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旧食衛法由来の表示事項も見直し対象に 消費者庁、令和7年度食品表示懇談会スタート

 消費者庁は、これまで見直しの対象外とされてきた「旧食品衛生法由来の個別品目ごとの表示ルール」について、今年度から見直し作業に着手する方針を明らかにした。表示の複雑化に伴い、消費者の視認性の低下に対する懸念が高まる中、旧JAS法由来事項に加えて旧食品衛生法に基づく表示ルールについても再検討を進める。

表示簡素化を目指す動き広がる

 5日に開かれた令和7年度食品表示懇談会で消費者庁は、昨年来、分科会のヒアリングにおいて、ヒアリングの対象としてきた旧JAS法由来事項(品質表示事項)以外の旧食品衛生法由来の表示ルールについても見直しを求める声が一部の業界団体から寄せられていたことを明かした。これを受け、昨年度の懇談会でも委員の中から「冷凍食品の『凍結前加熱』表示や、乳製品の『包装後加熱』表示がかえって調理法などとの誤解を招く」といった指摘もあったことから、消費者にとって有益な情報以外の表示の義務付けは縮小すべきであるとの考えを踏まえ、制度全体の合理化を図ることとした。
 今後の議論については、独自に分科会を設けるのではなく「個別品目ごとの表示ルールの見直し分科会」において議論する。検討に必要な委員については、その都度臨時委員として招聘し対応する。

食品表示制度の変遷と現在の課題

 旧食品衛生法に基づく表示基準はもともと、衛生上の危害防止や食品の特性の伝達を目的として設けられたもの。1947年(昭和22年)以降、乳製品や食肉製品などを対象に個別規定が設けられ、69年(同44年)には包装済み加工食品にも表示義務が拡大された。2011年(平成23年)に制度が消費者庁に移管、13年(同25年)にJAS法・食衛法・健増法を食品表示法に一元化した際にこれらの表示基準も一括で統合されたが、今も当時の内容がそのまま維持されているものが多い。
 一方で、食品表示基準には名称や原材料など、横断的に判断可能な表示項目が設けられており、旧来の表示が重複的・冗長的になっている可能性が指摘されている。また、表示義務の増加は、容器包装の表示欄を圧迫し、消費者にとっての情報過多・視認性低下という新たな課題を生み出した。

見直し対象とスケジュールの詳細(資料5参照)

 今回見直しの対象とされるのは加工食品に限られる。旧表示基準の中には、生鮮食品と加工食品の区別がなかった品目もあるが、例えば「食肉」や「切り身またはむき身にした魚介類」、「生かき」などの加工・生鮮双方に含まれる品目は、今回は対象外とされる。
 例えば、「十分な加熱が必要」と記載されている食品表示基準の別表第19「食肉」と別表第24「生鮮食肉」に関する表示などについては整理の対象外。制度全体の整合性を確保しつつ、真に必要な情報に絞る形で制度の簡素化を目指す。
 具体的な見直し対象としては、即席めん類、無菌充填豆腐、食肉製品、乳製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品など16品目。これらについて、表示事項の必要性や合理性を精査し、必要に応じて規定の削除や修正を行う方針。

 スケジュールとしては、6月中に品目ごとの検討を開始し、6月~8月にかけて地方自治体へのアンケート調査を実施する。9月にアンケート結果の報告を行うとともに、関係者のヒアリングに移り、10月には改正の方向性を検討する。その後はJAS法由来の個別ルールの進行と足並みをそろえて改正施行を目指す予定。

 説明では、「即席めん類」、「食肉製品」、「乳」、「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」などについて、具体的な表示例も示した(資料5-5頁~)

最新の制度改正と今後の方向性

 会合では、令和6年度に行われた「食品表示基準改正」(資料2参照)および「機能性表示食品制度の見直し」(資料4参照)に関する報告も行われた。

 2025年3月28日に公布された食品表示基準の改正で大きな変更点は「栄養強化目的で使用される添加物について、これまで表示が免除されていたものに対し表示を義務化」、「日本人の食事摂取基準(2025年版)の公表を受け、栄養素等の表示基準値を改定。ビタミンB6などの測定方法や基準数値を見直した」、「個別品目ごとの表示ルールを見直し、20品目の基準を改正。22品目について26年度に改正予定。」――の3点。これらの改正については、最大5年間の経過措置期間が設けられている。

 併せて、食品ロス削減の観点から、期限表示ガイドラインも改正した。従来の「5日以内=消費期限」といった旧慣行を見直し、安全係数を0.8に固定せず、食品の特性に応じて柔軟に設定することが求められた。
 また、科学的根拠に基づいた期限設定の推進と、賞味期限後の食品に関する情報提供の強化も盛り込まれている。今後、事業者・消費者双方に対する丁寧な周知を通じて、実効性ある運用と食品ロス削減の両立を目指す。

 紅麹サプリによる健康被害事案を受け、機能性表示食品制度も大幅に見直した。健康被害情報の収集体制を強化し、事業者が健康被害の疑いを把握した際には都道府県および消費者庁への報告を義務付けた(24年9月施行)。
 また、錠剤・カプセル型の製品を対象に、GMPの義務化を導入した(26年9月施行)。
さらに、消費者が機能性表示食品を容易に識別できるよう、パッケージに「機能性表示食品」の文言を明示、届出番号を記載して消費者のリテラシー向上に努める。研究レビューによる表示については、「〇〇の機能が報告されています」といった表現に統一する。これらは今年8月31日までの経過措置を設けた。

 制度運用面も強化した。これまでのガイドラインベースの運用を法令ベースに格上げし、PRISMA2020に準拠した届出を必須とする。新規成分については確認手続を60日から120日に延長し、慎重な確認体制を確保する。買い上げ調査の拡充、専門家による審査制度の導入など、運用面での信頼性向上策が講じられた。

 今後、個別品目ごとの表示ルール分科会は月1回の開催、デジタルツール分科会および日本版包装前面栄養表示(FOPNL)検討会は2カ月に1回の割合で開催することで、制度の見直しを通じて、より効果的で消費者にとっても理解しやすい食品表示の実施を目指していく。

【田代 宏】

当日の資料はこちら(消費者庁HPより)

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