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死亡疑い増加、制度見直しに影響か 府令改正案審議する消費者委員会「信頼さらに失わせる事態」

 小林製薬「紅麹サプリ」事件をめぐり、小林製薬㈱(大阪市中央区)の報告に基づく死亡疑い事例が5人から84人(4日時点)に突如増えた問題で、消費者委員会(鹿野菜穂子委員長)は8日、厚生労働省の担当課を呼び、経緯や同省の対応などを聴き取った。委員の今村知明・奈良県立医科大学公衆衛生学講座教授は、「(サプリメントの製造・販売を行う)企業全体の信頼をさらに失わせるような事態だ」と指摘。鹿野委員長は、「今回の事案を踏まえ、健康被害情報の収集体制の在り方に関してもより一層の議論を深めていきたい」と述べた。

健康被害情報めぐる規定「不十分なのではないか」

 機能性表示食品制度を見直すための食品表示基準(内閣府令)改正などに向けた詰めの作業を消費者庁などが進めている中で先月28日に判明した、2度にわたる小林製薬の健康被害疑い情報報告遅滞問題は、見直される制度の在り方に影響を与える可能性がさらに高まってきた。今村委員はこの日の会議で、「諮問されている内容だけでは不十分なのではないか。建議などもしていかなければならないと考えている」と発言。内閣総理大臣からの諮問を受け、消費者委で調査審議を進めている食品表示基準改正案に対し、より厳しい姿勢で臨むことを示唆した。

 消費者庁が今月26日までパブリックコメントを行っている食品表示基準改正案には、健康被害疑い情報の収集と報告を届出者の遵守事項とする規定が盛り込まれている。改正案では、
① 「医師の診断を受け、当該症状が当該食品に起因する又はその疑いがあると診断されたものに関する情報を得た場合には、食品衛生法施行規則別表第十七第九号ハの規定より当該情報を得た日から速やかに都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長に提供すること」
② 「前号に掲げるところにより提供した情報について消費者庁長官に提供すること」
③ 「消費者、医療従事者等から健康被害情報を入手した際、情報提供者が医師以外であり、医師による診察行われていない場合にあっては、届出者の責任において、情報提供者へ医師への診察を進める等適切な対応を行うこと」──などと医師の診断のある健康被害疑い情報の「速やかな報告」を届出者の法的義務に規定している。

 また、厚労省でも、機能性表示食品に限定して、医師の診断のある健康被害疑い情報の保健所等への報告を事業者に義務づけるため、食品衛生法施行規則(厚生労働省令)を改正する。同省は現在、改正案のパブリックコメントを実施中だ(今月26日まで)。

 消費者委の今村委員はこの日の会議で、厚労省の担当課に対し、「事件を担当する立場から見て、今後どのような対策が上乗せで必要になると考えるか。(サプリメントを販売する)企業の襟を正していくための政策という側面から答えてもらいたい」と追及。これに対し、同省健康・生活衛生局健康課の担当官は、「機能性表示食品(制度及び食品衛生基準行政)の所管は消費者庁であるため答えづらい」として正面からの回答を避け、「食品衛生の監視、取締り、執行の観点から消費者庁に協力するかたちで対応していきたい」と同省としての立場を示すにとどめた。

健康被害疑い情報「早期の公表が望ましい」

 食品表示基準改正案に対する答申に向けた消費者委の今後の調査審議では、健康被害疑い情報の公表のあり方が議論になる可能性がありそうだ。

 鹿野委員長はこの日の会議で、「健康被害情報は、健康被害の拡大防止に非常に重要な役割を持つ」との認識を示した上で、「事業者が把握した健康被害疑い情報は可能な限り早期に報告、公表されることが望ましい」と要望しつつ、「とりわけ公表に留意してほしい」と付け加えた。因果関係が必ずしも明らかでないとしても「公表」するよう求めたと考えられる。食品表示基準改正案には、事業者から報告された健康被害疑い情報を行政がどう取り扱うかに関する規定はみられない。

 食品表示基準改正案の調査審議の主体である消費者員会の食品表示部会(今村知明部会長)は今週12日に会合を開き、改正案についてさらなる審議を進めることにしている。

【石川太郎】

(冒頭の写真:6月29日付全国紙のトップ記事)

関連資料:現在パブリックコメントが募られている食品衛生法施行規則の改正について(政府サイトへ)
    :以下、今後改正されることになる現行の食品衛生法施行規則別表第17第9号「情報の提供」


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