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直罰規定を導入か【景表法検討会】消費者庁、方向性案に「刑事罰の活用」盛り込む

 消費者庁主催の「景品表示法検討会」(中川丈久座長=神戸大学大学院法学研究科教授)は9日、8回目の会合をオンラインで開き、消費者庁が取りまとめた今後の検討の方向性(案)について意見交換を行い、確約手続き制度の導入、返金措置の促進、違反行為に対する抑止力の強化、適格消費者団体との連携──などを法制化していく方向性で意見がおおむね一致した。

 案では、「刑事罰の活用」として、悪質事案に対する直罰規定の導入を検討していく方向性も打ち出されている。検討会は今月末にも会合を開いて議論を継続。年内に報告書を取りまとめる予定だ。

詐欺的な悪質事案、厳罰化の考え示す

 景品表示法の改正も視野に、消費者庁が立ち上げた同検討会は、今年3月に初会合を開き、第4回(6月)で検討の方向性を整理。第5回(9月)から第7回(10月)までは関係団体や学識経験者からヒアリングを続け、この日の第8回までに同庁表示対策課が、ヒアリングで出された意見と今後の検討の方向性(案)を取りまとめた。

 同案について座長はこの日、「景品表示法に関する論点を網羅的に抽出、整理した。(論点の)ほぼ全てについて一定の結論、方向性を出している。中期的な課題として先送りにするのはダークパターン(の検討など一部にとどまる)」と述べ、議論は出尽くしているとの認識を示した。

 景品表示法に刑事罰を導入することについて消費者庁は同案で、「他法令の表示規制における行政措置と罰則規定の関係なども参照しつつ、直罰規定の導入の検討を進めてはどうか」として法制化の方向に検討を促した。今回の検討会で「活発に議論されたわけではない」(表示対策課)ものの、ヒアリングで消費者団体が「違法・不当な広告により大量の消費者を誘引し、行政や適格消費者団体から指摘を受けると事業を終了し、事実上サンクション(社会的制裁)を免れようとする事業者が存在する」と指摘。直罰規定の導入に賛成していた、という。

 現在、医薬品医療機器等法などが誇大広告を刑事罰の対象にしており、同法では2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰則を設けている。こうした他法令の表示規制を参考にしながら景品表示法にも直罰規定を導入し、「悪質」な不当表示を厳しく取り締まる考えとみられる。

 消費者庁は、この日の会合で「悪質な事案」として3事例を示し、「いずれも詐欺に近い悪質な事案だ」と指摘。3事例の中には、健康食品について表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を「まったく有していなかった」という事例が盛り込まれた。

何をもって悪質性が高いと見なすか

 しかし、直罰規定の拙速な導入を戒める声も上がっている。この日の会合で日本経済団体連合会の小畑良晴委員が「そもそも刑事罰を導入する必要のあるほど悪質な事案がどれほど生じているのか」と疑問を示しつつ、「(直罰規定の導入は)中期的な課題と認識していた。それが(案に)いきなり出てきて驚いている。引き続き検討が必要な案件ではないのか」と訴えた。

 小畑委員はまた、「仮に、刑事罰が必要であるのだとしても、刑事罰で対処すべき悪質性の高い事案を十分に絞り込む必要がある」と指摘。「(景品表示法)違反の行為類型は優良誤認と有利誤認の2つに限られる中で、刑事罰をいきなり適用するのは均衡を逸している。刑事罰で対処する必要がないものまで対象になってしまうおそれがある」との懸念を示し、「今後の検討課題にすべきだ」と意見した。

 この意見に対して座長が、消費者庁が示した3つの悪質事案は「刑事処罰に値しないと理解しているのか」と小畑委員に質問。また、全国消費生活相談員協会の増田悦子委員が「(消費者庁が示した)悪質な事案は珍しいものではないし、非常に詐欺的。このような事例には刑事罰をつけるのが有効だ」と意見した。小畑委員に同調する意見は他の委員から上がらず、座長は、「さしあたり、直罰規定の導入はあり得るという方向性でまとめていきたい」と引き取った。

 この検討会に事業者サイドから参加している委員は小畑氏のみ。

【石川太郎】

(冒頭の画像:オンライン開催された第8回検討会の様子。下の画像:刑事罰の活用を巡り消費者庁が参考として提示した「悪質な事案」3事例。第8回検討会配布資料から)

関連資料:第8回検討会配布資料「関係者等ヒアリングにおいて出された御意見及び今後の検討の方向性(案)」
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