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第2回疾病リスク低減表示トクホ検討会(中)~表示「かもしれない」は見直し必要

 佐々木座長は、「許可文言の柔軟性」をテーマに討議するように、論点を引き戻した。
 「これは消費者の方にとっても大切な問題だと考えている」とし、消費者はエビデンスの全体を見るわけではなく、エビデンスが凝縮された表示を文言として見る。消費者の見たエビデンスと実際のエビデンスが、何らかのバイアスがかかることで違ってしまうと、消費者は困ると説明した。

 杉本委員は、森田委員と諸岡委員から示された「全体の見直しが必要」との問題提起を受けるかたちで、「今のトクホ制度から考えると、許可文言のところは、アメリカなどでは曖昧な書き方になっているため、しっかりした表現になっていないと消費者に説明できないのではないか」とし、海外の許可文言を参考にすることについて否定的な見方を示した。
 そこで佐々木座長は、「(許可文言の範囲は)日本のシステムに乗せると、欧米で使われているよりも狭いと考える方がいいのか?」と質問した。
 杉本委員は、法律的な解釈は行政に確認してほしいとしながらも、「アメリカでは塩分を減らしても表示していいが、日本では違う」とし、一定の柔軟性が認められている海外と日本では表示内容に相違があると説明した。それを受けて竹内委員が「柔軟性という言葉は耳障りのいい言葉として響くが、果たしてそうか?基準が明確でなく曖昧」と指摘した。

 「その理由を詳しく教えてください」と佐々木座長が説明を求めたところ、竹内委員はおおよそ次のように述べた。
 「佐々木座長から“消費者”という言葉が出たが、企業にとって柔軟性を認めると、競争原理が働く。そうすると、良い製品であることをアピールしたくなる。そうなると、柔軟性を超えて、表現のテクニックに走るのではないかと考える。消費者は、決まりきった内容だと、いつもと同じ表示だと思い、読み飛ばす可能性がある。どれが良く、どう違うのか、(消費者が)正しく理解できるのかどうか、疑問。製品ごとに異なる商品価値が正しければいいが、そうではなく、いろいろな表示があるということを懸念する。いろいろな表現について、誰がチェックして許可するか、という問題が出る。現在、(消費者委員会の)新開発食品調査部会で(チェックを)行っているが、“柔軟性のない文言”という拠り所があるので、それを踏まえて規制がないのかという観点から見ているが、柔軟性を認めると拠り所を見直す必要が出てくる。EUのようなガイドラインを作るかどうかも踏まえて、どういうふうに運営するかも考える必要がある」。

 佐々木座長は、「(柔軟性が)正しく働けばよいが、そうでない方に働くと真実がうまく伝わらず、誤認のリスクが出る可能性があるということを認識する必要がある」と補足した。
 千葉委員は2人の発言を受けて、「現状のトクホは、消費者委員会で審査されているが、市場に出回っている商品のキャッチコピーは、(許可文言を)逸脱しているものもある。疾病リスクに関すると、一般のトクホよりも踏み込んだ表示となるし、文言に柔軟性を持つと、一般のトクホよりも大きな誤認を与えるだろう」とし、より慎重な対応が必要だと述べた。

 森田委員は、竹内・千葉委員と同じ考えとした上で、表示を超えたキャッチがある点を指摘。「疾病リスク低減表示なので間違って伝わったらだめ」ときっぱり。また、1回目の会合で、葉酸を関与成分としたトクホがいまだにゼロである理由の1つに、表示が「この食品は葉酸を豊富に含みます。(略)リスクを低減するかもしれません」という表現がネックになっているのではないかとの見方が示されたが、市場に出回っている「いわゆる健康食品」としての葉酸サプリは「消費者に過大な期待を与えている」と指摘。「食事摂取基準には葉酸のエビデンスが記載されているので、こういうことを踏まえて消費者に伝わらなければならない」と、誇大な表示や誤認表示に対して警鐘を鳴らした。

 寺本委員は、「柔軟性を持たせると言っても、どのくらいの柔軟性を持たせるか決まっていないなかで良し悪しを言うことは適切ではない」とし、「柔軟性に期待は持っていないが、ほかのトクホは企業側が決めて申請することになっているが、疾病リスク低減表示は企業側が決めたものではないので、もっと企業側の意見などを取り入れることができるのであれば、柔軟性を深く求める必要はないのではないか」と述べた。
 
 これを受けて佐々木座長は、企業側にどのような要望があるのか、要望を取りまとめた上で議論し、エビデンスにふさわしい表示を用いるにあたり、真実との誤差なく、消費者が分かりやすい、偏りのない表示を考える必要性があるとした。
 これには竹内委員も賛同し、「『~かもしれない』という表現がどうしてできたのか疑問。食品だから効能効果を言えないのは承知しているが、何を言いたのか分からない。柔軟性とは関係ないが、この表示については見直した方がいいのではないか」と表示の見直しを求めた。
 
 続いて、佐々木座長の「これまでの表示ができたいきさつなど、過去の検証作業は大切」とする意見を受けて、磯委員がその経緯に言及した。
 磯委員は、「『~かもしれない』がなぜそうなったのか。普通だと、『可能性があります』ぐらい(が適当)だろうが、トクホのなかで慎重にした方がいいという国の担当者からの発言で強くならないようにするということで、そうなったとうかがっている」と経緯を明かした。「今回、疾病リスク低減となると、エビデンスが少し強くなると思うので、『かもしれない』は表示にならないから見直しが必要」と、竹内委員の意見に同意した。
 この後、議論は論点3.「表示の内容等の基準が定められていない疾病リスク低減表示の申請」に移った。

(つづく)
【田代 宏】

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