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新浪前会長かく語りき 「潔白」主張、捜査対象サプリ「国内では所持も使用もしていない」

 違法性が疑われるサプリメントを巡って警察の捜査を受け、サントリーホールディングス㈱の代表取締役会長を今月1日付で辞任した新浪剛史氏は3日午後、経済同友会代表幹事としての定例会見を行い、辞任に至る経緯などの事実関係を自ら説明した。捜査に対しては「適法な商品と認識して購入した。法を犯しておらず、潔白である」と主張。それにもかかわらず自ら職を辞した理由については、グループ会社がサプリメントを取り扱っていることを挙げ、「大好きなサントリーに絶対迷惑をかけてはいけないと思った」と語った。

米国でCBDサプリ購入、「適法な商品と認識」

 新浪氏は会見の冒頭、「私のことでお騒がせして申し訳ございません。深く反省しております」と陳謝。その上で、米国でCBD(カンナビジオール)サプリを購入したと説明した。これは米国で市販されているもので、「日本でも同様の商品が売られていた」。また、購入に当たっては「商品の内容をちゃんと読んだ」とした上で、「違法性のあるものが入っているという表記もございませんでした」と釈明した。

 購入の動機については、自身の健康についてアドバイスをもらっている「大変著名」な米国の知人から勧められたという。「私は(海外)出張が多く、時差ぼけがすごく多い。私の健康を守っていただいている知人から強く勧められたということが第一」の購入動機だとし、自身の睡眠の質改善に役立たせる目的があった。「その方(米国の知人)自身、またその娘さんが飲まれているということもあって、大丈夫だと判断した。いろんな方が飲んでいるという情報もあった」という。

 その上で、これと同様の商品が日本でも販売されいているにもかかわらず米国で購入した理由については、「日本より米国のほうが圧倒的に(価格が)安い。経済的な意味合いであります」と説明。購入した商品の名称などについては、捜査の関係がある、として明かさなかった。

 一方で、警察の捜査に関しては、新浪氏自身は捜査対象となったサプリを「日本国内で所持も使用もしていない」うえに「(新浪氏自身が)日本国内に輸入するよう指示したものではない」と説明。さらに、捜査対象となったサプリは「そもそも私が米国で適法と認識して購入したCBDサプリメントと同一であるかどうかも分からない」とした。

 新浪氏の説明によれば、捜査対象となったサプリは、米国の知人が福岡県内に住む知人の弟に新浪氏の自宅へ送るよう依頼したもの。そしてこの弟は今年8月、警察に逮捕されたという。そのため捜査が自身にまで及んだとの認識を新浪氏は示し、「私が適法と認識して購入したサプリメントと同一であるか分からないものについて警察から私への捜査があったと理解しています。ゆえに、私は法を犯しておらず、潔白であると思っております」と主張した

 サントリーHDは2日、新浪氏の会長辞任を発表。購入したサプリメントを巡って警察の捜査が行われた旨の報告を新浪氏から受けた同社は、「サントリーグループのトップマネジメントとして法令に抵触しないことは当然で、サプリメントの購入に当たっては、しかるべき注意を払うことが不可欠の資質。したがって、捜査の結果を待つまでもなく、サプリメントに関する認識を欠いた新浪氏の行為は当社会長という要職に堪えない」と判断。新浪氏と協議の上、辞任の申出を受理していた。

 新浪氏は3日の会見で「結果的に、(新浪氏が適法だと認識した)このCBDサプリメントを購入したことに端を発して、このようなことになったしまったのは私の不注意」だと認め、「社会をお騒がせしたことに対してお詫びを申し上げたい」と謝罪。その上で、サントリーHD会長辞任について、「(会社に)傷がつかないようにすることが良いことだと思ったから辞めた。傷がつかないということであれば残った。傷がつく可能性があるということで、私は辞することにした」と説明した。

捜査の理由、THC残留限度値の大幅超過か

 新浪氏の3日の会見では、米国から輸入されたとされるそのサプリに警察がどんな嫌疑をかけたかについて説明がなかった。そのため真相は不明だが、実際にCBDサプリに違法の疑いがかけられたのだとすれば、その理由として推定できるのは、そのサプリに含まれていたTHC(テトラヒドロカンナビノール)が残留限度値を大幅に超えていた可能性だ。

 CBDは、大麻草に含まれる成分の一種。大麻草に含まれるといっても、幻覚作用などを有するわけではなく、日本においてそれを含むサプリメントなどを製造・販売したり、使用したりしても問題は全くない。昨年12月、大麻を規制する法律の改正法が施行されたことで、そうした位置づけが明確にされた。

 ただし、CBDと同様に大麻草に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は厳格に規制されている。強い幻覚作用を持つとされるためだ。日本では現在、大麻草に由来するCBD製品中に含まれるTHCの残留限度値を法令で規定。残留限度値以内の製品は何ら規制されることはないが、それを超えた製品は、麻薬及び向精神薬取締法に基づく「麻薬」と見なされることになる。

 一方で、大麻草の産業利用に関する諸外国の規制と比べても「明らかにハードルが高い」とCBD事業者に指摘されているのが、日本のTHC残留限度値だ。その値は製品によって異なり、例えば油脂や粉末は10ppm(0.001%)。水溶液はそれらよりも低く、わずか0.1ppm(0.00001%)とされている。

 新浪氏の会見を受け、CBDなどカンナビノイドを研究する(一社)日本ヘンプ協会の佐藤均理事長(静岡県立大学薬学系大学院)はこう指摘する。

 「単にCBD製品を購入しただけ、または知人から譲り受けただけの善良な市民が、いきなり警察の強制捜査を受けてしまう恐怖とリスクを物語っている。この背景には、出回っているCBD製品に含まれているTHCに関する上限値が日本では極端に低いという事がある」

 続けて、こう提案する。「新浪氏の件は、昨年12月の大麻取締法改正によって発生した『CBD製品における現実と法律の乖離』を象徴的に問題提起したものと捉えられる。薬理学的には、CBDがTHCに比べて大量に存在する条件において、CBDはTHCのカンナビノイド受容体への結合を抑制することで、THCの中枢毒性を選択的に阻害する事が知られている。(このように)ここ数年で世界的に普及してきたCBDの良さを日本国民が正しく享受するためにも、CBD製品に関わる国内規制を再考する契機として捉える事も可能ではないか」

 新浪氏は会見で、自身が米国で購入したCBDサプリは「適法」であると認識していたことを強調。そうでれば、当該サプリのTHC残留量が日本の基準値以下であることを確認していたと考えられるが、会見では、THCについて口にする場面は見られなかった。

【石川太郎】

(冒頭の写真:経済同友会の代表幹事として会見する新浪氏。TBS NEWS DIGのライブ配信動画をキャプチャ)

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