特定保健用食品の復権へ向けた新たな挑戦~下田智久会長に聞く(後)
<疾病リスク低減型トクホに着目>
――トクホの許可件数が減るなか、どういうモチベーションで協議会の立ち上げに踏み切ったのでしょうか?
下田 私たちは第三者認証という形で制度構築を規制改革会議に提案しましたが、結果的に機能性表示食品制度は、企業の自己責任という仕組みでスタートし、私どもの考えとは違った制度になりました。
トクホと新たな機能性表示食品の棲み分けが少し曖昧ではないか、機能性をうたうことはできるが、トクホとの表示の差をきちんとしておかないと混乱するのではないかと、その頃から心配していました。何はともあれ、機能性表示食品制度がスタートしたのですが、申請が簡単なせいもあって非常に伸びました。それと相まって、トクホの申請件数が減り、元気がなくなっていくということがありました。
協会内のトクホ部会は、トクホ生産企業が集まってとても熱心にやっている会なのですが、そこもだんだん元気がなくなってきて、私自身としては健康食品市場にとって、消費者のためにも業界のためにも、世界的に優れたトクホ制度が元気がなくなり、全てが機能性表示食品になってしまうのは困ったものだと思いました。トクホをどうやって活性化するかが協会のなかでも大きな議論になりました。いくつか出た案で、1つは疾病リスク低減表示型トクホでして、これを広げていってはどうかという意見でした。
実際、トクホと機能性表示食品を比べると、表示として同じことを言えて、むしろ機能性表示食品の方が踏み込んだ表示をしている場合がなくもないという状況が見受けられます。
<トクホの公正競争規約に活路>
――確かに機能性表示食品の表示の幅は広がっています。
下田 あれだけ手間暇かけて制度化しても、かえって(機能性表示食品よりも)言えないというのでは困るので、疾病リスク低減表示をもう少し増やせないかと考えました。消費者庁からは、世界各国の疾病リスク低減表示について調査をやってくれと、調査事業を委託されていました。ただ、私は各国の状況を調べるだけでは意味がないと思っていました。日本の制度と比較してこういう違いがあるからこう直すべきだと言う必要を感じていました。調査後、委員会の先生に提言書を出してもらいました。提言がどこまで実現されるかはこれからですが、大いに期待しています。
2つ目は、公正競争規約をどうにかできないかという点。10年前、断念する原因となった2つの問題点ですが、トクホについてだけ考えると、定義は法律に基づくからしっかりしているし、業界もトクホに関しては非常にまとまっています。なおかつ、日本健康・栄養食品協会の会員がほとんどということもあって、非常にまとめやすかった。この2つを活性化の目玉に考えていたのですが、急速に話が進み、公正競争規約の方が先行して、準備委員会を立ち上げることになったのです。
――とてもスピーディーでした。
下田 去年の春頃にスタートし、準備委員会は5回開催しました。ただ、そこまで至るには日健栄協におけるトクホへの取り組みも含めて長い準備期間があったからこそと思っています。もともとトクホ部会があり、広告の自主基準も作り、審査会を作って自主的に取り組むなどのさまざまな積み重ねがあったからこそ、比較的にスムーズに進んだのだと思います。
<公正マークに保健用途も記載可能>
――トクホ公正規約の特徴は?
下田 消費者庁に言わせると、飲料タイプ、錠剤タイプ、粉末タイプなどのいろいろな形態の商品を1つの括りで認めたのは初めてということでした。これは大きな特色ですし、マークについても、今回初めて積極的に保健の用途をマークの中に記載していくことができるようになりました。これは画期的な出来事です。12月から新しいマークを受け付けた商品の申請を受け付けています。
―課題と展望について。
下田 マークの解禁が12月からですから、どういうものが出てくるかとても期待しています。元気がないと言われるトクホの業界に、もう1度やってみようという活気が湧いてくるのを期待したい。また、協議会の正会員が少ないので、もう少し増やしていきたいと思っています。魅力のある仕組みのなかで、トクホの許可を取得する企業が増えることを願っています。
――ありがとうございました。
(了)
【聞き手・文:田代 宏】
(冒頭の写真:下田智久理事長)