食薬区分とそのまわり、識者らが講演 日本食品化学学会シンポ、「新規成分制度」導入提案も
食品に関連する化学物質を研究対象にする日本食品化学学会(合田幸広理事長=国立医薬品食品衛生研究所名誉所長)は17日、「いわゆる食薬区分とそのまわり」をテーマにしたシンポジウムを㈱島津製作所のオープンイノベーション拠点「Shimadzu Tokyo Innovation Plaza」(神奈川県川崎市)内で開催した。
食薬区分を所管する厚生労働省監視指導・麻薬対策課の担当官をはじめ、食薬区分を審議するワーキンググループを構成する専門家のほか、健康食品の開発に携わる事業者ら5人が講演。それぞれ異なる立場から、運用開始から50年超が経過した食薬区分とその周辺を語った。健康食品業界関係者などおよそ90人が参加した。
この日登壇したのは、国立医薬品食品衛生研究所から合田名誉所長と小川久美子・安全性生物試験研究センター病理部長。厚労省監麻課からは、治田義太郎・危害管理情報専門官。そして健康食品業界サイドからは、ハウスウェルネスフーズ㈱開発研究所製品開発部の石田亮介氏と、健康食品GMP認証などを手がける(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)の池田秀子理事長の5人。国立医薬品食品衛生研究所の伊藤美千穂・生薬部長が全体をオーガナイズした。合田氏、小川氏、伊藤氏は食薬区分ワーキンググループの構成員を務めている。
JIHFS池田氏、部位別規制から成分含量規制への移行を提案
厚労省の治田氏は、「食薬区分に関する実務・現状」をテーマに講演し、食薬区分リストの見直し作業を進めていることを伝えた。見直しの理由は、品目の重複や基原植物の混乱などが指摘されているためだと言い、今年6月に開いたワーキンググループでは、非医リストのうち植物由来の見直しに関する基本的な考え方を議論し整理した。
また、無承認無許可医薬品として規制する「医薬品的な用法用量」の解釈について、「食前」、「食間」や「お休み前に1~2粒」などといった、「通常の食品の摂取時期等とは考えられない表現」を用いている場合は原則、医薬品的用法用量表示とみなすと説明した。
健康食品をめぐる諸外国の制度に精通するJIHFSの池田氏は、「健康食品の成分と食薬区分─新規成分の安全性確保を中心に─」をテーマに講演し、欧米をはじめASEAN(東南アジア諸国連合)などでは制度化している「新規成分/新規食品」を日本も導入する必要があると訴えた。
食薬区分の考え方を改める必要も指摘。「茎」は非医である一方で「葉」は専ら医薬であるなどとする現行の「部位別規制」を見直し、「成分含量規制」に移行する必要を主張した。規制の視点を部位から活性成分などの含量に移すことで、専ら医薬リストに収載されている成分本質からも健康食品に使用できるものを見出せるかもしれない。また、食薬区分の見直しにともない非医から専ら医に区分変更される事態を防げる可能性もあるとした。
製造・加工法や規格などの違いに目を向ける
「非医リストに含まれる成分(原材料)であれば、製造や加工の方法をはじめ規格などが問われない」。池田氏は食薬区分が抱える課題をそのように指摘した。健康食品に使われる原材料(成分)の安全性は、製造・加工方法、規格、そして安全性に関する科学的根拠を一体的に評価する必要があるなかで、非医リストに含まれていれば、製造などの方法が異なる場合でも、一律に「非医」として取り扱われることになる。安全性について保証が充分でないとしても、そのまま市場に流通される現状を疑問視した。
欧米諸国やASEANでは、健康食品に用いられる原材料(成分)について、新規ダイエタリー成分(New Dietary Ingredient)やノーベルフード(Novel Food)などといった名称で、新規成分の安全性を確保するための制度を導入し規制している。池田氏は、健康食品に使用する新規成分の安全性に関する判断を、医薬品として区分すべきか否か判断する食薬区分に委ねている現状では、安全性にリスクがあるかもしれない新規成分を流通前に把握することができないと指摘。米国、EU、ASEANにおける新規成分/新規食品に関する法制度を紹介しつつ、日本も制度を導入する必要があると訴えた。
【石川太郎】
(冒頭の写真:食薬区分の考え方と背景をテーマに講演する合田氏。質疑にも積極的に応じた)