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機能性表示被害防止法案の行方は? 「機能性表示食品見直しPT」リーダーの大西議員に聞く

 5月14日、食品衛生法の一部を改正する法律案「機能性表示食品被害防止法案」(通称)を立憲民主党が衆議院に提出した。小林製薬㈱の「紅麹サプリメント」による健康被害事案を受けての対応である。6月17日現在、衆院の議案一覧では同法は「審議中」となっているが、国会閉会まで残すところ1週間となった。

 他方、政府は内閣府令および政省令通知により機能性表示食品による健康被害情報の報告義務化、健康食品GMP適正製造規範の義務化を推し進めようとしている。立法化を求める立憲民主党と食品表示基準(消費者庁)や食品衛生法施行規則(厚生労働省)の改正で機能性表示食品を規制しようとする政府。
 果たして規制するのは機能性表示食品だけで足りるのか? 「その他のいわゆる健康食品」は今のままでいいのか? 機能性表示食品制度の見直しに関するプロジェクトチーム(PT)の座長を務める立憲民主党の大西健介衆議院議員を衆院第一議員会館に訪ねた。(文中敬称略)

議員立法と府令・政省令による改正の違いは?

――(記者)PTは5月14日に機能性表示食品被害防止法案を国会に提出しました。そして6月4日に衆議院で開かれた「消費者特別委員会」で、府令や政省令で機能性表示食品を規制しようとする政府に対し、その理由について質問しました(大西議員の質疑は1時間49分過ぎから)が、自見はなこ消費者及び食品安全担当大臣からはまともな回答が得られませんでした。
 しかし拝見したところ、PTが提案した食品衛生法の改正による機能性表示食品の規制と、政府が進めている内閣府令や政省令通知による機能性表示食品の規制のあり方について、その中身はほぼ同じです。あくまで議員立法にこだわる意図は何でしょうか?

大西 私が座長を務めているPTにおいても共通認識だと思うのですが、2015年の機能性表示食品の制度ができた際の経緯を考えた時に、同制度はアベノミクスの鶴の一声でかなり短時間に作ったわけです。しかもそれが法律の改正ということではなく、食品表示基準という内閣府令の改正で制度を創設した。その時に、一般質疑における野党とのやり取りが少しだけ残されているが、十分審議が尽くされたと言えるのか。これが法改正であったならば、衆参の委員会で審議し、国会答弁で懸念点を確認し、必要があれば参考人の意見を聞き、法案修正し、附帯決議を付けたりすることができる。しかも議論の過程がきちんと会議録に残る。あるいは国会で行われた議論が報道されるなどし、もうちょっと違う流れになったのではないかなという気がします。
 そういう意味で、食品表示基準の改正という内閣府令、そして食品衛生法施行規則の改正でやるというのは万全なやり方ではない。政府が「法制上の措置を取る」と言えば、それは法律だけでなく政省令を含むのだろうが、そこはやはり法律でやるということにこそ意味がある。

「速やか」の期間は?「報告」「重篤」の範囲など明確に

――「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」では、健康被害の情報収集に係る事項において、「万が一、健康被害が発生した際には、急速に発生が拡大するおそれが考えられる。そのため、入手した情報が不十分であったとしても速やかに報告することが適当である」と記されています。この「適当である」が再三、報道などでも取り上げられていますが、例えば、立法化していれば、この点についても踏み込んだ議論が尽くされたのではないか、ということでしょうか。

大西 そうです。「速やかに」と書いてあるけど、速やかとはどれぐらいの期間か。あるいは今回問題になっているように、その因果関係が不明な段階でどこまで報告すればいいのか? また「重篤」とはどの範囲を言うのか? 当然、そういう話は国会で議論になるわけです。だけど今回、そういう法律の議論をする機会が十分なかったわけです。事業者の側からすれば、因果関係が特定できないまま早い段階で報告してしまったら、風評被害で商品が売れなくなってしまう。だから原因が分かるまで報告を待とうと思うのは、気持ちとしては分からなくもない。

 しかし、これも私たちが散々言っていることですけれども、日本の機能性表示食品制度が見本にしたアメリカのダイエタリーサプリメント教育法では、最初は健康被害の報告義務が入っていなかったけれども、多くの死亡事例などが出たことで途中から盛り込まれた。GMPもそうです。しかし、有害事象の報告義務もGMPの義務化も入らないまま機能性表示食品はスタートしてしまった。そこの出だしがそもそも間違ってしまっている。仮に法改正に伴い、国会で議論していたとしたら、「これってアメリカの制度を模範にしているのでしょう?」、「アメリカの制度は健康被害の義務化もGMPの義務化も入れていますよ。それを抜いた状態でいいのですか?」という議論が15年当時に行われたかもしれない。世界最先端の制度と言いながら、アメリカよりも緩い制度を作って大丈夫なのかという話が、その時点であったのではないかと思います。

――法案成立の可能性は?

大西 現在、「つるし」の状態です。継続審議の可能性もある。ただ、政府は府令・政省令で押し切る姿勢を崩していない。

――つるしとは?

大西 法律案は国会に提出されると、まずつるしと言って、付託委員会が決まるまでは宙に浮いているのです。それを議院運営委員会で下ろすと、どこで審議するかが決まる。今回ですと、食品衛生法なので通常だと厚労委員会に付託される。付託されたら、その段階で審議するかしないかを決める。そのまま審議されずにたなざらしされて、例えば会期末を迎えると、継続審査として次の国会まで残るのか、または廃案にするかを判断する。

サプリメント法の検討は「いつ」「どこ」で?

――大西議員は、6月4日に衆議院で行われた「消費者問題特別委員会」で、「錠剤・カプセル形状のサプリメントを規制する法律を作らなければ本当の意味で安全を守ることはできない」と述べています。
 提出された法案では、「その形状、成分の含有量、摂取の方法等に照らして特定の成分を過剰に摂取することが容易である機能性表示食品その他これと同一の特定を有する食品の安全性の確保及びこれらの食品の摂取を原因とする健康被害の救済に関する法制度の在り方について、抜本的な見直しを含め検討を行い、その結果に基づき、法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする」とあります。これはその他のいわゆる健康食品に対する法律、例えばサプリメント法(仮)の制定を視野に入れたものでしょうか?

大西 そうですね。このことは巡る検討会の報告書にも、閣僚会合における検討事項にも盛り込まれています。今回の問題は、機能性表示食品だけの問題ではなく、錠剤・カプセル形状をしたサプリメント全体の問題です。ただ、政府が検討すると言うのはいいのですが、いつ・どこでやるのかという話です。

――消費者特別委員会では大西議員の質問に対し、自見大臣は「厚労省と緊密に連携していく」としか答えていません。

大西 医薬品は厚労省の所管です。食品という意味では厚労省が見ていますが、幅広い食品の中にトクホと機能性表示食品と栄養機能食品があり、そこは消費者庁の所管になっているわけですが、消費者庁はあくまで表示の監視です。
 サプリメント全体の規制となると、これは消費者庁単独の手に負える問題ではない。もともとカプセル錠剤が医薬品と同じ扱いだったのを規制緩和しているわけなので、そのあり方を考えるのだったら厚労省と消費者庁、あるいは農水省も含めてかもしれないが、いわゆる省庁横断的な検討の場を設けて、そしていつまでに結論を出すのかを決めて行わなければならない。 小林製薬を巡る話もそろそろ国民は忘れかけているから、これまたのど元過ぎれば曖昧なままスルーされてしまう。

健康食品のあり方全体を見直す必要

大西 5月末までの巡る検討会は終わったので、皆さんの記憶が薄れないうちに、今度はその他のいわゆる健康食品も含めた規制のあり方の検討の場を早く設けて、そしていつまでに一定の結論を出すのかということを話し合う。必要ならば、そのための新たな法律を検討する。その時に、法律が単独のサプリメント形態のものになると多分、今の機能性表示食品とトクホの領域にどこまで入っていくかという問題を生むので、やはりあり方全体を抜本的に見直す必要がある。時間はかかるが、早く手を付けないと曖昧なまま、これも忘れ去られてしまい、また10年後ぐらいに同じような事件が起きて、大騒ぎになるかもしれません。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:田代 宏】

※「つるし」とは、委員会での法案審議にあたり、野党が委員会付託の前提として本会議での趣旨説明を求めたまま放置し、審議入りを遅らせる戦術のこと。

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