消費者庁・保健表示室長が語る 機能性表示食品制度改正めぐり業界団体セミナーで講演
(一社)健康食品産業協議会(橋本正史会長)は23日午後、9月1日に一部施行された機能性表示食品制度の改正をテーマにしたセミナーを、東京ビッグサイト(東京都江東区)で同日開幕したサプリメント原材料等の展示会「食品開発展2024」内で開いた。制度を所管する消費者庁食品表示課保健表示室長を講演者として招いて開いたもので、業界関係者が聴講。セミナー会場に用意された200席は瞬く間に埋まった。
約30分間講演した、消費者庁食品表示課保健表示室の今川正紀室長は、制度改正の概要をポイントを絞って解説しつつ今後の予定を伝えた。また、健康食品産業協議会の3分科会長を交えたパネルディスカッションにも参加し、各分科会長の質問に答えた。9月1日に即日実施された健康被害疑い情報の報告義務化に関し、詳細については「申し上げられない」としたものの、医師の診断を伴う健康被害疑い情報が厚生労働省に寄せられ始めていることを明かし、「(届出者など企業は)真摯に対応してくれていると感じる」と所見を述べた。
今川室長の話によると、制度改正に絡み、今年度末(来年3月末)までに公布される新たな法令(内閣府告示)の案の中身は、年末までに大筋でまとまる見通し。「パブリックコメントを実施する。すると(来年)1月中旬までには(案を)ある程度固めておかないとならない」ためだ。
この告示は、サプリメント(天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品)の機能性表示食品の届出要件となる製造・加工基準を規定した通称「GMP告示」に続く新たな法令になる。これについて消費者庁は、同庁課長通知の届出ガイドライン(現届出マニュアル)に示してきた届出に必要な事項の多くを告示化して法令にするほか、健康食品の安全性や品質の確保に関わる通称「3.11通知」のうち、原材料の安全性自主点検や製品設計の指針を示した「別添1」の内容をほぼそのまま告示化し、法令に基づく届出要件とすることを検討している。
SR届出、「報告されています」の表示は絶対なのか
今川室長は講演とパネルディスカッションで、機能性表示食品とは機能性関与成分に着目した制度だ、と繰り返し述べた。そこが特定保健用食品制度とは異なる、という。この考え方が、今回の制度改正で実施(2年間の経過措置)する容器包装上の義務表示事項の見直しに反映された。
機能性表示食品の届出全体の9割超を占める、研究レビュー(SR)を表示する機能性の科学的根拠とする届出について、制度見直しのために改正された、食品表示法に基づく内閣府令の食品表示基準では、「機能性関与成分の名称及び当該機能性関与成分が有する機能性を科学的根拠に基づく表示する。その際、当該機能性について報告されている旨を的確に示す文言を表示する」と規定。その容器包装上の表示の「例」として、消費者庁は、機能性関与成分名に加えて「(~の機能のあることが)報告されています」の文言を盛り込んだ、下の図を提示している。
業界内からは、表示可能面積が限られた製品も少なくない中で、「『報告されています』の文言をそのまま必ず表示しなければならないのか」と戸惑いの声も上がる。
こうした容器包装表示の改正について、今川室長はパネルディスカッションでこう話した。
「お示しした基本例が一番良いと思っている。もちろん基本例だから工夫の余地はある。その中で常に念頭に置かないといけないのは、(機能性表示食品に対する)消費者の信頼性を高めること、消費者が正しく理解し選択していただくこと。消費者が間違った判断を行う恐れのあるような表示は望ましくない。消費者の信頼に足る表示を行っていただく、その中でどこまで(表示を)工夫できるのかということ。しかしそうはいっても(届出者は)悩むと思う。今後、さらにいくつかの(表示)例をお示ししたい」
【石川太郎】
(冒頭の写真:セミナーの様子。約200人の業界関係者が聴講した。東京ビッグサイト西4ホール/文中の図:消費者庁公表資料「機能性表示食品制度の今後について」から抜粋)