微粒子コーティング、サプリに応用
アリメント工業 苦味ある素材、美味しく摂取
サプリメント・健康食品の受託製造を手掛けるアリメント工業㈱のR&Dセンター(静岡県富士市)が風味に課題のある機能性食品素材を摂取しやすくする製剤技術を開発した。微粒子コーティング技術を活用したもので、苦味や渋味のある粉末素材そのものを微粒子でコーティングしてマスキングする。イチョウ葉エキスや緑茶カテキンなど、苦味や渋味の強い素材の風味が解消され、これまでは難しかった、口腔内で溶かして有効成分などを体内に摂り入れるチュアブル錠などの製品化も可能になるという。
微粒子でマスキング 医薬製剤技術を応用
微粒子コーティング技術はもともと医薬品製剤に用いられている技術。薬物を口腔内で放出させる口腔内崩壊錠(OD錠)の製剤技術として知られる。専用装置で薬物の粒子をコーティングして改質することで、苦味をマスキングしたり、放出のタイミングを制御したりできる。
アリメント工業のR&Dセンターでは、この微粒子コーティング技術をサプリメントや健康食品に応用する方法を開発。専用の転動流動造粒コーティング装置を工場とセンター内に導入し、最適なコーティング条件の検討や製剤試作などを進めていた。実生産に向けて一定の目途がついたことから、近くスケールアップを実施し、最終製品販売会社への採用提案を本格的にはじめる。
たとえばイチョウ葉エキス末を微粒子コーティングすると、未加工の場合と比べて渋味指数が大きく低減する。味覚識別センサーを使った客観的な比較では、未加工品の渋味指数をゼロとすると、微粒子コーティング品ではマイナス7.6を示した。渋味指数が0.1ポイント変わっただけでも味の変化を感じ取れるといい、「微粒子コーティングすることで、苦い素材でも美味しく摂取できるようになる」とR&Dセンターの下川義之センター長。「微粒子コーティング技術を食品に高度応用できる先は限られている。当社独自の製剤技術として国内外へ提案していきたい」という。
リンゴ酸配合崩壊遅延防止ソフトカプセルも
アリメント工業では現在、独自の製剤技術や機能性食品素材などの開発に力を入れている。半年前にR&Dセンターの組織再編を実施。機能性食品開発室を軸に、最先端の分析・解析装置を取り揃えた分析科学研究室などの各室が連携しながら「新しい価値の創造に取り組んでいる」(下川センター長)。
製剤技術としては、昨年、崩壊遅延防止ソフトカプセルを開発し、特許を出願。天然由来の食品添加物でもあるリンゴ酸に、ソフトカプセルの崩壊遅延を抑制する効果のあることを発見、ゼラチン皮膜に配合したもの。魚油など崩壊遅延が生じやすい素材を配合した場合でも、日本薬局方が規定する20分以内に崩壊することが確認されているという。
錠剤には、崩壊剤として利用できる食品添加物が存在する。しかし、ソフトカプセルにはなかったという。製剤の崩壊遅延は、内容物が体内で機能性を発揮することを損なったり、商品の品質管理上の問題につながったりすることがある。昨秋から提案を始めたばかりだが、既に採用が進んでいるという。
独自素材開発も進める 揉捻発酵法を活用
機能性表示食品を開発することを念頭に置いた新規素材などの開発も進めている。地域の研究機関などと連携しながら対応に当たっているもので、これまでに揉捻発酵法を用いた植物由来素材などを開発した。茶葉と食用植物の混合物を揉み込み、発酵させることで化学反応を起こし、新たな成分を生成したりする技術が揉捻発酵法。開発済みの素材については既に届出実績をあげた。現在、可能なヘルスクレームの拡充に向けた取り組みなどを進めている。
【石川太郎】
(冒頭の画像:微粒子コーティングしたイチョウ葉エキス末を走査電子顕微鏡で撮影。左のコーティング前は粒子が粗く、コーティング後(右)はほとんどなくなる。細かい粒子にもコーティングされていることがわかる。画像提供:アリメント工業)