総合栄養食品など特別用途食品制度を見直しへ~消費者庁
<糖尿病・腎臓病用組み合わせ食品の追加も>
特別用途食品の許可基準などを見直すため、消費者庁は9日、「特別用途食品の許可等に関する委員会」を開き、学識経験者の構成委員から意見を聞いた。各委員の意見と、今後実施するパブリック・コメントの結果を踏まえ、告示・通知を改正する計画だ。
会合では、(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)が提出した要望について議論した。要望は、(1)総合栄養食品の許可基準の見直し、(2)病者用食事セットの許可区分の追加、(3)個別評価型病者用食品の許可基準の見直し――の3点。
総合栄養食品は病気や高齢により、通常の食事から十分に栄養が取れない人に向けた食事代替品。現行制度は経口摂取を前提とするが、経管摂取のニーズが大きく、市場の実態と制度がミスマッチを生じているという。そうした事情を踏まえて消費者庁は、「経管摂取に関する内容」の記載を認める案を提示。これに加えて、分析値の許容幅が許可基準を超える場合に「〇〇増量調整」「〇〇減量調整」と表示することや、栄養組成の許可基準について分析誤差分の範囲を広げる案などを示した。
案に対し、出席した委員は概ね賛成に回った。ただし、分析誤差分の拡大で「脂溶性ビタミンにまで広げる必要があるかどうか疑問」といった意見が出るなど、一部の案については再度整理する方向となった。
病者用食事セットについて消費者庁は、許可基準型病者用食品に「糖尿病用組み合わせ食品」と「腎臓病用組み合わせ食品」の区分を追加することを提案。1食で完結または主食を追加することや、医療従事者の指導の下で使用することを前提とする。継続して利用することから、複数の献立を1製品として申請できる考えも示した。さらに、糖尿病や腎臓病の食事療法を医師から指示され、摂食えん下機能が低下している人も対象に加える方針だ。
これらの案に対し、各委員から反対意見は出なかった。
【解説】
JHNFAが要望した総合栄養食品の許可基準の見直しは、消費者庁が具体的な案を提示し、各委員が概ね賛成したことから、ほぼ要望どおりの方向で改正される見通しだ。総合栄養食品は高齢者の低栄養問題などに対応するため、2009年に“鳴り物入り”で制度に加わった。しかし、これまでに許可されたのはわずか5品目にすぎない。一方、市場には経管摂取用の製品が約170品目あり、JHNFAによると、許可基準を改正すれば、そのうちの60品目以上が特別用途食品として申請される見通しという。
病者用組み合わせ食品はもともと特別用途食品として位置づけられていたが、制度のスリム化を目指した2009年の改正により、対象から外された経緯がある。その後の社会情勢を見ると、在宅の患者や高齢者が増加し、在宅での食事療法のニーズが高まっている。今回の議論では、全ての委員が再導入を支持。これを受けて、消費者庁では許可区分に追加する方向で詳細を詰めるとみられる。
JHNFAはこれらのほかに、個別評価型病者用食品に関する許可基準の見直しも要望した。許可対象に、「特定の疾病を持つ病者に特に必要とされる機能性成分などを含む食品」を追加することを求めている。
これは、医薬品分野で取り扱うべきという考え方もあり、今回の見直しの対象とならなかった。健康食品業界では以前から、機能性を標ぼうするために、病者を被験者とした研究データの使用を認めるように求めてきた。健康食品には利用できない病者データの使い道として、特別用途食品に目を付けたという見方もできる。
しかし、健康食品でさえ、医薬品と誤認する消費者が多数存在するのが現状。消費者庁では、機能性表示食品での軽症者データ利用の可能性を検討中だが、安易に拡大すると、食品と医薬品の境界線をぼやけさせるという事態を招く。その結果、医薬品の服用を中止する消費者が出てくるのは必至と言える。
さらに、特別用途食品の場合は、疾病名を標ぼうして効果を訴求できるため、消費者の混乱はさらに深刻となる。“よちよち歩き”の機能性表示食品制度での軽症者データの利用拡大も時期尚早と考えられるが、特別用途食品制度への「機能性成分を含む食品」の追加は、さらに大きなリスクをはらんでいる。