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第4回契約書面電子化検討会(前) これまでの議論を整理、「承諾取得の方法」について各委員が主張

 消費者庁は6月30日、契約書面の電磁的方法による承諾のあり方を議論する第4回「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(契約書面電子化検討会)をオンラインで開催した。
 出席した委員は、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員・池本誠司委員、(公社)日本訪問販売協会事務局長・小田井正樹委員、慶應義塾大学大学院法務研究科教授・鹿野菜穂子委員、㈱川口設計代表取締役・川口洋委員、主婦連合会会長・河村真紀子委員、弁護士・高芝利仁委員、(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)東京相談室副室長・福長恵子委員、(一社)日本経済団体連合会ソーシャル・コミュニケーション本部長・正木義久委員、(公社)全国消費生活相談員協会(全消相協)理事長・増田悦子委員ら9人。

 これまでの議論を1.「真意に基づく明示的な意思表明方法」、2.「電磁的方法の具体的な内容」、3.「第三者の関与」および4.「その他」に整理し、今回は主に1.と2.について議論した。会合は2時間半に及ぶ長丁場となったが、前半はテーマ1.について各委員が立場を主張。後半は2.について意見を表明し、テーマ1.の論点も含めて議論した。

 1.「真意に基づく明示的な意思表明方法」は、(1)消費者の真意性、(2)事業者の禁止行為、(3)承諾取得の方法――に分類。(1)については、①紙での交付が原則であること、②電磁的方法により提供される記録が契約内容を示した重要なものであること、③申込書面又は契約書面の場合、電磁的方法により提供された記録が到達した時点がクーリング・オフの期間の起算点となること、④必要な機器を有し、電磁的方法により提供された記録を自ら適切に管理できる消費者に限って電磁的方法による提供が受けられること――と定めた。
 (2)事業者の禁止行為については、①勧誘すること、②不実のことを告げ、又は誤認・威迫・困惑させること、③財産的な利益を提供すること、④紙での交付を選択することに対して不利益を与えること、⑤消費者の承諾行為を代行すること、⑥消費者の適合性の確認結果に影響を与えること、及び適合性があると認め、られない消費者に電磁的方法により提供すること、⑦電磁的方法により提供される記録の受領を代行すること、⑧その他、電磁的方法に誘導する行為――とした。

 事務局が準備した資料1(これまでの議論の整理)では、ほぼ議論が終わっている部分を黒字で、積み残し部分を赤字に分けて整理。前半は「承諾取得の方法」のあり方について各委員が意見を述べた。

 事務局は、(3)「承諾取得の方法」を議論の余地を残した赤字とし、次のように整理した。
(3)承諾取得の方法
 事業者は、適合性を有する消費者の真意による電磁的方法による提供への承諾の事実が、証拠として残る方法(リスクレベルの高い取引形態にあっては、消費者の手元に控えが書面で残る方法)により承諾を取得すべきではないか。
なお、電磁的方法による提供への承諾取得の方法について、取引類型により区別する場合、以下の点を明確にする必要があるのではないか。
① 取引類型により区別することの趣旨(資料P5)
② 電磁的方法による承諾取得が認められる範囲の明確化(資料P6)
③ 書面による承諾取得の方法(資料P6)

 これに対する各委員の主な意見は、次のとおり

不意打ち・利益誘因・対面勧誘性のある役務は書面交付が必要

池本委員「(1)消費者の真意性、(2)事業者の禁止行為については、基本的に賛成。ただし、電子化を積極的に勧めるような説明方法は禁止すべき。(3)について、適合性を有する消費者に対して真意に基づく承諾をどう確保するかというところで言うと、不意打ち性、利益誘因性、対面勧誘性のあるものについては真意に基づく承諾が行われない恐れがあるので、書面による説明、書面による承諾、承諾書の控えの交付ということが必要ではないか。
また、オンライン完結型の特定継続的役務提供について電磁的方法による承諾を認めるという意見に対し、役務の提供までオンラインである必要性・合理性があるかという論点がある。役務提供をオンラインで受けることを目的としてオンラインで契約締結を進めることは、消費者としてオンラインでのやりとりを主体的に選択していると考えられるが、契約締結手続だけで良いとすると、ネット上の誇大広告で誘引されてオンラインでの契約締結に至り、後日契約内容や履行内容についてトラブルになるケースまで電子データで良いことになる。こうしたトラブルを防ぐには、契約締結直後に契約内容を書面で認識しやすくする必要性があるのではないか。やはりトラブルを招く恐れがあるのではないかというようなところを危惧する。
 隔地者間の契約締結において契約書面義務の実行は、複写の書面を郵送し、署名したものを返送し、控えを残す、という手順により一般に行われており、電子化の承諾手順も同様に実行できるのではないか。なお、言葉による承諾と承諾書の交付に加えて、電子メールのやりとりを手順に組み入れる方法により適合性を実際に確認することは合理性があると思われる」

特商法には国民経済の健全な発展というもう1つの役割がある

小田井委員「承諾取得の方法について、私共は紙ではなく、電磁的方法が良いのではないかと申しあげている。理由として、消費者の立場から考えたときに、自らデジタル機器を操作して、電子的方法で承諾をするということが、その当該消費者のデジタルリテラシーの確認として、1つのハードルとして機能するのではないかというふうに考えるからだ。
 紙に何か書くということは、デジタルスキルなんかに関係なくできるということも申し上げてきた。今回(事務局に)ご用意いただいた資料ではそういう意見があるということがちょっと読み取りにくいと思ったので、この部分は明確に記載をしていただきたい。

 私どもは電磁的方法で承諾を取るということと、デジタルに不慣れな人、紙の書面の方が良いと思ってる人に対して、デジタル機器を代わりに操作したり、無理に電子交付を勧めるという行為は禁止するということをセットで考えているので、電子的方法で承諾を取るということもぜひ前向きに検討いただきたい。
 また、取引類型ごとに区別するということについては、望ましくないと考えている。取引類型により区別することの趣旨や電磁的方法による取得が認められる範囲の明確化、それから書面による承諾取得の方法と(これまでの議論の整理に)まとめられており、5ページには取引類型ごとの表も作ってある。この表でハイリスクだとされているのは、悪質業者を前提としての整理だろうと思うが、この表だけで見ると、いかにも特定継続的役務提供(以下、特役)だけリスクレベルが低いようにも見える。ただ、特役には特約特有の、他の取引類型にはないリスクというものもあるのではないか。あえて言えば、身体の美化であるとか、知識技術の向上などを達成できる見込みで、一定期間の役務提供契約を締結するということで、中途解約制度はあるが、関連商品の部分で解約トラブルになるようなこともある。こういった項目もこちらの表に入れると、他の取引類型とのリスクの差というのがどの程度あるものなのかなと思う。
 オンライン完結型の役務だけを電磁的方法で承諾を認めるという意見もあるが、特役のリスクというのが、このオンラインで完結するものとそうでないものと差があるものなのかという疑問がある。
いずれにしても、特定商取引法には取引を公正にする消費者トラブルを防ぐということの他に、適正かつ円滑な商品等の流通および役務の提供をもって、国民経済の健全な発展に寄与するという目的もあるので、トラブル防止という点では書面が紙とか電子であることに関係なく、厳しい行為規制や罰則があるわけなので、交付する書面が電子媒体になるという部分においてはそこまで規制を強くしなくてもいいのではないか」

適合性の確認ができなければ「承諾」は無効

鹿野委員「前回欠席したので、全体の方向性についても改めて意見を述べようかとも思ったが、すでに多くのところは意見が一致しているということ。大前提としては、特商法・預託法で書面が従来果たしてきた消費者保護機能を踏まえ、これと同等の消費者保護機能を(電磁的方法で)発揮させるという考え方から、慎重な要件立てを考えていくという方向で一致しているものと理解したので、特にそれ以上申し上ることはない。2ページ(消費者の真意性)、3ページ(事業者の禁止行為)について基本的には賛成。

 承諾取得の方法について、“承諾の事実が証拠として残る方法が望ましい”ということと、その具体的な方法として、“リスクレベル等に応じて違いを設けるべきである”ということなどの基本的な方向については賛成。

 取引類型により区別することの趣旨について、不意打ち性、あるいは利益誘引性がある類型については、承諾は紙でやるということを基本にすべき。たとえ適合性とかを満たした人においても、特商法が対象としている取引自体が従来からトラブルの多い類型であったということもあるし、この承諾についても、少なくとも従来の意識としては紙によるということになると、そのことである程度慎重さが確保されるという人間行動としての側面があるので、不意打ち性、利益誘引性がある類型については、電磁的方法によることの承諾は書面によるとするべきと考える。

 リスクレベルという観点からは言葉の是非は分からないが、“密室性”というようなことが対面性とは別のキーワードになるのではないかと感じた。訪問販売や訪問購入などについては、営業所以外の場所で勧誘が行われ、不祥事がなされるという面がある。常に不適切であるというつもりは毛頭ないが、密室で不適切な説明が行われやすいという特徴があり、その不適切な説明や勧誘自体が禁止されているといっても、消費者が事後的にその不適切な説明などがあったということを立証することは難しいという実態がある。そこで、電磁的方法によることについての承諾取得の方法についても、そのような類型については書面によることとしてはどうかと考える。

 適合性の確認、チェックは承諾前に行うべき。事業者が消費者に事前の説明をし、これによって消費者が電磁的な方法を検討したいという旨の意向を持ったときに、適合性のチェックをする。
のかと。適合性チェックを経た人だけが承諾ができるので、適合性の確認ができなかった場合には承諾ができない。事実上、形の上で承諾というものがなされるとしても、それは電磁的提供方法による、現在検討している特商法・預託法における承諾としては無効であるとこういうことになるのではないかと考える」

消費者には電子メールが使えるくらいのリテラシーは求めたい

川口委員「オンラインで役務が完結するものはオンラインで承諾ができるというのは、当たり前じゃないかなと思っている。オンラインがどの程度か、オフラインかどうかというのがあるが、とりあえずオンラインでやるという前提のものは、電磁的に承諾ができる流れを検討してほしい。オンラインでいつもやってるのに、気が付けば紙が必要だと言われると、それは何か変だなという感じもする。
類型の整理で、訪問販売で来ているのに紙が残らずに電子だけとなると、皆さんが心配されているようなトラブルも起きるのかなと思う。事業者には電磁的な承諾と紙と、両方用意しておいてもらうことが必要な流れなのだろうと思う。

 契約を行う契約者、消費者には電子メールぐらいは使えるようなリテラシーを求めていいのではないか。何らかの契約の内容を受け取らなければならない。やりとりしなければならないというところで、管理できるリテラシーのレベルとしては、電子メールといったところはあるのかなと思う。
 若い人になればなるほどSNSで受け取りたいというのもあると思うが、あれもこれも対応するとなると事業者側が結構大変。電子メール限定ぐらいで始めるのが一番いいのではないか。
 ただし、テクノロジーの技術的は3年5年で変わっていくものなので、例えば、これが運用開始後3年に1回は手段を見直すといい。

 事業者が一定期間電子メールを保存するべきかどうかというのは、事業者は普通電子ファイルを保存しているはず。契約後何年かというのを決めるとしたら、サービスによって結構変わるのかなと思う。医療や金融などのインパクトの大きいものは年数が長くてもいいと思う。契約終了後の保存期間に対する義務化などの議論はあってもいい」

(つづく)
【田代 宏】

関連記事:第3回電子化書面検討会(前)
     第3回電子化書面検討会(中)
     第3回電子化書面検討会(後)

会議資料:消費者庁ホームページより

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