風評被害はどこまで広がるのか(4) 巻き込まれた無関係の機能性食品素材、誤解の広がり食い止めたい
小林製薬㈱(大阪市中央区)が販売していた機能性表示食品との因果関係が疑われる健康被害の広がりは、健康食品業界全体に影響を及ぼしている。健康被害を生じさせたわけではない無関係の機能性食品素材まで巻き込まれた。納豆菌由来のナットウキナーゼだ。
先月22日夕、小林製薬が自主回収を発表した『紅麹コレステヘルプ』をはじめとする3つの機能性表示食品の中に、ナットウキナーゼも機能性関与成分として配合するとともに、その成分名を商品名に盛り込んだものがあった。
商品パッケージ正面に「ナットウキナーゼ」と大きく記載されたその製品が、紅麹コレステヘルプなどと並ぶかたちで、テレビに繰り返し映し出された。これが消費者にいらぬ誤解と懸念を生じさせた。健康食品業界関係者の中にも、当初、問題が生じたのはナットウキナーゼだと勘違いしてしまった人がいる。
日本ナットウキナーゼ協会、全国紙に全面広告
「ナットウキナーゼは、これからも安心してお摂りいただけます」、「ナットウキナーゼは、紅麹を含みません」──今月9日、そう訴える全面広告が朝日新聞朝刊(全国版)に掲載された。
広告を出稿したのは、ナットウキナーゼをはじめとする納豆由来の機能性食品素材の普及啓発活動を行う「日本ナットウキナーゼ協会」(大阪市中央区)。ナットウキナーゼに関わる国内外の企業が会員に名を連ねる。
「ナットウキナーゼには紅麹が含まれるのか、などといった(通常はない)お問い合わせが急激に増えました。これは早めに対応したほうが良いだろうと」
同協会の広報担当者は取材に、広告の理由をそう語る。「紅麹を貶めるようなこともしたくない。だからとにかく、ナットウキナーゼと紅麹は異なるものなのですよ、ということを伝えるために新聞広告を実施しました」
小林製薬の公表から3週間以上が経過した現在、消費者からの問い合わせは「減ってきています」(同)。ただ、「問い合わせをしていただければ説明できますが、問い合わせをせず、誤解したままの方もいらっしゃるかもしれない」。近く、同じ内容でもう一度、新聞広告を行う予定だ。
落ち込む売上げ、消費者からの信頼どう取り戻す?
機能性表示食品のサプリメントの使用によって腎疾患の健康被害が広がっている──3月22日夕以降、新聞・テレビ・ウェブを通じて瞬く間に消費者へ伝播していったそうした情報は、機能性表示食品とサプリメントの消費を下振れさせる圧力につながった。
通信販売では定期購入を解約する消費者が相次いでいる。ドラッグストアをはじめとする店頭販売の売り上げも落ちている。
7.7%マイナスの8.7億円──この数字は、小林製薬が問題を公表した翌週、3月25日から始まる1週間における、ドラッグストアを中心とする店頭販売の機能性表示食品サプリメントの販売金額の前年同時期比と、金額だ。
調査したのは、市場調査・マーケティングリサーチ会社のインテージ㈱(東京都千代田区)。全国約6,000店舗の小売店販売データ(インテージSRI+データ)を集計したもので、前の週から1億円、減少していた。
11週連続で前年を上回っていた中でのマイナス。また、前の週の8.7%増から一気に減少へ転じた。同社のアナリストは、「安全性に対する懸念が要因と考えられます」とする。
同じ期間における機能性表示食品「以外」のサプリメントの販売金額はどうだったのか。インテージの調べによると、前週比で1.4%増加の30.5億円だった。1%台とはいえ、増加は12週連続。ただ、前週比の伸び率は、7.5ポイントの落ち込みを見せている。
機能性表示食品とサプリメントに対する消費者からの信頼をどう取り戻すのか。健康食品業界全体に重い課題が突きつけられている。
(了)
【ウェルネスデイリーニュース編集部】
(文中の写真:日本ナットウキナーゼ協会が4月9日付朝日新聞朝刊で行った啓発広告)
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