社福協、健康食品フォーラム有終の美 しかし残されたままの健康食品めぐる課題
(一財)医療経済研究・社会保険福祉協会(社福協)が主催する「健康食品フォーラム」が15日、20年の歴史に幕を下ろした。最終回となったこの日は、「日本が目指す食品の機能性への取り組み~明日への課題と挑戦~」をテーマに、全社協・灘尾ホール(東京都千代田区)とオンラインのハイブリッドで開催。厚生労働省、消費者庁の幹部をはじめ食品機能性研究の第一人者が講師を務め、会場とオンライン合わせて210人の健康食品業界関係者らが聴講した。継続を望む声も聞かれる。協会幹部は今後について「白紙」だと話す。
20年経っても取れぬ「いわゆる」
この日の最終回を含め開催回数58を数える健康食品フォーラムは2004年にスタート。厚労省主催の「『健康食品』に係る制度のあり方に関する検討会」が、広告を含めた表示の適正化や安全性確保の充実化などを提言したタイミングと重なる。フォーラムの立ち上げに関わった社福協の清水浩一常務理事は冒頭挨拶の中で、立ち上げた理由について、「企業のかたがたに行政官や有識者の考えを聴く場を提供することだった。当時、そういった場はほとんどなかった」と語った。20年が経過し、そうした状況が大きく変化したことも、フォーラムを終える理由に挙げる。
ただ、20年経っても変わっていないことがある。健康食品には法律上の定義が未だなく、「いわゆる」を付けられたままだ。錠剤やカプセル剤など通常の食品とは全く異なる医薬品に近い形状を持つサプリメントも、いわゆる健康食品に括られる。
「日本は機能性表示のある、なしで食品の区分を決めている。そのため健康食品の中に、サプリメントから生鮮食品まで全てが含まれることになる。海外はそうではない。リスクを管理するべき食品とはどういうものなのかという観点から、過剰摂取などのリスクがあるものをサプリメントとして区分している。法律や定義もきちんとなされていて、それに基づいて全てのサプリメントが(GMPに基づく製造・品質管理が義務付けられているなど)一定の条件を有する、ということになっている」
フォーラムのファシリテーターを幾度も務め、この日もパネリストとしてパネルディスカッションに参加した(一社)日本健康食品協会(JIHFS)の池田秀子理事長はこう語り、共に登壇した2人の行政官に強く要望した。「(健康食品関連事業者の)国際競争力という観点からも、(サプリメントの)区分や定義をもう一度ご検討いただきたい」
行政官は語る「健康食品はまさにこれから」
この訴えに行政官はどう答えたか。「健康食品の定義(をどうするか)は課題。カプセルや錠剤など(のサプリメント)について制度が必要かどうかは、まさにこれから議論が必要と思う。GMPの義務化、健康被害情報の(届出)義務化をマストとする制度が今後必要なのかどうか。皆さま方のご意見をいただきながら検討していきたい」と、前向きな見解を示したのは消費者庁食品表示企画課の今川正紀保健表示室長。今川氏はこの日、「保健機能食品の現状と今後」と題した講演を行い、冒頭、「今後」について次のように語った。
「(健康食品は)まさにこれから。健康寿命延伸のために、健康食品の制度をいかに充実させていくかが1つのポイントになると思う。その際のポイントは、消費者に正しく理解していただくこと。そのために、今の制度を健全に発展させていく。そのためには、行政が今の制度の課題を常に意識しながら、次の段階でどういった政策を打つ必要があるのか考えていく必要がある。その時に欠かせないのは、官民一体となって運営していくこと。多くの企業や学識経験者のかたがと一緒になって、より良い制度にしていくためにどうしていけばいいのか考えていきたい」
健康食品の安全性に関わる2大通知(平成14年通知、同17年通知)の刷新的改正や、健康食品をめぐる行政にも少なからず変化を与えるとみられる食品衛生基準行政の消費者庁移管を目前にして幕を閉じた健康食品フォーラム。
ラストを飾った講師は、今川氏の他に、4月から消費者庁に移る厚労省食品基準審査課の佐野喜彦新開発食品保健対策室長と、1984年にスタートした文科省(当時)の食品機能研究プロジェクトに関わるとともに、特定保健用食品の表示許可審査に長年携わってきた清水誠・東京大学名誉教授の3人。パネルディスカッションには、同3氏と池田氏のほか、フォーラムとの関わりが深い早稲田大学の矢澤一良ヘルスフード科学部門 部門長)が登壇。座長は、厚労省で食品安全部長などを歴任した梅田勝・東京工科大学名誉教授が務めた。
【石川太郎】
(冒頭の写真:健康食品フォーラム最終回、会場の様子)
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