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認知機能、新・植物成分が全国区へ 
キノコ由来エルゴチオネイン 店頭で存在感じわり

 植物由来の定番・認知機能対応素材と言えばイチョウ葉。とも言い切れなくなる時がいずれやってくるかも知れない。機能性表示食品の届出件数は現在5件にも満たないが、ドラッグストア(DgS)の店頭を通じて全国区になりつつある素材が出てきた。「たもぎ茸」という北海道産の食用キノコを由来原料とするエルゴチオネイン。同成分を配合した機能性表示食品のサプリメント『記憶の番人』の存在感がじわりと高まっている。

薬系卸大手が注目 取扱い店舗拡大中

 『記憶の番人』の発売は昨年4月。同年1月に機能性表示食品として消費者庁に届け出されていた。届出表示(ヘルスクレーム)は以下の通り。

 「抗酸化作用をもつエルゴチオネインは継続的な摂取により、中高年の方の記憶力(人や物の名前などを記憶し、後から呼び起こす能力)及び注意力(物事に対して注意を集中して持続させる能力)を維持する機能があります」。

 主な販路はDgS。一方、通常価格は4,980円(30日分)と、DgSで販売されるサプリにしては高価格帯だ。しかし現在までに取り扱い店舗数は全国でおよそ2,500まで拡大。発売元では、「発売から間もないが、リピーターも少なくない。そう遠くないうちに5,000店舗まで広がる可能性がある」と話す。

 発売元(届出者)は、㈱エル・エスコーポレーション(東京都中央区、鈴木真社長。以下、LS)。サプリメント・健康食品の原材料開発・販売や最終商品のOEMを主に手掛けており、本来、自社最終商品にかける比重は小さい。だが、独自に開発したエルゴチオネイン含有タモギタケ抽出物を機能性表示食品市場に広げる目的で、まずは同社で届け出た同商品と機能性関与成分のエルゴチオネインに、一般用医薬品卸販売大手のアルフレッサ ヘルスケア㈱が注目。DgSを通じて全国に広がりはじめた背景には、同社の専売商品となったことがある。

水溶性成分 作用機序にも違い

 エルゴチオネインは、抗酸化作用を持つ水溶性アミノ酸誘導体の一種。脳機能を巡っては、動物試験などで「神経新生作用、神経障害に対する保護機能や記憶障害抑制作用などが報告」(エルゴチオネインの届出資料)されてきた経緯がある。また、ヒトの体内にはエルゴチオネインを取り込むトランスポーター(輸送体)が存在する。「それを介して脳の内部にも取り込まれる。水溶性の成分でありながら血液脳幹門を通過できるのが大きな特長だ。そこがイチョウ葉などと異なる」とLSの素材開発責任者は話す。

 植物では、特にキノコなど菌類に多く含まれる。LSでは、北海道で一般的な食用キノコ「たもぎ茸」を原料にするかたちで、エルゴチオネインの含有量などを規格化したタモギタケ抽出物『アミノチオネイン』(登録商標)を開発。金沢大学の加藤将夫教授(薬学系分子薬物治療学研究室)らとの共同研究などを通じ、同素材を認知機能領域の機能性表示食品市場に展開できるようにした。

通販でも広がるか 医薬品企業が採用

 まずは自ら届け出た『記憶の番人』の売上が好調に推移しているが、本来の目的はBtoB(対事業者)を通じた素材としての拡販だ。たもぎ茸やエルゴチオネインの消費者認知度向上を目的にした同商品の普及活動と同時進行で、外部企業に対して機能性表示食品の届出サポートを進めている。

 今後、LS以外の企業がエルゴチオネインを配合した機能性表示食品の販売を本格化させることになる。まずは3月、医薬品など製造販売のカイゲンファーマ㈱が同社初の機能性表示食品として『メモエル』を通信販売などで発売することが決まっている。顆粒タイプのサプリメント。水溶性であるエルゴチオネインの成分特性を生かしたとみられ、みそ汁などの料理に混ぜて摂取するなど、日常の食生活に同成分を取り入れることも提案する。

 同社に続く販売会社も、近いうちに現われそうだ。LSの素材開発責任者はこう話す。「複数社が関心を示してくれている。届出に向けて具体的な作業を進めている先もある。当社としても研究開発を止めていない。エルゴチオネインの機能性は脳だけにとどまらないからだ。将来的に大化けする可能性があると思っている」。

(石川太郎)

(冒頭の画像:DgSで販売されているエルゴチオネインを配合した機能性表示食品)

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