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食薬区分リストの最新動向~社福協セミナー(上)

 (一財) 医療経済研究・社会保険福祉協会は7月9日、「『機能性表示』の新たな可能性への挑戦 ~食薬区分リスト再考を含めて~」をテーマにしたオンラインセミナーを開催。健康食品会員を中心に180人以上が聴講した。

 京都大学大学院薬学研究科の伊藤美千穂准教授の演題は「食薬区分の最近の動向~食薬区分リスト作成の基本的な考え方~」。
 超高齢化社会となったわが国では、生活習慣病の患者を医療だけで支え続けるのは難しいことから、健康を自己管理するセルフメディケーションの意識の向上が求められている。厚生労働省の生活衛生・食品安全の食薬区分(無承認無認可医薬品)検討会の委員でもある伊藤氏は冒頭、「それだけに健康食品が果たす役割は大きい」とし、「スピード感をもって審議していくためにも、健康食品業界に食薬区分リスト作成の基本的な考え方を改めて伝えたい」と登壇の理由を語った。

<事業者は通知別添の確認を>

 その上で、検討会では昭和46年(1971年)発出の、いわゆる「46(ヨンロク)通知」をベースに、各委員が経験と知見をもとに真剣に評議している点を強調した。規制緩和が進むなか、検討会の開催頻度が増え、改正のスピードも急速に上がってきたと伝えた。
 医薬品と判断する4要件として「もっぱら医薬品として使用実態のあるもの」、「毒劇薬指定成分に相当する成分を含むもの」、「麻薬向精神薬および覚醒剤様作用があるもの」、「処方箋医薬品に相当する成分を含むものであって、保健衛生上の観点から医薬品として規制する必要性があるもの」を挙げ、この基準については「今も全然ブレることはない」と述べた。通知には別添として、判断材料に用いた文献などの記載がある。事業者は「自分が気になっている素材がどういうふうに書かれているのか、確認する必要がある」と要求した。

<食薬区分は医薬品か医薬品でないかの区分>

 「重要なポイントは(食薬区分は)食品と医薬品の区分ではなく、医薬品か非医薬品か、医薬品か医薬品ではないかという区別。しかし非医薬品であれば食品として使用していいというわけではなく、医薬品の成分本質が含まれていれば医薬品となる」との判断基準を示した。
 「もっぱら医薬品として使用実態があるものや、毒物劇薬指定の成分などに該当すれば医薬品」となることにも注意を求めた。「厚労省では、経口投与や皮下投与で何mgを超えると毒劇薬指定となるため、トータルの暴露量も踏まえて数値をスルーすることなく気にしてほしい」と説明した。
 また、「毒劇薬というのは国が線引きをしているところ」とし、事業者から提出された資料に対して46通知に述べられていることに当てはまるか当てはまらないかを時間をかけて議論していると話した。さらに、経口投与・皮下投与・静脈内投与の場合の毒劇薬の基準にハマるかハマらないかを判断するに当たり、動物実験の結果を提出することが大切だと述べた。その理由として、「経験豊富な委員が動物実験の結果を見て、そのたくさんの知識と経験に照らし合わせながら、今出てきている素材が動物実験したときに、経口投与でこのような結果が出ているというのを見たときに、これはもっぱら医薬品にしなければならないのか、これは別に心配がないものだろかということをそれぞれが判断する」と議論の状況を具体的に示した。そして、動物実験は国際基準をクリアしていなければならないと付け加えた。

<6月2日申請書類に関する大改正が>

 できるだけスムーズに審査を進めるためには、申請書類が整っている必要があるとも指摘した。2020年6月2日、申請書類にかかわる大改正が行われたと紹介、その通知の中身について説明した。そのなかで、食経験や毒性データなどは判断の重要なポイントとなるとした上で、「自身が気になる素材は、徹底的に調べて、自身で納得して、これは健康食品素材として使える、健康食品素材にしたいと思って出してほしい。我々は真剣にやっているので、事業者にも真剣に取り組んでほしい」と訴えた。

<ルールを踏み外すと急転直下医薬品に>

 プエラリア・ミリフィカなどの指定成分(含有食品)についても言及した。
 伊藤氏は「薬の方ではなく、食品の方からも管理するということで(食品衛生法の改正等は)非常に斬新な改正だった」と評価した。効果があるからこそ指定成分になってしまうという見方もあるが、あまり効果がありすぎると医薬品になる。そうなると健康食品の範疇ではなくなってしまう。「この辺の微妙なところを上手に折衷案を作って落とし込んでいるのが指定成分」とし、誰か1人がルールを踏み外すことで「急転直下、食品業界にとってはあまりよろしくないところに転がっていく可能性もある」と業界にクギを刺した。

 漢方薬の抽出エキスを例に引き、抽出エキスを顆粒剤にして使う場合、抽出した液体のものと顆粒のものは同等であることが求められている。さらに1カ月前に製造したエキスと、今日製造したエキスも同等であることが求められていると説明。
 食品にもこのような医薬品製造におけるCMC(Chemistry,Manufacturing and Control) の考え方が必要なのではないかと問題提起した。
 最後に同氏は、「食薬区分というのはそれの入り口のところではあると思うが、食薬区分の区分だけをどうこう言うのではなく、その成分について、皆さん自身が取り扱っているものについて、スペシャリストになっていただき、最後まで見届けていただくという、そういう観念で取り扱ってほしい」と締めくくった。

(つづく)

【堂上 昌幸】

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