消費者委、食品表示基準改正案を答申 アレルギー・個別品目表示を含む改正案了承
消費者庁が食品表示法に基づき進める食品表示基準の一部改正案を巡り、6日に開催された消費者委員会(鹿野菜穂子委員長)の第81回食品調査部会で、先月21日に続き2度目の審議が行われた。特定原材料に準ずるアレルゲンの表示義務化や個別品目ごとの表示ルールの見直しという改正案が議題とされたが、会合では、パブリックコメント対応や諮問手続きの妥当性、意思決定プロセスの透明性など、制度設計の根幹に関わる論点が相次いで提起された。結果として、消費者庁は会議当日に諮問を差し替える異例の対応を迫られ、修正を伴うかたちで消費者委員会が答申に至った。
消費者庁、パブコメを受けて「別表」修正へ
冒頭、消費者庁が昨年12月26日から今年1月30日まで実施したパブリックコメントの結果を踏まえ、意見に対する考え方を説明した。
その後、今村知明部会長は、パブリックコメントへの対応をめぐる消費者庁の説明に対し、手続き上の問題点を指摘した。消費者庁が、寄せられた意見に対して食品表示基準「別表」の一部を修正すると説明したことに関して、部会長は諮問事項そのものが変更されるか否かを同庁に確認した。その上で、変更によって諮問内容が変わる以上、再諮問が必要になるとの認識を示した。これを受け、消費者庁は当日付で諮問を差し替え、修正内容を会議中に説明した上で答申を得るという異例の対応を迫られる事態となった。
食酢表示と「塩漬」ルビで条文修正
修正の対象となったのは、食酢表示に関する規定と塩漬(えんせき)のルビについての2点。前者は、当初の改正案では第八条各号を全て削除するとしていたが、「「醸造酢」又は「合成酢」の用語は、商品名の表示されている箇所に近接した箇所に、内容量の区分に応じ、表2 に定める活字の大きさの統一のとれた文字で表示する」との規定は残すことが確認された。
後者については、パブリックコメントの5番に関する事項で、「畜産物缶詰及び畜産物瓶詰の項の『塩漬』にルビ(振り仮名)を付けることとした。
部会は、この修正が条文構成に関わる以上、形式的にも実質的にも再諮問が不可欠であるとし、この日に改めて諮問するよう消費者庁に求めて議論を継続した。
会合では、「アレルギー表示28品目の目安の位置付け」、「28品目の削除基準とアワビ問題」、「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議の役割と合意形成プロセス」、「法改正における経過措置期間のズレと新旧表示混在リスク」、「個別品目表示ルールの見直し」、「調理方法・使用方法表示の削除問題」、「乳・乳製品表示とアレルギー表示の整理」、「改正後の周知・フォローアップの必要性」などについて議論した。
アレルギー表示「28品目」を巡る制度論
中でも多くの時間を割いたのは、アレルギー表示における「28品目の目安」の位置付けと、その決定・運用プロセスに関する議論である。なぜ「28品目」なのか、義務表示(特定原材料)と推奨表示(特定原材料に準ずるもの)を合わせた28品目は、食物アレルギーの症例数全体の9割をカバーしているという説明の妥当性について問われた。
また、「目安」とされる品目数が実質的に固定化・硬直化していないか、削除基準が示されているにもかかわらずアワビが削除されなかった理由と制度的整合性などにも質問が及んだ。
さらに、臨床医中心のアドバイザー会議の判断だけで足りるのか、患者会・事業者を含めたステークホルダー参加型の合意形成が必要ではないか、科学的判断(リスク評価)と社会的判断(表示のわかりやすさ、実行可能性)の境界は何か――などについて、前田・森田・小川・阿部・船井・鈴木委員など複数の委員から角度を変えた質問や問題提起が相次いだ。
消費者庁はこれに対し、個々の問題提起を否定せず、しかし制度や判断の枠組み自体をその場で見直すことはせずに、「現行の考え方は妥当。今後も丁寧に進める」として理解を求めた。
具体的には、28品目は「全国実態調査で症例数の9割以上をカバーしていた」目安であると説明。削除については「減らす場合はより慎重な検討が必要」、「松茸削除の影響を見極めている段階」とし、具体的な基準適用や判断理由の踏み込んだ説明は避けた。
アドバイザー会議だけでよいのか、という指摘については、全国実態調査と臨床知見に基づく科学的判断の場として正当であることを強調した。一方、食品表示懇談会などで幅広く意見は聞いており、「コンセンサスを図ることの重要性は受け止める」と発言した。
科学的に安全でも、表示としては見づらく分かりにくい、現場では運用しにくいという指摘に対しては、「生命・健康保護が最優先」という基本姿勢を繰り返し強調し、表示の分かりやすさや事業者負担については否定せず、今後も意見を聞きながら進めるというスタンスを保った。
経過措置期間のズレと表示混在リスク
個別品目の改正とアレルギー表示の改正において、経過措置期間が異なることによるリスクが指摘された。2026年4月1日施行後、カシューナッツの義務表示の経過措置期間が28年3月31日までの2年間であるのに対し、個別品目表示ルールに関する経過措置期間が30年3月31日までの4年間とズレがあることに対する疑義である。
消費者庁は、個別品目表示とアレルギー表示で経過措置期間にズレが生じること自体は認めた。その上で、一斉に表示を切り替えることは事業者負担が大きく現実的ではないとして、制度的に新旧表示の混在を禁止したり、切り替え時期を統一したりする考えは示さなかった。
個別品目表示は包装資材の在庫や製造ライン、賞味期限への影響が大きいため長期の経過措置が必要である一方、アレルギー表示は患者側の要請が強く、生命・健康に直結することから短期間としたと説明した。その結果、新旧表示が混在する可能性は生じるが、これについては制度で縛るのではなく、Q&Aで「28品目対象」、「29品目対象」の併記を推奨するなど、周知や指導による運用対応で対処する方針を示した。
修正を伴い答申案を全会一致で了承
最後に、消費者庁による修正後の諮問内容を踏まえ、部会には答申案が提示された。答申案の内容は、「諮問された改正案のとおりとすることが適当である」とするもので、これについて部会は全会一致で承認した。
最終的な答申手続きについては、再諮問に関する部会の決議内容を委員長に説明し、委員長の了解をもって消費者委員会としての正式な答申とすることが確認された。こうして、修正を伴うかたちではあるものの、食品表示基準におけるアレルギー表示および個別品目ごとの表示ルールの改正規定は部会として了承され、答申へと至った。
【田代 宏】
関連記事:食品表示基準改正案を公表 カシューナッツを特定原材料に追加、意見募集開始
:消費者委、食品表示基準改正を審議 カシューナッツ表示義務化と個別品目別表示見直し











