栄養機能食品の表示・広告(後)
<(株)ブルボン『ウィングラムココアPET480(セノビック)』のケース>
もう1つ、よく見かけるパターンの表示事例を紹介する。昨年3月に発売された(株)ブルボンの『ウィングラムココアPET480(セノビック)』、『ウィングラムプロテインバー(セノビック)』(どちらも既に販売終了)を取り上げる。
2製品のパッケージの正面には、次のような表示がある。「栄養機能食品 カルシウム・ビタミンD・鉄+(プラス)卵から生まれた卵黄ペプチド ボーンペップ」。栄養機能食品としてカルシウム・ビタミンD・鉄を含有。これに並べるかたちで、ボーンペップと称する卵黄ペプチドを強調している。
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『ウィングラムココアPET480(セノビック)』のパッケージ表示
2製品は、栄養機能食品(カルシム・ビタミンD・鉄)として「カルシムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」、「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」、「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です」と表示できる。
しかし、栄養機能食品をうたいながら、制度の対象外の成分を同時に訴求する表示・広告は、消費者に誤認を与えるのではないかと懸念される。(株)ブルボンの2製品の場合、カルシウムやビタミンDの「骨の形成」機能が、ボーンペップにもあるという誤認を消費者に与える心配はないのだろうか。
同社に質問したところ、「消費者に誤認のないよう、栄養機能食品(カルシウム・ビタミンD・鉄)は枠内で囲み、栄養機能食品に係る法規に則った表記をした」(総務推進部広報管理課)と説明している。消費者庁によると、栄養機能食品の栄養成分にプラスして、その他の成分を表示すること自体は、直ちに法令違反に当たるわけではないという。
ただし、問題は消費者が誤認しないかどうかである。(株)ブルボンの2製品と同じようなケースとして、栄養機能食品(ビタミンC)と標ぼうしながら、コラーゲンを強調する製品もある。この場合、ビタミンCの「皮膚や粘膜の健康維持を助ける」旨の機能が、コラーゲンにもあると消費者を誤認させる恐れがある。
鈴鹿医療科学大学副学長で(一社)日本食品安全協会理事長の長村洋一氏は、日本食品安全協会会誌で次のように述べている。
「栄養機能食品と銘打っていても、その商品自体はこの制度が目的としている栄養成分を補充すると言うよりは、共存する成分の効果を期待させるための権威付として用いられていると推測される商品が非常に多く出回っているのが現状である」。
今回取り上げた事例について長村氏に見解を聞いたところ、「栄養機能食品の本来の目的は、ビタミンなどが不足しそうな人に適正な量を摂取してもらうことである。それと並行して、機能性成分を売り込む行為については規制してほしい」と話している。
消費者庁では業界の要望を背景に、栄養機能食品制度を見直す方向にある。その一方で、栄養機能食品の趣旨を逸脱した表示が氾濫するなど、販売企業による“やりたい放題”の状況が続いている。制度を改正する際には規制緩和だけでなく、消費者を誤認させる表示を排除するための施策も求められそうだ。
(了)