大正製薬㈱（東京都豊島区、上原茂社長）はこのほど、細胞老化が肌のバリア機能に重要な結合型セラミドを減少させることを発見したと発表した。同研究成果は2023年12月5日～7日に開催された第1回日本化粧品技術者会学術大会で発表した。

　臓器や組織は細胞からつくられるが、その細胞自身も老化する（細胞老化）ことが分かってきた。細胞老化は、年を重ねることやさまざまなストレスが原因となり、細胞が増殖を止めてしまう現象。細胞老化を起こした細胞（老化細胞）は、増殖を止めた後も組織に留まり、さまざまな生理活性物質を分泌することで（SASP：細胞老化関連分泌形質）、周囲の炎症や正常な細胞の老化を引き起こす。
　また年を重ねるにつれて、肌にも老化細胞が蓄積する。その場所は、表皮細胞が生まれる基底層と、肌を支える成分をつくる真皮。同社は、肌に蓄積する老化細胞が、肌にどのような影響を与えるか明らかにすることを目的に、研究知見の少なかった表皮の細胞老化に着目し、老化表皮モデルの作製とその解析を進めた。

　長期にわたる継代培養により細胞老化を誘導し、SASP因子を盛んに放出する老化細胞を作製した。一定量の老化細胞を含ませて、表皮の層状構造を再構築させた3次元培養表皮「老化表皮モデル」を作製し、老化細胞の影響を検討。
　はじめに、老化表皮モデルを用いて表皮の最も大切な役割である肌のバリア機能を評価した。その結果、老化表皮モデルに含まれる老化細胞の割合に応じて、経表皮水分蒸散量（TEWL）が上昇し、バリア機能が低下することが分かった。
　次に、この原因を探るために、バリア機能に重要なセラミドの解析を行った。その結果、一般的な遊離型セラミド（NS）と比較して、結合型セラミド（P-OS）が著しく減少することが明らかとなったという。結合型セラミドは、角層細胞間脂質と角層細胞を結びつけるバリア機能に必須のセラミドで、これまでも、外部刺激によるバリア機能の低下に結合型セラミドが関与することを発表してきたが、細胞老化に着目した同研究においても、結合型セラミドがバリア機能に重要な役割を果たすことが示されたとしている。

　同社では、同社の先端美容研究が着目する結合型セラミドへのアプローチは、加齢による肌の乾燥に対して高い効果を示すことが期待される。今後も、年齢に負けない健やかで美しい肌を実現するための研究を推進し、今後のスキンケア商品の開発に応用するとしている。