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食の安全は向上したのか? めざす会、第8回情報交換会開催

 食品安全基本法が制定されて来年で20年。食の安全は向上したのか?「食の信頼向上をめざす会」(唐木英明代表)はきのう12日、第8回ZOOM情報交換会をオンラインで開催した。年末放談会と銘打って、「食品安全の歴史から学ぶこと」をテーマに実施した。
 元内閣府食品安全委員会委員長の小泉直子氏と、元生活協同組合コープこうべ理事の伊藤潤子氏を講師に迎え、戦後の食品安全対策の歩みについて振り返った。日本経済新聞社シニア・エディターの中野栄子氏が司会を務めた。
 

 小泉氏は、公衆衛生学の観点から、集団における疾病予防の大切さを説き、食の安全が大きな役割を担っているとした。「メチルアルコール中毒」、「森永ヒ素ミルク事件」、「雪印集団食中毒事件」、「水俣病」、「高病原性鳥インフルエンザ」、「BSE」など、戦後の食品事件を振り返り、食のリスク分析のあり方に言及した。
 「食の安全にゼロリスクはない」とする小泉氏は、「自然界には毒性のあるものがある。人の健康に及ぼすリスクはゼロにはならない」と主張。むしろ強毒性は自然界のものにある。食の安全のためには「健康に影響を及ぼさないレベルの維持が大切」と述べた。

 伊藤氏は、生協運動によって消費者の組織化に携わった経験を元に、食の安全について話した。
 「食品安全基本法の制定後、食品安全行政は確立したと思っていた」とする同氏。ところが、消費者庁が公表した「食品表示に関する消費者意向調査」(令和2年度)の報告書を見て愕然としたという。

 アンケートでは、購入時の商品選択の際に、添加物を使用していない旨の表示がある食品を購入している人に対して、「無添加表示」がある食品を購入する理由を尋ねているのに対し、66%の消費者が「安全と感じるため」と回答。添加物を危険と思っている人が6割以上に上ることについて同氏は、「40~50年前と何も変わっていない」と衝撃を語った。同氏は、食品安全基本法が制定された2003年までの歴史について改めて振り返り、「食品安全委員会の設立によって安全を担保する制度ができたことを伝えられなかった」、「これによって消費者が自分の安心を生み出すことができるという大切なことを伝える努力をしてこなかった」、「食品安全基本法、食品安全委員会をサポートして盛り上げていく努力をしてこなかった」などと、これまでの活動の失敗を分析した。

 司会の中野氏は、「一般の人たちはリスクに対する大きさの評価がほとんどできておらず、感情的に受けれて消費者運動などの拡大につながっている」とし、メディアはそれをそのまま誤った記事として書いてしまい、いたずらに食に対する不安をあおっていると分析。「メディアの責任も大きい」と反省の弁を述べた。

 食の安全に対して科学は軽視されていないか?
 めざす会の唐木代表は、「リスク評価は科学の問題。リスク管理は民意や経済、国際関係などあらゆる要素を加味して総合的に判断しなければならない。そこにどれだけ科学が入り込めるのか。これは政策決定の問題、政治の問題」としながらも、「食品安全基本法にはリスク評価を科学的根拠に基づいて行うと書いてあるので、昔よりは科学が重視されているのではないか」と結んだ。


【田代 宏】
 

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