日本アントシアニン研究会、機能性表示食品の課題を徹底討議
日本アントシアニン研究会(矢澤一良会長)は16日、「第7回日本アントシアニン研究会」を都内で開催した。70人を超える関係者が参加した。
東京大学大学院客員教授の津谷喜一郎氏、国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広副所長、科学ジャーナリストの松永和紀氏らによるパネルディスカッションが行われた。「アントシアニンを機能性関与成分とする上で考えるべきこととは」をテーマに、(一社)日本健康食品規格協会の池田秀子理事長が座長を務めた。
合田氏は、機能性表示食品の品質について「食品に含まれている成分を分析すると、表示されているものより含量が少ない場合もある」ことを問題視。試薬メーカーが標準品としている製品を医薬品と健康食品で測定したところ、医薬品ではどの成分含量も約10%の変動幅に収まっていたが、健康食品では10~60%の変動幅があり、品質が安定していなかった事例を紹介した。
合田氏は、「品質保証の基本は、エビデンスを取ったものと同等の品質を持った製品を常に販売すること。製剤的な同一性を保つためには、溶出試験と崩壊試験が重要」と強調。また、有効期間が終わるまで機能性を維持する必要があるため、容器と包装形態が重要であり、その点にコストをかけなければならないと指摘した。
津谷氏は、医薬品、OTC(一般用)医薬品、機能性表示食品のエビデンスとヘルスクレーム(健康強調表示)を比較し、必要なエビデンスの強さとこれに基づくヘルスクレームの強さの順番が、一致していないと述べた。機能性表示食品については、届出の再審査・再評価制度が必要と提言した。
松永氏は、機能性表示食品制度が制定された当初と比べ、安定性・機能性・品質について一定の尺度、社会が求めるレベルがわかりやすくなってきたと評価する一方、情報開示によって明らかになってきた課題もあると述べた。
科学的根拠の乏しい届出の事例を挙げて、「群内検定の比較検定は無用であり、行うべきでないと消費者庁の報告書でも明記されているが、実際には群間比較で差が出ず、群内差を強調する研究が相当数ある。システマティック・レビュー(SR)の体裁を取っていても採択論文が1報しかないものもある」と苦言を呈した。
松永氏は広告表現についても言及し、景品表示法に基づく行政の厳しい判断が増えるなか、企業は「根拠論文」、「届出表示内容」、「表示広告」に乖離がないかを確認するように求めた。
同研究会の矢澤一良会長は、「アントシアニンの機能性研究は当該分野だけの問題ではない。薬学・医学分野の先生方の助けを借りて、もう一度見直す必要があると思う。この制度の存在意義を維持していくために、当研究会がモデルケースになることができるように持っていきたい」と抱負を述べた。
(冒頭の写真:16日に開かれた研究会)
【宇山 公子】