微生物関連原材料、管理厳格化求める 消費者庁、3.11通知「GMP指針」年内改正へ
主に錠剤やカプセル剤などサプリメント形状の健康食品を対象とする、食品衛生法に紐づけられた通知が改正されることになった。
最終製品製造工場受け入れ時にパターン分析等
小林製薬「紅麹サプリ」をめぐる健康被害問題を受け、菌体や藻類など微生物の培養や発酵工程を経て生産される原材料(微生物等原材料)に関する新指針が通知に追加される。新指針の適用対象となる微生物等原材料を使用する最終製品の製造事業者に対し、同原材料の工場受け入れ時に、味や匂いの異常や色の違いなどがないか確かめる官能試験のほか、意図しない物質や不純物などが含まれないか客観的に確認できるクロマトグラフィー等を使ったパターン分析試験の実施を求める。
「想定していない成分の生成や想定していない量の増減が起こる可能性」(消費者庁)もある微生物等原材料の同等性や同質性を確認することで、最終製品の安全性を確保する。
通知を所管する消費者庁は、年内にも通知改正する考え。改正前に、改正案に対する意見を幅広く聴くため、パブリックコメントを受け付ける。法律や法令ではない通知に法的な拘束力はないが、法律の食品衛生法には、事業者は自らの責任で安全性の確保に努めなければならない責務規定が設けられている(第3条)。通知改正で事業者の負担が高まりそうだ。
ただ、複数の死者が報告されている今回の健康被害問題の再発防止に取り組む必要もある。問題を受けて政府の関係閣僚会合が取りまとめた対応方針には、「健康被害の原因究明を進めつつ、本件及び同一事案の発生を防止するため、科学的な必要性がある場合において、食品衛生法上の規格基準の策定や衛生管理措置の徹底を検討する」との方針が盛り込まれていた。それを踏まえ、消費者庁は通知改正を決めた。
改正する通知は、主にサプリメント形状の健康食品の安全性や品質の確保について、事業者の自主的な取り組みを促す通称「3.11通知」。そのうち別添2「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」(以下、GMP指針)を改正する。3.11通知は、健康被害問題が明るみになる直前の今年3月11日に発出。国立医薬食品衛生研究所に設置された研究班の検討結果を全面的に反映するかたちで改正される。
消費者庁が今年4月に新設した食品衛生基準審議会の「新開発食品調査部会」(部会長=曽根博仁・新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野教授)はきのう18日午前、GMP通知改正案を審議し、案のとおり改正することを了承した。食品衛生基準審議会は、食品衛生基準行政が厚生労働省から移管されたのを受けて設置された審議会。3.11通知を所管する同庁食品衛生基準審査課は近く、パブコメの募集を開始する見通し。
機能性表示食品GMP告示は現状維持
GMP指針の内容は、今年9月1日に一部施行の改正・機能性表示食品制度で新たに要件化された(2年間の経過措置あり)、錠剤・カプセル剤等食品(サプリメント)のGMP管理の基準を規定する法令(内閣府令の食品表示基準に基づく内閣府告示=GMP告示)に余すところなく反映されている。そのため、18日の部会会合では、委員の穐山博・星薬科大学薬学部教授が、指針の改正に伴い告示も見直すことになるのか消費者庁に問うた。食品衛生基準審査課担当官は、今回改正するのはあくまでも指針だとし、当面のところ告示を見直す考えはないとする見解を示した。
ただ、GMP指針は、機能性表示食品を対象から除外しているわけではない。同指針の対象食品は「天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品」であり、保健機能食品を含む「いわゆる健康食品」全般のうち主にサプリメント形状の食品を対象にしている。
また、対象となる事業者(営業者)は、「天然抽出物等を原材料として使用して錠剤、カプセル剤等食品を製造又は加工する営業者」で、主たる対象は最終製品事業者。原材料の製造・加工事業者に対しては、今のところ、「本ガイドライン(GMP指針)に従った製造工程管理を行うことが望ましい」とするにとどめている。
食品衛生基準審査課によれば、GMP指針の改正点は、同指針の第6「管理組織の構築及び作業管理の実施(GMPソフト)」の2「製品標準等」の項目に、「微生物等関連原材料の同等性/同質性の規格及び試験検査の方法」を追記しつつ、「微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針」を新たに作成する。同指針に盛り込むのは、適用範囲や対象事業者のほか、「実施する内容」として、「原材料を受け入れる際の規格の設定」や「設定した規格の確認方法」などを盛り込む。
また、微生物等関連原材料に該当するかどうかの判断を助けるフローチャート(上の図)のほか、指針の細部に関する考え方を示すQ&Aも設ける。同指針及びフローチャートには、指針の適用範囲外とする微生物等関連原材料を使った最終製品の考え方も示す。例えば、明らか食品のヨーグルトなどはGMP指針の対象外であるため適用範囲外になるという。
【石川太郎】
(文中の画像:最終製品の製造者向け微生物等関連原材料指針適用判定フローチャート。18日新開発食品調査部会の公表資料から)
関連資料:3.11通知「GMP指針」改正関連(消費者庁のウェブサイトへ)
:「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」の改正について(案)
:錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)(別添2)の改正(案)について
:微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針(案)
:微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針に関するQ&A(案)について
:最終製品の製造者向け微生物等関連原材料指針適用判定フローチャート