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改正特商法・預託法の課題と今後の取り組みを議論~消費者団体

6月9日に成立した改正特定商取引法・預託法の課題を再認識するために(一社)全国消費者団体連絡会と全国消費者行政ウォッチねっとは7月31日、振り返りシンポジウムを開催した。200人以上がオンラインで聴講した。

来春という期限にとらわれず十分に議論する(奥山課長)

第1部では、消費者庁取引対策課の奥山剛課長が、「改正特商法・預託法の概要」と題して、改正のポイントを立案者の立場から説明した。164団体から意見書が提出されている契約書面の電子化について奥山課長は、消費者の承諾が得られた場合に限り電磁的方法により契約することができるようになった。具体的な方法については今後、政省令などで規定していくことになっているが、「消費者団体ほか、関係者から十分意見を承りながら議論を進め、制度として作っていきたい」とし、7月30日にオンライン開催した「第1回契約書面電子化検討会」について説明した。
奥山課長は、契約書面の電子化について関係者が多くの懸念を持っているのを承知していると断った上で、「十分にお話を伺った上で、議論をていねいに重ねていきたい。(スケジュールは)期限にとらわれず、施行まで2年あるのでしっかり議論をする」と述べた。

附帯決議は与野党一致の決議事項、消費者庁は政省令で受け止めを(池本弁護士)

池本誠司弁護士は「改正特商法・預託法の評価と課題」と題して、消費者視点から見た改正法について解説した。今回の法改正、特に詐欺的定期購入商法における罰則取消権、差し止め請求権などについて高く評価するとした。他方、広告画面の表示方法について、さらに通達ガイドラインで踏み込む必要性があるとして、研修会などで議論を深める意向を示した。
送り付け商法については、事業者が14日の経過を待たずに返還請求権を喪失する点について「踏み込んだ改正」と評価した。まずは消費者と事業者へ改正事項の周知徹底を図る必要があると強調する一方、改正法を周知しながらも法を無視して送り付けてくる悪質業者が登場してきたときに、現行法にも改正法にも行政処分権限がないという点を取り上げて問題視した。

書面の電子化については法案提出前に、関係者の議論がなく、政治主導で突然盛り込まれたために「非常に大きな問題を残してしまった」と指摘。今後の課題として、消費者保護の妨げとなる改正事項を具体的に取り上げて説明した。
また、参議院地域創生・消費者問題特別委員会で6月4日に与野党一致で決議された附帯決議を取り上げ、「これは与野党一致の要請事項。政府に向けた国会の要請だから、消費者庁としてはこれをしっかり受け止めた政省令でなければならない」と釘を刺した。

消費者サイドの運動と「建議」に齟齬(拝師弁護士)

第2部では、パネルディスカッションが行われた。改正特商法・預託法について展開してきた消費者団体運動の振り返りと、来年5年後見直しを迎える2016年改正の特定商取引法に向けた課題、獲得目標について議論した。

(一社)全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局緒は冒頭、法改正を進める取り組みのなか、急遽、書面電子化反対の運動にも取り組むことになったと説明。「2つの矛盾した取り組みというのは大変だった」と当時を振り返った。
(公社)全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長も、「特商法を一番使っている消費生活相談員のある会員から強い反対意見が寄せられた」ことを明かした。
司会を務める全国消費者行政ウォッチねっとの拝師徳彦弁護士は、「消費者サイドの運動と消費者委員会の建議、意見表明に齟齬があったのかなという気がする」とし、山本委員長に対して初見と今後の取り組みについて説明を求めた。

十分な議論も検討もなく異常だった(山本委員長)

1月14日に開催した消費者委員会本会議で、消費者庁が電子公布可能とする方針を公表してから2月4日に「建議」を提出するまでの経緯について、山本委員長は、「今回は十分な議論も検討もなく異常だった」とし、6月21日の記者会見で述べた釈明を繰り返した。
しかし、特商法の全体の枠組みのなかでデジタル化の括りを議論すべきところ、書面の電子化の問題だけが切り出されたことが本来あるべき議論として適切だったかどうかとの疑問も呈した。

与野党協議で修正される可能性はあったのではないか(石戸谷弁護士)

ジャパンライフ被害弁護団連絡会の代表で、過去に消費者委員会の委員も務めたことのある石戸谷豊弁護士は、国会要請活動に関わった経験を踏まえて発言した。山本委員長が建議を出した意気込みは分かると一定の理解を示しながらも、国会審議直前のタイミングという大きな制約のなかでは調査報告書の準備も間に合わない。意見表明にとどめて国会審議にゆだねる手もあった。「消費者問題は与党も野党もない超党派というカルチャーでずっとやってきた。与野党協議で修正される可能性はあったのではないか」と指摘。「修正されずに電子化を導入する法改正が行われたら、(その時は)今回のような政省令マターでビシッと建議を出すという方向もありえた」と振り返った。

【田代 宏】

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