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男児窒息、カットパンに注意喚起~国セン

「本品は食品衛生法に基づく乳児用食品の規格基準が適応される食品です」、「10カ月頃から」と表示したカットパンを食べた生後10カ月の男児が窒息死した事故を受け、(独)国民生活センター(国セン)は19日、東京事務所(港区高輪)で記者会見を開いた。

 問題となったのは、カネ増製菓㈱(大阪府河内長野市)が製造する『かぼちゃとにんじんのやさいパン』。2020年10月に医師からの通報で乳幼児の死亡が発覚。21年6月には、同じ銘柄の対象年齢表示のないカットパンを食べた生後11カ月の男児がパンをのどに詰まらせる事故が起きた。
 同品は「ミルクパン・カットパン」として一般向けに販売していた商品を乳児向けに開発したもの。一般向け商品と物性は同じだが、乳児向けに表示を変え、長持ちさせるためにパッケージの包材や品質保持剤などを変えて販売していたという。

 日本赤十字社武蔵野赤十字病院特殊歯科・口腔外科部長の道脇幸博医師によれば、同品は「水分量が少なく、水に漬けても崩れにくいだけでなく、乳幼児が丸飲みできるサイズのためリスクが高い商品」と指摘している。
 死亡事故の報告を受けた製造事業者は、注意表示の変更と共に、丸ごと飲み込めないように商品サイズの変更や商品レシピ、栄養成分表示の変更などを行うとしている。

 国センでは、同品の物性や挙動などに関するテストを実施した。ベビー用品店の1歳以上向けの棚に陳列されていたパン形状の2銘柄(参考品)との比較も行った。その結果「同品は参考品に比べて口の中でだ液が染み込んでも崩壊しづらい」、「水分量は食パンの半分程度」、「参考品に比べて早く水分を吸収する」、「同品を切断するには参考品よりも大きな力が必要」などの特徴が示されたという。

 もう1つの大きな問題として、同品は「食品衛生法に基づく乳児用食品の規格基準が適応される食品です」という乳児用規格適用食品の表示を行っていたが、これは「食品、添加物等の規格基準(放射性物質(放射性セシウム)の基準値:50Bq/㎏)を適用した食品であることを示す」ための表示で、同品と窒息リスクの関係を示したものではないという点。
 これについて国センが消費者にアンケート調査を行ったところ、多くの消費者のあいだで「乳児用規格適用食品」の表示は、食品の固さや大きさ、アレルギー物質、栄養面などに係る規格基準を示しているとの誤認が認められたという。
 国センはこれらの調査を経て、消費者への注意喚起はもとより、消費者庁や製造業者に対して消費者に対する継続的な啓発、自己の未然防止の重要性を訴えている。

 記者会見では、「なぜ販売中止などの措置を取らないのか」、「(発表資料で)なぜ製造業者の名前をマスキングしているのか」などの質問が集中した。
 国セン商品テスト部企画管理課長の鈴木弘彦氏は、「試験の結果、危険性を示す基準が明確でなかった」、「こんにゃくゼリー事件のときのような多発性がない」、「15年間の販売歴がある商品で、新規性がない」などをその理由に挙げた。

【田代 宏】

(冒頭の写真:国民生活センター提供)

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