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栄養成分の機能表示、見直し方針を整理 消費者庁の調査事業、具体的な検討は来年度以降に

 栄養成分の機能表示の見直しに向けた委託調査・検討事業の報告書を消費者庁が公表した。この調査・検討事業は同庁が昨年度実施していたもので、報告書では、有識者らが検討した、栄養機能食品のヘルスクレーム(機能表示)の見直しに向けた方針を整理した。報告書を受け、同庁では今後、栄養成分の機能表示の見直しの要否に向けた具体的な検討に入る。検討開始時期は来年度以降を予定しているという。

 報告書は同庁のホームページ内で閲覧できる。報告書のタイトルは「栄養成分の機能表示等に関する調査・検討事業報告書」。公表は9月30日付。同事業を受託した㈱インテージリサーチが設置した有識者による検討委員会で議論、検討の上で取りまとめた。

 現在3種類ある保健機能食品の1つ、栄養機能食品の制度は2001年に創設された。以来、現在までに20種類の栄養成分(ビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類)を制度対象に組み込み、各栄養成分について条件付きで、国が定めた機能表示を行うことを認めている。しかし、これまでに機能表示の見直しは一度も行っていなかった。このため、各栄養成分に定められた機能表示と、5年ごとに改定される国の「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書に記載された各栄養成分の機能に関するエビデンスに、かい離の生じていることが以前から指摘されていたという。

栄養成分めぐる新たな機能表示追加されるか

 報告書で、東京大学大学院の佐々木敏教授(医学系研究科)をリーダーとする検討委員会は、「栄養成分の機能表示の見直し方針」として、これまでの栄養機能食品の基本的な考え方を踏まえることを前提に、「原著論文などに基づく見直し」、また、「日本人の食事摂取基準に基づく見直し」といった大きく2つの見直し方針を示した。いずれの見直し方針もさまざまな前提条件や制限を付しているが、日本人の食事摂取基準に「記載のある」表現を始め、同基準に記載されている機能「以外」の表現についても、栄養成分の機能表示の「見直し対象となり得る」とする考え方を提示した。

 ただし、同基準に記載のある場合でも、生活習慣病の発症予防を含む疾病予防に関わる機能は見直しの「対象外とする」としている。

 各栄養成分の機能表示の文言見直しに向けた具体的な検討に当たっては、国の栄養政策の基盤である日本人の食事摂取基準に記載のある機能に重きが置かれる見通しだ。ただ報告書では、原著論文などに基づく見直し方針について、食事摂取基準(2020年版)に記載のある機能「以外」の表現に関しても、前提条件付きで栄養成分の新たな機能表示として追加を検討する方向性を提示。「新たな機能の科学的根拠(原著論文)が確認できる場合」または「EU(欧州連合)等の諸外国で認められている機能表示の表現がある場合」は「見直しの対象となり得る」としている。

 また、機能表示の見直し対象となり得る表現の選定に関しては、「反証となる原著論文等が存在しない」など3つの要件を示し、3つ全てを確認できるものに関して「新たな栄養成分の機能表示として追加を検討する」とした。

 今回、栄養成分の機能表示文言の見直し方針を整理するに当たって検討委員会が参考にしたEUの栄養・健康強調表示制度では、例えばビタミンCについて、条件や制限を設けた上で「激しい運動中及び運動後の正常な免疫系機能の維持に寄与します」や「正常なエネルギー産生代謝の維持に寄与します」など、現行の栄養機能表示食品にはない機能表示を可能としている。

誰もが理解しやすい機能表示に変わる?

 報告書ではまた、「~を助ける栄養素です」や「~に必要な栄養素です」といった、現行の栄養機能食品における栄養成分の機能表示の文末表現を系統立てて整理してみせた。具体的には、当該栄養成分が「補酵素等の役割を果たすことで代謝経路等に影響する場合」と「組織や器官の主な構成要素である場合」の大きく2つの系統を立て、前者の場合は「~を助ける栄養素のひとつです」、あるいは「~の健康維持を助ける栄養素のひとつです」とする文末表現を提示。後者については「~を作るのに必要な栄養そのひとつです」に改めるなどと整理した。

 報告書では他にも、「留意すべき点」として、消費者と事業者の双方が容易に理解できる短い機能表示を設定すべきだと提言。しかし切り出し表現は、「多様な解釈ができることによって誤解を生じる懸念もある」とも指摘し、消費者から事業者まで「正しく理解できるような普及啓発等を行うべき」とした。

 また、現行の栄養機能食品をめぐる課題も整理。課題を解消するため、栄養機能食品の消費者利用実態や市場実態を把握する必要性があるとした。他にも、「機能表示を行っている栄養成分以外の栄養成分の含有量の整理」や「摂取する上での注意事項の見直し」を行う必要があるとも指摘した。さらには、消費者の認知率が16%程度にとどまり、正しい利活用に結びついていないとみられる栄養機能食品の認知促進や適切な利活用を促す普及啓発の必要があるともした。こうした指摘をめぐり、同庁表示企画課は取材に、「今年度からでも手を付けられることには着手していきたい」と述べている。

【石川 太郎】

(下の画像:消費者庁が公開した報告書の一部。原著論文と日本人の食品摂取基準に基づく見直し方針が提示された)

関連資料:消費者庁「栄養成分の機能表示等に関する調査・検討事業報告書」全文

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