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迷走するサプリメントのアンチ・ドーピング認証(前)

<特定の認証制度のPRサイト?>

 (一社)日本スポーツ栄養協会(SNDJ)は6月20日、運営する公式ウェブサイト「スポーツ栄養Web」内に「アンチ・ドーピング情報」の専用ページを開設した。中立的な立場から、ドーピング違反のリスクが低いサプリメントの情報をアスリートに提供するという趣旨でスタートしたものの、特定の認証制度を宣伝するような内容となっている。

 「アンチ・ドーピング情報」の開設時には、ページ内で次のような説明が記載されていた。

 「2019年4月3日、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)より『スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン』が公表されました。ガイドラインでは、『情報を公開するサイトの運営主体は中立的な立場の組織であること』とし、『生産施設審査の結果に関する情報』と『製品分析の結果に関する情報』を定期的に更新される対応が望ましいと明記されています。そして、当サイトでは生産施設審査と製品分析の両方の条件を満たしているアンチ・ドーピング認証プログラムで認証を受けた商品を集約し、当サイトで情報提供していくことになりました」。

 ここに出てくるガイドラインは、JADAの有識者会議が策定したもの。サプリメントを使用するアスリートのドーピング違反のリスクを低減させるための取り組みを示している。ガイドラインでは、情報公開の目的を「ドーピング違反のリスクを低減するために有益な情報を提供すること」と規定。中立的な組織による情報公開サイトの運営が望ましいと定めている。

 前述の説明文を読む限り、「アンチ・ドーピング情報」のページは、ガイドラインが求める「中立的な立場の組織」としてSNDJが開設したと理解できる。

<認証マークだけで商品を選ぶのは危険>

 アスリートのドーピング違反のリスクを最小限に抑えるためには、少なくとも、(1)禁止物質について分析した製造ロットの番号が公開されている当該ロットの商品を選ぶこと、(2)グローバルスタンダードのcGMP認証工場で製造された商品を選ぶこと(日本の健康食品GMP認証では不十分)――の2点が重要。アンチ・ドーピングの認証マークが付いていても、その商品の製造ロットが分析の対象でないケースも珍しくないため、認証マークだけで商品を選択するのは危険と言える。

 分析対象の製造ロット番号が公開されている商品は、公開されていない商品よりもリスクが小さいことは明白。前述したとおり、認証制度のなかには、分析していない製造ロットの商品にも認証マークを付与できるものもある。このため、トップアスリートが商品を選択する際には、各認証制度のホームページで確認することが必要となる。

 また、米国食品医薬品局(FDA)が直接監査に当たるcGMPは、日本の健康食品GMPと比べて数段厳しいという評価が定着している。トップアスリートに提供するサプリメントについては、アンチ・ドーピング認証の前段階の問題として、高水準の製造・品質管理が重要となる。リスクを少しでも低減させるために、事業者は最大限の努力を払わなければならず、この2つの要件は最低限求められる。

 そうした要件を満たすサプリメントのアンチ・ドーピング認証で、世界的に知られる代表格として、NSF International による「NSF Certified for Sport」がある。また、LGC社の「インフォームドスポーツ」なども、これに次ぐハイレベルの認証と言われている。

 ところが、「アンチ・ドーピング情報」のページでは、開設した当初、次のような説明が行われていた。

 「多くのプログラムがあるなか、日本のガイドラインに準拠しており、精度・頻度の高い製品分析を行っているのは下表の上位3つ(インフォームドチョイス、Certified Drug Free、Certified for Sport)程度のようです。その他は生産施設審査を行っていなかったり、分析機関がISO17025認証を受けていないところで分析を行っているので、注意が必要です」。

 文中に出てくる「下表」では、トップに「インフォームドチョイス」、次に「Certified Drug Free」、3番目に「Certified for Sport」が並んでいた。

 トップアスリートのドーピング違反のリスク低減という観点に立てば、本来なら「Certified for Sport」がトップに来るのが順当とみられる。これに次いで、「インフォームドスポーツ」などが位置づけられると考えられる。

 LGC社の認証には「インフォームドスポーツ」と「インフォームドチョイス」があるが、この2つは要件が異なる。製品認証の場合、「インフォームドスポーツ」は製造バッチ(ロット)ごとに試験を受けなければならない。一方、「インフォームドチョイス」は、認証製品を対象とした毎月1回のブラインド調査にとどめている。

 そうであるのになぜ、「アンチ・ドーピング情報」では「インフォームドチョイス」を優先的に推奨しているのかという疑問が湧く。なぜ、LGC社の「インフォームドスポーツ」を紹介しないのだろうか。

 さらに、「Certified for Sport」の認証機関として紹介されているのは、世界的に著名なNSF Internationalではなく、NSKである。NSF Internationalを避ける理由は何かという疑問も出てきそうだ。

(つづく)

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