景表法検討会 委員は何を語ったか(後) 「広告主体拡大も視野に入れた法改正必要」
消費者庁が今月16日に開催した「景品表示法検討会」の第1回。初回ということもあり、各委員が1人ずつ発言を行った。各委員の発言内容を伝える連続記事の2回目。
<増田悦子委員=(公社)全国消費生活相談員協会理事長>
アフィリエイト広告、ターゲティング広告、口コミサイトなどによって消費者が今、混乱している状況にある。広告主がどこまで適切に管理できるか。広告主体の拡大も視野に入れた法改正も必要ではないか。
消費者がインターネット取引を使用するにあたり、リテラシーの低さ、不注意が指摘されており、消費者教育の重要性が言われている。それは勿論なのだが、それだけでは防ぎ切れないものがある。事業者による適切な措置、行政による規制や執行の強化がなくてはならない。また、景表法違反が指摘されても消費者生活相談の現場では必ずしも返金につながらないことがある。景表法と特商法等の強い連携と、それが明確に示されることが相談現場では求められている。
インターネット取引が安全な環境であれば、高齢者も含めて生活の質が非常に上がる。今後の検討会に期待したい。
<中川丈久委員(座長):神戸大学大学院 法学研究科教授>
専門は行政法。最近はサイバースペースにおける国家主権をやっている。従来の地理的なものと違うのかどうか。海外事業者に対する域外捜査、法執行の話は本日も出たが、非常に関心がある。現状、国際法的には規律がほとんどなく、こう言ってしまうとあれだが、やってしまったもの勝ちのところがある。消費者保護に反対する国は少ない。そのため域外執行がやりやすい分野でもある。ぜひ工夫してみてはどうかと個人的には思う。
もう一つ、行政の効率的な法執行を以前から検討している。違法収益を被害者に返すことで違反の繰り返しを防ぐ、公益のためになるという法制度。日本にも部分的に入ってきているが、もう少し工夫できないか。他方で、その制度設計は非常に難しいことは理解している。何らかアイデアを考えてもいいかもしれないと個人的には思っている。
<沖野眞已委員:東京大学大学院 法学政治学研究科教授>
専攻は民法。消費者法関係では特に契約法を研究している。景表法はさわったことがないが、取引あるいは契約という観点から景表法の重要性は理解している。個々人が取引、契約を決定していくためには、その情報の適正さ、あるいは理解可能性をいかに担保するかが非常に重要になる。
本日の消費者庁のプレゼンテーションを聞いて気になったのは、海外法人に対する法執行について。日本にコンタクトポイントが無ければ調査すらできない。しかも、インターネットを利用することでコンタクトポイントを全く用意せずに済む。調査の段階から何もできないということになると、野放しになりかねない。非常に大きな問題ではないか。調査協力、あるいは別主体と協働する方策が何かあるのだろうか。
(つづく)
(冒頭の画像:検討会に臨む消費者庁関係者ら)
関連記事:景表法検討会 委員は何を語ったか(1)