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座談会――九州の自治体による事業者支援の実態は?(前)

九州では地場の特産物を用いて、地域の大学・自治体・企業との連携により、消費者に安全で安心な健康食品を提供するための活動が行われている。「フード・健康アイランド九州」の構築を目指す九州地域バイオクラスター推進協議会(小野友道会長)の事務局を務める(公財)くまもと産業支援財団(熊本県益城町)と、福岡県で機能性表示食品の事業支援に力を入れる第3セクターの(株)久留米リサーチ・パーク(福岡県久留米市)に、中小企業を中心に機能性表示食品の届出支援を行うコンサルタント・柿野賢一氏が話を聞いた。

【パネラー】

(公財)くまもと産業支援財団 企業支援部 部長 松本淳一 氏

(株)久留米リサーチ・パーク バイオ事業部 部長 一木義治 氏

【司会】

(有)健康栄養評価センター 代表取締役 柿野賢一 氏

<臨床試験の支援も開始(一木氏)>

 松本 機能性表示食品については、届出制とは言え、ハードルが高くて事業者は苦労しているみたいなので、届出に関する勉強会なども開いている。

 柿野 機能性表示食品制度が始まる前と始まった後で、事業者の意識、または支援のあり方は変わったか。

 一木 機能性表示食品制度が発足する1年前から関連情報をキャッチし、制度支援に合わせたかたちで準備を進めていた。それまでは食品分野に特化した支援はなかったが、同制度に取り組む企業の支援を契機に、食品事業者の支援を開始することになった。

 柿野 具体的にどのような支援か。

 一木 企業の持っている素材が機能性表示食品に適しているかどうかについて、可能性がありそうだとなれば、九州大学農学部で簡易的な研究論文の検索を行ってもらう。そこでシステマティック・レビュー(SR)ができるのか、臨床試験が必要かを見極めて、そのあとは各事業者で進めてもらうことになる。

 最近はSRではなかなか進めにくいということで、新たな支援として人数を絞り込んだ簡易的な臨床試験の支援も始めた。機能性表示食品に関する支援を開始してから、食品産業に携わる事業者の会員が増えたし、機能性に関する相談も増加している。

 柿野 サポート数は増えているということか。

 一木 福岡県には大きな創薬メーカーはないので、そういう意味では以前に比べると、地に足が着いた支援に変わってきたと感じている。

<ハードル高く諦めた事業者も(松本氏)>

 柿野 九州地域バイオクラスター推進協議会には、個別の会員からの相談などはあるのか。

 松本 発足当初から表示については、きちんとやろうということでセミナーなどを展開してきた。(公社)日本通信販売協会(JADMA)と連携してセミナーを開催したり、協議会の総会のあとに関連する講演会を開いたりした。機能性表示食品制度ができたことで、国の制度ができたのだからこの制度に習えばよいだろうということになり、表示についてはやりやすくなった。

 会員企業のなかでも、制度発足当初は機能性表示食品に関心が集まったが、届出制にしてはかなりハードルが高いと言われ始めた段階で、なかには高嶺の花と諦める事業者も出始めている。ただし、食品の有用な成分について、これまでよりも高い関心を持つ企業もあり、機能性関与成分の利用について情報を求める企業も増えている。

 柿野 中堅企業でもある程度の体力のある企業は制度に取り組むが、小規模事業者にとっては荷が重いということか。

 松本 最初はSRでいけると言われていたのが、日が経つにつれて難易度が上がり、自分らの世界じゃないなと考え始めている事業者は実際にある。具体的な相談のなかで、「時期尚早」と判断する事業者もいる。

 柿野 実際にトライしたところもあるのか。

 松本 ミカンやモヤシなどの生鮮食品が機能性表示食品として公開されたあと、ぜひやってみようというので、農研機構に問い合わせるなどして取り組みを進めたところはあるようだ。ところが消費者庁とのやり取りのなかで、こういう大変な思いをして公開されたところで果たして売れるのか、販売体制がしっかりしていなければ無駄骨になるのではないかとの思いから、結局、諦めてしまった事業者が結構あるようだ。

(つづく)

(写真:(右から)柿野氏、一木氏、松本氏)

【文・構成:田代 宏】

※詳細は月刊誌「Wellness Monthly Report №6」(12月末発刊)に掲載。

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