抗酸化・機能研究会、食と脳のサイエンスをテーマに開催
抗酸化・機能研究会((一財)食品分析開発センターSUNATEC)は5日、第2回研究会を都内で開催し、約350人が聴講した。「食と脳のサイエンス」をテーマに、生体における食品と成分の抗酸化や機能性に関する6つの講演が行われた。
芝浦工業大学システム理工学部生命科学科の越阪部奈緒美教授は「食の色・味・香りが脳に与える影響と生体調節」をテーマに、食の2次機能と3次機能に関するメカニズムについて講演した。
越阪部教授は、食は1次機能(栄養)、2次機能(色・味・香りなどを感じる嗜好)、3次機能(食品機能性・生体調節機能)の3つに分類されると説明。色・味・香りなどを食感覚と定義し、2次機能と3次機能との関係について研究を進めており、「食品の3次機能の発現は、医薬品や化学物質と同様に、経口摂取した食品成分が血中に吸収され、循環血流を通じて標的組織に着き、何らかの生化学的反応を起こすことで有効性・毒性を示すと考えられてきたが、これは生体吸収されないポリフェノールには当てはまらない」とし、難吸収性ポリフェノールを対象に行った複数の試験について解説した。
難吸収性ポリフェノールの持つ渋味が、感覚神経に受容され、そのシグナルが中枢神経を活性化させ、さらに交感神経活動が亢進。その結果、末梢に有益な生理学的変化が起きたことを立証し、食品成分には食の2次機能と3次機能の関わりによって発現するメカニズムが存在することを明らかにしたと述べた。
国立精神・神経医療研究センターの功刀浩部長は、「食品成分の脳機能への影響」をテーマに、緑茶成分のテアニンの向精神作用を中心に講演。仙台市や北九州市などで行われた調査で、1日に4杯以上の茶を飲む人は1杯以下の人に比べ、うつのリスクが有意に少ないというデータを紹介した。
功刀部長は、マウスを使った動物実験や患者を対象とした臨床試験を実施し、緑茶に含まれるテアニンの効果を検討。感覚フィルター機能障害や統合失調症の症状改善に有効である可能性、抗うつ作用・抗不安作用を持つことを示唆する結果が得られたと話した。また、臨床試験によって睡眠改善作用も認められ、認知機能改善効果が示唆されたという。さらに、健常者を対象とした二重盲検クロスオーバー比較試験では、抑うつ症状、不安、睡眠障害、認知機能が有意に改善したと報告した。
(写真:5日に開催された研究会の様子)