機能性の届出確認「大変な状況」
消費者庁長官が発言 「民間の協力が必要」
消費者庁の食品表示企画課が担当する、機能性表示食品の届出資料の確認作業について、同庁の伊藤明子長官が21日、「大変な状況になっている」と直截な表現を用いて窮状を訴えた。届出件数の増加で届出確認作業の負担が以前にも増して高まり、現在の人員ではさばき切れなくなりつつある模様。「業界の皆さんに協力いただき、民間の活力を生かし、事前確認についてご協力いただくような仕組みを是非作りたい」とも語った。
「事前確認」の仕組み構築に言及
消費者庁は昨年8月、届出確認の効率化を目的に、業界団体など民間で事前確認を行う仕組みの運用を始めた。これは、同庁が認めた民間団体での事前確認を経た届出について、届出資料の提出から公開、あるいは差し戻しまでの期間の短縮化を図ったもの。ただ、事前確認を経た届出であれ、食品表示企画課でガイドラインに則した届出かどうかの確認作業を行うことに変りはなく、作業負担の実質的な軽減にはつながっていないとみられる。伊藤長官は、引き続き民間の協力を得ながら、それとは異なる新たな事前確認の仕組みを構築したい考えを示唆した可能性がある。
日本健康・栄養食品協会がオンライン形式で21日開催した「特定保健用食品制度 30周年記念講演会」。事前収録だったものの、伊藤長官が基調講演を行い、トクホ制度に対する期待と展望を示しつつ、機能性表示食品制度にも言及した。
伊藤長官は、「機能性表示食品(の届出)は最近非常に伸びているため、届出の確認が大変な状況になっている」と述べた上で、「民間活力を生かし、事前の確認についてご協力いただくような仕組みを是非作りたい」などと発言。そうすることで、「トクホや新たな制度の分野に私どもとしても傾注していきたい」と展望を語った。民間にも協力してもらいながら届出確認の負担を減らし、食品表示企画課の主要業務である食品表示制度のルールメイキングなどに力を注ぎたい考えを示したと考えられる。
新規届出に加えて変更届出も増加
「大変な状況」は決して大げさな表現ではないとみられる。直近(1月20日)の機能性表示食品届出データベースの情報更新で公開された新規届出は42件。昨年12月の公開件数は累計で140件余りに上る。2021年度(21年4~22年3月)の新規届出の公開件数はすでに1,000件近くに達しており、最終的に、年度別届出公開件数の過去最高を記録した前年度(1,067件)を大きく上回るのは確実だ。
機能性表示食品制度の施行からすでに6年以上が経過したが、届出件数は落ち着くことなく増え続けている。届出制とはいえ右から左に届出番号を付与されるわけではなく、食品表示企画課が届出資料の確認作業を行っている。新規届出の公開件数が増えるのに合わせて変更届出も増えていくため、その形式確認にも追われることになる。同課で届出資料の処理作業にあたる人員は現在10人ほどといわれるが、大半が別の業務も兼務しているとみられる。人員を補強するといっても、食品表示を巡る課題は他にもある中で、届出確認の体制強化ばかりに予算を充てるのは困難といえそうだ。
消費者庁の幹部に近い関係筋は、「今の仕組みのままでは(届出資料の処理作業を)規定の目標日数で回せなくなる可能性もある」と話す。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:トクホ30周年記念講演会で講演する消費者庁・伊藤長官)