新日本製薬㈱代表取締役社長・後藤孝洋氏インタビュー(前)
新日本製薬㈱(福岡市中央区)は九州発の通信販売会社。1992年の設立以来、化粧品・健康食品・医薬品の企画、販売を行ってきた。2020年12月、マザーズから東証1部へ昇格、化粧品・健康食品に特化した通信販売会社として上場しているのは九州エリアでは同社だけ。代表取締役社長の後藤孝洋氏に、上場までの道のりと今後の展望について話を聞いた。
大震災の年 20周年を機にリブランディングへ
――昨年12月、東京証券取引所マザーズから市場第1部へ昇格されましたが、1部上場までの道のりについてお聞かせください。
後藤 そもそも上場会社を目指すという考え方は最初はなかったのです。東日本大震災が起きた2011年に20周年を迎えたのですが、そのときはそういう考え方は持っていませんでした。ただ、その後、業績が下降傾向になり、それが2年間続いたのです。
――震災の年が20周年というのも巡り合わせですが、さまざまな見直しを図った?
後藤 14年にオールインワンスキンケアのナンバーワンブランドにしようと『パーフェクトワン』ブランドのリブランディングを行いました。結果的に14年度には、オールインワンスキンケア市場でブランドシェアトップのポジションを獲得できました。それを受けて会社の業績も上向いたのです。
――さらなる成長のために上場を目指したということでしょうか。
後藤 安定した成長を継続的に行うには、社会的信用ですとか、お客様からの信頼が大事です。次の成長をより確実にしていくためには信頼づくりが必要だと考えました。
東京五輪をターゲットに上場目指す
――信頼獲得のために上場を目指した?
後藤 国内からもそうですし、海外からの信頼もそうです。そのためには人材の強化を図る必要もある。上場を検討し始めた時期は、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックを控えていました。当社も上場会社になって、海外とのアライアンスをしっかり組むことができるような体制、環境を整えておこうということで、東京オリンピックが1つのターゲットになりました。
東京オリンピックまでの間に上場を果たすことで、グローバル企業としてさまざまな展開をする権利やチャンスを十分に手に入れることができるだろうというのが16年に上場を目指すことを決意した背景としてあります。
――その後、19年6月にマザーズに上場、昨年東証1部に昇格。東京オリンピック・パラリンピックは東証1部上場企業として迎えることになりました。
後藤 コロナ禍で開催が1年ずれたというのもありますが、当初は20年度中の1部上場を目指していました。世界各国からこの日本に飛行機や客船で大勢の人が集まり、また自国へ戻る。その間、エアポートの免税店ですとか、市街地でもそうですが、いろいろなショップで接点ができます。それをきっかけに、次のステップとしてそれらの国々への展開を図っていこうということで、ハブとなりうる国や地域の空港の免税店にアプローチし、ある程度準備をしていたのですが、コロナのまん延によって今はそれこそ何もできません。できないからこそ、いま出来ることを着実にやろうということで限られた販路の開拓を行っています。
――東証1部上場後、心境の変化などはありましたか。
後藤 株主との対話といいますかね。数千人の株主の方がいらっしゃいますから、注目もされるし、我々も期待に応えていくという社会的責任が生じます。上場会社は国内に約3,600から3,700社ほどあるのですが、東証1部の会社が2,000社を超える程度ですので、何か不祥事や問題が起きたときに、企業や市場、マーケットに与える影響も少なくありません。そういう意味で上場会社として襟を正すということが大きく変わったところだろうと思います。
――会社としての変化はありましたか。
後藤 お客様に上場したことをお知らせしたところ大変喜んでいただきました。我々はお客様に信頼していただけるようにと、日頃から臨んでいるわけですが、実際にコールセンターで働く社員がお客さまからの嬉しいお声を結構聞くらしいのです。
また、社員のご家族からも期待を寄せていただいていることを感じます。これまでは「名の知れた会社」というのはあったかもしれませんが、上場したことで、家族が働いている職場に対して、安心感を持っていただけたのではないかと思います。
(つづく)
【聞き手・文:田代 宏】
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