機能性表示食品の届出表示（ヘルスクレーム）の科学的根拠が不十分だとして消費者庁が九州の通販企業に景表法違反（優良誤認）で措置命令を行ったことに端を発し、同庁食品表示企画課が、食品表示法に基づき、措置対象商品と同一の機能性関与成分と科学的根拠を届け出ていた88件に対し、科学的根拠に対する疑義を指摘して合理的な回答を求めていた問題で、同庁は27日、届出者からの回答結果の概要を「情報提供」の名目で公表した。

　それによれば、88件のうち73件の届出者が、「科学的根拠がある」などと主張する回答を出したといい、科学的根拠に疑義があるなどと主張する同庁に反論しているもようだ。一方、うち15件の届出者は、届出の取り下げを申し出たという。

消費者庁、取り下げ申し出のない届出を一覧表に

　消費者庁は、取り下げを申し出ていない73件の届出情報を一覧表にしてホームページで公開した。届出者名や届出商品名なども含まれる。現在販売中の商品も多い。

　公開理由について同庁は、「商品の安全性の面で問題があるものではない」としつつ「消費者の自主的かつ合理的な食品の選択に資する」ためと説明。あくまでも消費者への情報提供が目的だとする。だが、「回答内容にはレベル（の差）がある」（食品表示企画課）ものの、同庁が提起した疑義に対して届出者が回答し、科学的根拠があると主張している中での社名や商品名などの公表に波紋が広がる。ある業界関係者は、「社名まで公表されたら行政処分を受けたのとほとんど変わらない」。

　食品表示企画課は取材に、73件への今後の対応について、「食品表示法に基づき適切に対処する」と答えた。各社からの回答内容を確認した上で、疑義が晴れないと判断すれば、同法に基づき届出の撤回を指示、公表するとみられる。また、同庁が20年3月に策定した機能性表示食品の「事後チェック指針」の第3項「届出資料の不備等における景品表示法上の取扱い」に基づき業界団体内に設置された、医学や統計学などの専門家らで構成される「エビデンスレビュー委員会」に科学的根拠としての妥当性評価を委ねる手段を取れるかどかについては、「難しいのではないか」（同）と語った。同課としての今回の対応は、あくまでも食表法に基づくことが理由と考えられる。

モノグルコシルヘスペリジン、取り下げゼロ　科学的根拠を強く主張か

　食品表示企画課が科学的根拠の確認を求めた機能性関与成分とヘルスクレームは、DHA・EPAによる中性脂肪の低下、モノグルコシルヘスペリジンによる血圧の低下、オリーブ由来ヒドロキシチロソールによる血中LDLコレステロールの酸化抑制の3関与成分3機能。措置対象商品と同一の機能性関与成分と科学的根拠を届け出ている88件を確認対象とした。DHA・EPAに関しては、科学的根拠が同一、かつ、1日当たり摂取目安量の総量が500mg以下の届出を対象にしている。

　消費者庁によると、27日までに88件の全てについて回答が寄せられた。そのうち届出取り下げの申し出件数は、DHA・EPAに関して31件中9件、モノグルコシルヘスペリジンでは10件中ゼロ件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは37件中6件、モノグルコシルヘスペリジンとヒドロキシチロソールの組み合わせが4件中ゼロ件の計15件。

　現時点で取り下げる必要を判断した届出者が存在しないモノグルコシルヘスペリジンに関しては、「ダメだという理由が判然としない。科学的根拠として不十分だとする理由をしっかり説明してもらいたい。そうでなければ今後も同じことが繰り返される」として、措置命令を行った同庁表示対策課の判断を疑問視する声が業界の研究開発の現場からも聞かれている。

【石川太郎】

（冒頭の画像：88件の科学的根拠に対する確認結果を公表した消費者庁の報道資料）

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