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消費者委WG、中間報告取りまとめる 悪質な破綻必至商法に解散命令も本格検討へ

 悪質商法に対する実効的な法整備や違法収益のはく奪に向けて検討を進めて来た「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキンググループ」(後藤巻則座長)は8日、第378回消費者委員会で取りまとめの中間報告を行った。

民事的ルールの通用しない悪質商法

 同委員会はこれまで、消費者法分野のルール形成のあり方として、第5次委員会では「事業者の自主的取り組み、民事ルールおよび行政規制がベストミックスされることが重要であることを提言」し、第6次では「事業者および事業者団体の自主的取り組みにフォーカスした調査審議」を行ってきた。今次(第7次)において、「自主的取り組み、民事的ルールでは対応しきれない悪質商法について、実効的な法整備や違法収益の剥奪、財産保全などの制度」について検討する目的で、今年1月28日の第363回消費者委員会本会議で再開、6回にわたり審議を行ってきた。

 中間取りまとめでは、近年発生した多数の消費者被害事案を整理、現行制度による対応の可能性と限界などについて検討。中間取りまとめ以降に議論が必要な論点を提示した。

 高配当・高利益をうたって多数の消費者を誘引したにもかかわらず、利益が上がらなければ他の消費者から得た出資金から配当や利益の提供を行わざるを得ない窮状に陥り、新たな出資者を集める。出資が増えれば増えるほど配当ないし利益の提供をしなければならず、さらに出資者を集めて被害者を増大させるという悪循環を繰り返す破綻必至商法を展開して消費者被害を生んだ「ジャパンライフ」、「ケフィア事業振興会」、「MRIインターナショナル」を具体例として、これらに共通する本質的問題に対して、民事的主張・行政的手法・刑事的手法などによる対策を検討した。

 民事的手法としては、「消費者裁判手続特例法」における特定適格消費者団体による消費者被害回復を図るための2段階型訴訟制度。財産の散逸・隠匿を図る悪質事案において被害回復の実効性を高めるべく、事業者の財産への仮差し押さえ命令の申し立てを行う。

 行政的手法としては、注意喚起、勧告・命令を伴う「消費者安全法」、指示(特定商取引法)・措置命令(預託法)・業務停止命令(特商法)・取引停止命令(預託法)、業務禁止命令(特商法)の積極的な活用が提案された。
 他にも、課徴金納付命令(景品表示法)、金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律(更生特例法)、改案命令(会社法)などが挙げられた。
 刑事的手法としては、組織的犯罪処罰法の規定に基づく「被害回復給付金支給制度」も紹介された。

現場では被害回復の役に立たない

 消費者被害の現場をよく知る委員からは、洗い出された対策のほとんどが「洗い出しただけで実際には役に立たない」との悲観的な意見が出た。ジャパンライフ、ケフィ事業振興会、西山ファームと、実名公表が後手に回り、解散命令も行われることのなかった事実を振り返り、何千人もの救済がだめになったと、事後の被害回復をめぐる現場の厳しい実状を説明した。今後は、「ある制度がなぜ使われないのか、なぜ絵に描いた餅なのかを徹底的に追求し、ぜひとも建議に持っていけるような仕組みに変えてほしい」と述べた。別の委員からは、被害回復ができるにもかかわらず、被害回復を希望する被害者が少ないことの現状が報告された。理由として、返金される金額の少なさなどいくつかの理由が考えられるとした。

 これに対して座長代理の黒木和彰弁護士は、「今回の取りまとめで意味があるのは、会社法における解散命令にフォーカスした点」と発言。「解散命令は、行政と司法を法務大臣を介してつなげる制度。官公庁が通知しなければならないという規定があり、行政のいろいろな知見を法務大臣を介して裁判所によって裁く。最終的には、個々の被害者に関する財産保全などにつながる可能性がある」と説明、解散命令の本格的な検討も視野に入れるとした。今後、同法の活用の可能性や限界などについても議論する。
 
 黒木氏は、「中間とりまとめの論点をぜひ形のあるものとして、1つのマイルストーンにしたいと考えている」と語った。

 今後は、現行制度によって消費者被害の未然防止、拡大防止、財産保全などに対応するため、「相応の情報収集能力」、「一定の強制力を伴った調査権限」の確保にどういうことが必要なのかが課題となる。

【田代 宏】


 (冒頭の画像:消費者委員会の公表資料より)

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