成分に対してどう差別化していくかも検討しなければなりません。その1つがトリプルヘルスクレームになると考えていますが、それでどこまで勝負できるかは、実際にやってみないと分かりません。
ただ、免疫機能が、私たちのパラミロンの最後のヘルスクレームになるとは考えていません。私たちは、自律神経をはじめ免疫や内分泌などによるホメオスタシス(生体恒常性)を整える機能がパラミロンにはあると見て、研究開発を進めてきました。実際、まだ動物試験にとどまりますが、筋肉の萎縮を抑制する可能性などが示唆されています。研究開発を引き続き進め、お客様のニーズも聞きながら、パラミロンの機能を探求していくつもりです。
──ありがとうございました。
【聞き手・文:石川太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:神戸市中央区磯上通2-2-21号
URL:https://www.micarea.com/
事業内容:食品、健康食品等の販売
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